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『物忘れしづらい人』には“ある共通点”があった…毎日続けている“たった1つ”の習慣とは?【医師が監修】

  • 2025.9.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「物忘れ」はどうして起こる?

まず、記憶とは何かを整理しましょう。記憶は大きく分けて、「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」という段階を経て脳に保存されます。私たちが見る、聞く、感じる情報はまず感覚記憶として一時的に保持され、その中で重要だと脳が判断した情報が短期記憶へ、さらに繰り返しの刺激や意味付けを通じて長期記憶へと定着していきます。

物忘れは、この記憶のどの段階で情報が失われるかによって起こります。例えば、感覚記憶は非常に短く数秒程度で消えてしまうため、注意を向けていないと内容はすぐに忘れてしまうことが多いです。短期記憶は数十秒から数分程度の範囲で保持されますが、アクティブに復唱したり関連付けをしなければ、長期記憶に移行せずあいまいになりやすいのです。

また、長期記憶は海馬(かいば)という脳の一部が関わっており、ここで情報が整理されて保存される際に、重要度や感情的な意味合いが強いほど記憶は強固になります。ただし、歳を重ねるごとに海馬の機能はやや弱まるため、情報の転送や取り出しが難しくなることも忘れっぽさに影響を与えています。

さらにこれらの原因だけでなく、記憶障害の原因には うつ病、睡眠障害、薬剤性(抗コリン薬など)も含まれます。

忙しい人でも実践できる「物忘れ」を防ぐ習慣

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

十分な睡眠や食生活はもちろん、日常生活で物忘れを防ぐ習慣があります。それは「メモを取ること」です。ただ闇雲に書けばいいのかというとそうではありません。効果的なメモ活用にはちょっとした工夫があります。まずは「目的をもってメモを取る」ことが重要です。たとえば、買い物リストや約束事、やるべきタスクなど、具体的な内容を書き出すことで情報の整理がスムーズになります。

メモは記憶力のサポートだけではなく、情報の一元化や優先順位付けの道具にもなります。快適な毎日を送るための「最強の脳トレ」として、今すぐ始めてみませんか?メモがあなたの暮らしをもっと豊かにするヒントになるはずです。

さらに、国立長寿医療研究センターの研究では、MCI(軽度認知障害)の段階で運動と認知課題を組み合わせた「コグニサイズ」を行うことで、認知機能の低下を抑えられると発表されています。現在、認知症予防のためにコグニサイズの普及が進められています。

コグニサイズは、中程度の身体的負荷(軽く息がはずむ程度)の運動と、間違えることもあるような難易度の高い認知課題を組み合わせることで、身体と脳の両方を刺激し、認知症の発症を遅らせることを目指しています。こういった点からもメモを取るという行動が認知機能の低下を抑えるうえで重要なポイントであると考えられます。

今日からはじめてみよう

物忘れのメカニズムを知ると、単なる「忘れっぽさ」が脳の働きの一部だと見えてきます。だからこそ、無理に完璧な記憶を目指すのではなく、忘れることも受け入れつつ、工夫で日々の生活をサポートする姿勢が大切です。

メモを取る習慣がその1つ。文字を書くこと、それを保存しておくことで情報を繰り返し整理しながら記憶していきましょう。また、規則正しい生活やバランスの良い食事、適度な運動、充分な睡眠は脳の健康を保つ基本です。ストレスケアも忘れずに。未来の自分のために、今日から少しずつできることをぜひ始めてみましょう。


監修者:鈴木枝里子医療法人社団ユーアイエメリー会(埼玉県久喜市)理事長
精神科専門医、精神保健指定医