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CAも驚愕した“救出劇”「彼女がトイレから戻らないんです。実は彼女は…」着陸直前にまさかの緊急事態!

  • 2025.6.24
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客室乗務員としてフライトしていると、地上では考えられない驚くような緊急事態に遭遇します。

今日は「彼女がトイレから戻らない」というお客様からの訴えから始まった、扉が開かないトイレ、意識朦朧とするお客様、そして迫り来る着陸……と、まるで作り話のような実際に起きた異例の着陸劇エピソードをご紹介します。

「トイレから戻らない……」心配されるお連れ様

国内線での出来事です。お飲み物のサービスが終わり機内を巡回していたところ、男性のお客様に声をかけられました。

「彼女がトイレに行ったきり、戻ってこないんです。どのトイレに入ったかも分からなくて……」

お客様によると、すでに20分以上経っているとのことでした。

「体調を崩されていましたか?」とお尋ねすると、お客様は不安そうに「実は、つい先日退院したばかりなんです」と。

この状況は楽観視できないと判断し、すぐに他の客室乗務員とも情報を共有して、機内全てのトイレの出入りをチェックすることにしました。

“Occupied(使用中)”になったままのトイレを発見!

手分けをしてトイレの使用状況を調べてみると、客室後方にあるトイレの一つがずっと“Occupied(使用中)”のままになっているのが分かりました。

そこで、客室乗務員がノックしたりお声がけしたりしましたが、全く反応がありません。

この状況から、トイレの中で体調を崩されて意識を失ってしまっている可能性もあるため、トイレのドアを開けることになりました。

実は、機内のトイレはこうした緊急事態などに備えて、客室乗務員が外から開けられる仕組みになっているのです(開け方の詳細は控えさせていただきます)。

しかし、何人かの客室乗務員でドアを開けようとしましたが、重たくてドアが開きません。

このトイレはドアを押して開く折れ戸だったため、中でドアに寄りかかっていて重みで開きにくくなっていることが想定されました。

最後の手段!トイレ扉の取り外し

この便のチーフパーサーは男性でしたが、男性の力をもってしてもトイレを開けられませんでした。

しかも、機内トイレは狭いため、無理にドアを開けようとすると扉に挟まり体を傷つけてしまう恐れもあります。

「こうなったら、ドアを外すしかない!」とチーフパーサーは判断し、コックピットにある工具を借りて、苦戦しながらもどうにか扉を外すことに成功したのです。

トイレの扉が外れると、中には意識が朦朧とした女性のうずくまる姿が……。お連れ様の男性が声をかけても、ほとんど反応がありません。

すぐに、男性チーフパーサーとお連れ様で女性を抱え、トイレの中から広いスペースに移動させて横たわらせました。

実は、このトイレからの救出劇は着陸態勢に入るまであと数分という、ギリギリのタイミングだったのです。

このままドアが開けられなければ、お客様がトイレの中に入ったままの着陸になってしまったことでしょう(想像するだけでゾッとします)。

ドクターコールの余裕なし!救急車の要請へ

急病人が発生した場合、ドクターコール(「お客様の中で、お医者様はいらっしゃいませんか?」というアナウンス)をして、医療従事者の協力を仰ぐのが一般的です。

しかし、このケースでは着陸まで時間がなかったため、ドクターコールする時間の余裕がない状況でした。

チーフパーサーから機長へ報告したところ「このまま着陸して、到着地で救急車を待機させましょう」ということに。

国際線など長距離路線だった場合、お客様の容態次第では、目的地以外の空港への緊急着陸も検討しなければなりません。

今回のケースでは、緊急着陸や行き先変更などは必要なく、他のお客様にご迷惑をかけずに済んだのが唯一の救いでした。

意識朦朧で着席できないお客様......異例の着陸方法とは?

離着陸時は必ず座席に座り、シートベルトを締めなければなりません。しかし、この女性のお客様は意識が混濁しており、着席するのが困難な状態でした。

そこで、機長からは緊急的な対応として、機内の壁に体を寄せて横になったままの状態で着陸することが許可されたのです。

私たち客室乗務員は、なるべく体への衝撃が少なくなるように、機内に搭載されている毛布や枕をお客様の周りに置いてガードするように工夫しました。

緊張の着陸から救急搬送へ

お客様が着席せずに横になった状態での着陸は、私たち客室乗務員にとっても初めての経験です。

高度が徐々に低くなり着陸が近づいてくると、客室乗務員たちの緊張もマックスに......。

程なくして着陸した振動を感じ、女性のお客様を見ると壁が体を支える状態になっており、怪我なく無事に着陸できたことが分かりました。

そして、駐機場に到着すると、窓の外には機長から要請されていた救急車が待機しているのが見えました。

車椅子をご利用のお客様などは、全てのお客様が飛行機から降りられてから最後にご降機いただくのが一般的です。

ただ、今回のケースでは一刻も早く搬送の必要があると判断されたため、他のお客様には機内アナウンスで「ご案内があるまでは、座席でお座りのままお待ちください」とお伝えしてご協力をお願いしました。

飛行機のドアが開くと同時に担架を持った救急隊が機内に入ってくる様子を見て、お客様方も驚きを隠せません。

しかし、お客様のご理解とご協力もあり、女性のお客様はスムーズに担架でお連れ様と一緒に降機され、救急車で搬送されました。

機内での体調管理の大切さ

後日談になりますが、この女性のお客様は処方された薬を多く服用されてしまい、意識が朦朧とされてしまったとのことでした。

命に別状がなかったとのことで、その時の乗務員一同でほっととしたことをよく覚えています。

実際、機内は気圧の変化などで、体調を崩される方が少なくありません。飛行機をご利用になる際はしっかりと体調管理をして、万全の体調で搭乗できるように心がけましょう。

それでは、素敵な空の旅を!


ライター:かくまるめぐみ
大学卒業後、日系航空会社に客室乗務員として入社。国際線をメインに乗務し、世界中を飛び回る。結婚を機に退職し、イタリアへ移住。現在も家族とともにイタリアに在住し、Webライターとして活動。客室乗務員の経験から培った「細やかな心配り」を大切に、コラム記事からSEO記事まで幅広く執筆中。