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ロマンティックな刻印から、誕生石をあしらったものまで。12のロイヤル・エンゲージメントリングに隠された特別なディテール

  • 2025.5.18

婚約の証として指輪を交換する西洋の習慣は、古代ローマにまでさかのぼる。古代ローマでは、貴族が結婚の合意に達したことを示すために、「アヌリ・プロヌビ」と呼ばれる鉄帯を交換していたと、博物学者の長老プリニウス(ガイウス・プリニウス・セクンドゥス)は述べている。左手の薬指に指輪をはめるのは、この指には心臓に直接つながる静脈「vena amoris(ラテン語で“愛の静脈”の意)があると古くから信じられていたからだ。

ダイヤモンドが婚約の証として人気を博すようになったのは中世になってから。その耐久性が不変を連想させるというのが理由だった。諸説あるが、1476年に行われたブルゴーニュ女公マリーとオーストリアの神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の結婚式で、新郎がマリーにきらびやかな「M」をあしらった指輪を贈ったことから、ダイヤモンドが貴族の結婚式の宝石に選ばれるようになったという。

それにしても興味深いのは、婚約の証に伝統的な宝石を使ったイギリス王室はごくわずかだということ。近年、イギリス王室に嫁いだ花嫁の間でよく見られるのは、サファイア、エメラルド、ルビーだ。150年以上にわたる王室の婚約と、その証に使われた宝石を振り返ってみよう。

ヴィクトリア女王

1840年に結婚

Queen Victoria and Prince Albert

1800年代、とぐろを巻いた蛇は永遠の愛の象徴として広く認識されていた。1839年、婚約を記念してアルバート公子がヴィクトリア女王に贈ったのは、ウロボロス(自分の尾を嚙んで丸くなった蛇または竜。ギリシャ語に由来)をモチーフにしたスネークリング。頭部に後の妃の誕生石であるエメラルドをセットさせ、両目は当時「情熱」を連想させたルビーで際立たせたものだった。ヴィクトリアとアルバートによる多くの選択と同様、この指輪はトレンドのきっかけとなり、当時のスネークリングの多くにターコイズがあしらわれるように。その色合いは、忘れな草の色に似ていると言われ、永遠のロマンスという感情をいっそう強めた。

アレクサンドラ王妃

1863年に結婚

Alexandra and George V

後の国王エドワード7世がベルギーのラーケン城でアレクサンドラ・オブ・デンマークにプロポーズした際、婚約者に贈ったのは、愛称「バーティ(Bertie)」の綴りを一文字ずつ宝石──「B」ベリル(緑柱石)、「E」エメラルド、「R」ルビー、「T」トパーズ、「I」ジャシンス、「E」エメラルド──でスペルアウトしたアクロスティックリングだった。エドワードとアレクサンドラはファベルジェ、ティファニーカルティエジュエリーコレクターとして有名だが、このデザインは結婚生活を通じて王妃のお気に入りだったと考えられている。コレクションの多くがこの春、バッキンガム宮殿のキングズ・ギャラリーで展示される予定だ。

メアリー王妃

1893年に結婚

Princess Mary (May) of Teck (1867-1953) at the time of her betrothal to Prince George of Wales who, as George V, succeeded his father Edward VII as king of the United Kingdom in 1910, when she became known as Queen Mary. From The Cabinet Portrait Gallery

興味深いことに、メアリー・オブ・テックが国王ジョージ5世と結婚した際の婚約指輪の記録はない。ただし、ジョージの兄アルバートが求婚後にメアリーに贈った指輪は、ロイヤル・コレクションで目にすることができる。ゴールドの“トワ・エ・モワ”デザインの指輪は、ターコイズとダイヤモンドがセットされ、二人が婚約した日付(1891年12月3日)が刻印されている。婚約から数週間後にアルバートが肺炎で急逝すると、メアリー(愛称「メイ」)は弟ジョージの悲しみに寄り添った。後に、リッチモンド公園にあるシーン・ロッジの庭でジョージと婚約した。

エリザベス王妃 クイーン・マザー

1923年に結婚

Queen Elzabeth At Windsor

後の国王ジョージ6世は、1923年にサンドリンガムを訪れた際に、両側にアクセントとしてダイヤモンドがあしらわれた12カラットのカシミール産サファイアリングを用意して、エリザベス・ボーズ=ライアンにプロポーズした。王妃は1940年代までこの婚約指輪を身につけていたが、後に小粒のダイヤモンドに囲まれた大粒の真珠の指輪と交換した。真珠は王室の喪の装いの象徴とされていることを考えれば、これは珍しい選択だ。とはいえ、ウェールズ産の金塊から作られた結婚指輪だけは手元に残している。ちなみに、エリザベス王女、マーガレット王女、アン王女の結婚指輪もすべて同じ金塊から作られた。

ウィンザー公爵夫人

1937年に結婚

Wallis, Duchess of Windsor

ウィンザー公爵夫妻は30年代以降、高級宝石店の有名な得意客となり、エドワード8世がウォリスのために選んだ婚約指輪もカルティエの19.77カラットのエメラルドリングという彼女にふさわしい豪華なものだった。ジャック・カルティエはバグダッドから原石を調達。国王としての在位期間が短かったエドワード8世は、プロポーズの日(1936年10月27日)にちなんで「We Are Ours Now (私たちの人生は今、私たちだけのものに)27 X 36」というフレーズをリングの内側に刻ませた。

エリザベス2世

1947年に結婚

Queen Using Camera

伝記作家のイングリッド・シュワードは、著作『Prince Philip Revealed:A Man of His Century(原題)』の中で、エリザベス王女(当時)の婚約指輪の製作過程を紹介している。石を提供したのはフィリップの母アリス王女。1862年にニコライ2世がアリス王女との結婚式のために贈ったダイヤモンドとアクアマリンのティアラからだった。未来の英国女王の配偶者は、宝石商フィリップ・アントロバスにティアラから取り外した3カラットのソリテールダイヤモンドと「プラチナにセットされた小粒のダイヤモンドを5個ずつ両側にあしらった」リングをデザインするよう命じた。2020年、エドアルド・マペッリ・モッツィとの結婚式で祖母からノーマン・ハートネルのガウンを借りたベアトリス王女も、同じようなデザインの婚約指輪を持っている。

マーガレット王女

1960年に結婚

Portrait of Princess Margaret and Anthony Armstrong Jones

伝記作家アン・デ・コルシィによると、アンソニー・アームストロング=ジョーンズがマーガレット王女のために選んだのは、宝石商S.J.フィリップスのマーガレット・ダイヤモンドに囲まれた「バラのようなルビー」の指輪だったという。これは、花嫁のミドルネーム「ローズ」にちなんだデザインだ。2018年、ジャック・ブルックスバンクと結婚したユージェニー王女も、バラ色の色調の宝石──ブリリアントカットのダイヤモンドで縁取られたパパラチアサファイア(オレンジとコーラルピンクの中間の色合い)──を選んでいる。母であるヨーク公爵夫人が身につけたのは、ビルマ産のピジョンブラッドルビーをダイヤモンドで縁取った婚約指輪だった。

ダイアナ元妃

1981年に結婚

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ダイアナ元妃が、ウィンザー城でガラード社から提供された宝石の中から自身のエンゲージメントリングを選んだことは有名だ。18カラットのホワイトゴールドにセットされた12カラットのセイロンサファイアの周りを、14個のダイヤモンドが取り囲んでいる。このリングのデザインは、ヴィクトリア女王が自身の結婚式の日に「サムシング・ブルー(花嫁が身に付けると幸せになるといわれる)」として身につけていたブローチを思い起こさせる。このブローチはエリザベス2世とカミラ女王双方に愛用されている。

アン王女

1992年に結婚

Princess Anne

アン王女の婚約指輪はいずれもサファイアをセンターストーンに使っている。最初の指輪はマーク・フィリップスから贈られたもので、中央のサファイアの両脇に同じ大きさのダイヤモンドが配されている。1973年、彼女は『タイムズ』紙の取材に「ほら、すごくシンプルでしょ」と語っている。一方、ティモシー・ローレンス(30年以上連れ添った今の夫)から贈られた2個目の指輪は、オーバルカットのカボションサファイアの両側に3個ずつダイヤモンドがあしらわれている。

カミラ王妃

2005年に結婚

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2005年、当時のチャールズ皇太子はカミラ・パーカー・ボウルズにプロポーズする際、かつてクイーン・マザーが所有していたアール・デコ調の指輪を贈った。プラチナにセットされた8カラットのエメラルドカットのダイヤモンドと、その両脇に6個のバゲットカットのダイヤモンドが配されたこの指輪は1926年、国王ジョージ6世夫妻に長女(後のエリザベス女王2世)が誕生した際、夫から妻に贈られたとされる。

キャサリン皇太子妃

2011年に結婚

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2010年、現在のウィリアム皇太子がイギリスの放送局「ITV チャンネル3」に語ったところによると、亡き母の婚約指輪でキャサリン皇太子妃にプロポーズしたのは、母を「そばに感じていたいから」なのだそう。実はこのダイヤモンドとサファイアのデザインは、彼が未来の妻に贈った2個目の指輪だ。ウィリアム皇太子はセント・アンドルーズ大学時代に、それぞれの誕生石であるガーネットとパールをあしらったプロミスリングも贈っていた。また、最近はキャサリン皇太子妃のがんが寛解したことを受け、ダイヤモンドとサファイアのエタニティリングを購入したものと思われる。

メーガン妃

2018年に結婚

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2017年にサセックス公爵夫妻が婚約を発表した際、ハリーがメーガンに贈ったクリーヴ&カンパニーのダイヤモンドリングは、彼自身がデザインしたものだった。中央のクッションカットのダイヤモンドは、夫妻が3回目のデートをしたボツワナ産で、その両脇にある2個のダイヤモンドはダイアナ元妃のコレクションのブレスレットのものだと、自身の回顧録『Spare(原題)』で述べている。また、結婚1周年を記念して、ハリーは宝飾デザイナーのロレイン・シュワルツに婚約指輪のリメイクを依頼。イエローゴールドのリングをダイヤモンドのパヴェリングに替えさせた。さらに、リングの内側にハリー、メーガン、息子アーチーの誕生石(それぞれペリドット、エメラルド、サファイア)をセッティングしたセパレートタイプのダイヤモンドのエタニティリングを依頼している。

Text: Hayley Maitland Translation: Yukari Saio

From VOGUE.CO.UK

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