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昭和愛好家が選ぶ、観光地化されていないリアルな昭和の風景6選

  • 2025.5.8
昭和愛好家が選ぶ、観光地化されていないリアルな昭和の風景6選
BRUTUS

観光地化されていないリアルな昭和の風景を体感

もしも「昭和」という元号が変わらず続いていたら、今年はちょうど昭和100年にあたる。昭和を知る世代にとっては、とてもめでたく感慨深い年だ。時代は昭和から平成をまたいで令和へと移り変わり、気がつけば東京の街並みもずいぶんと様子が変化した。

ダントツの高さを誇っていた「東京タワー」は、いつしか周辺の超高層ビルに埋もれ、都内各地の駅前も再開発が続いている。商店街に軒を連ねていた昔ながらの書店や精肉店などの個人商店は姿を消し、今どきの飲食チェーン店やドラッグストアなどの近代的な建物ばかりになった。

時代とともに街並みが変化するのは仕方のないことだが、そういった風景の変貌を目にするたびに、少なからずモヤモヤした感情を抱いてしまう。本心を言えば、ずっとそのままであってほしい。

古い街並みを残そうという価値観は国内でも京都をはじめ、鎌倉や川越など多くの地域に根づいているが、それらはいずれも歴史的建造物が密集する地域ばかりで、昭和時代の庶民的な商店などが並ぶ街並みは、まったくと言っていいほど保存の対象になっていない。だが、そういった庶民の日常生活に密着した街並みにこそ、文化的価値があるのではないだろうか。

このままの状況で行けば、おそらく数十年後には昭和をリアルに体感できるような街並みは跡形もなく消え去っているだろう。そのような風景が完全になくなってしまう前に、少しでも多くの昭和スポットを訪れ、心に深く刻んでおきたい。

亀有食品市場
亀有食品市場 戦後の面影を色濃く残した場内。規模は小さいが青果店や惣菜店が軒を連ね、地元客でいつも賑わっている。建物はモルタル造2階建てで、上階はかつて住居スペースとして使われていた。敷地内は波板の屋根に覆われ、頭上には無数の電線が。通路に沿って吊された蛍光灯がノスタルジック。住所:葛飾区亀有3−20−6付近
浅草地下商店街
浅草地下商店街 国内最古の地下街。配管や配線が剥き出しになった低い天井が時代を感じさせる。今は地下街も当たり前にある時代だが、完成当時はかなりの異空間に映ったことだろう。敷地内には立ち食いそば屋や居酒屋のほか、ビールが飲める焼きそば店など、仕事帰りにちょっと寄り道したくなるような店がたくさん。住所:台東区花川戸1
グリーン ガーデン ストリート
グリーン ガーデン ストリート ここは新宿のど真ん中。ビルに挟まれた何もない狭い路地に飲食街の古いゲート看板だけがポツンと残されている。これはかつて「緑苑街」という安い酒が飲めた横丁の名残で、新宿2丁目のゲイタウン発祥の地でもあるそうだ。なぜかゲート看板だけが撤去されずに残されたまま。住所:新宿区新宿2−5
えびすストア
えびすストア ビルの中というロケーションが、いかにも昭和らしい商店街。通路の狭さや天井の低さが当時らしく、タイムスリップ感が半端じゃない。シャッターを下ろした店が多めだが、昔ながらの商店が複数現役で営業中(写真に写っている店舗は現状と異なる)。恵比寿駅の目の前にあるので利便性も高い。住所:渋谷区恵比寿1-8-3
JR東日本浅草橋駅鉄柱
JR東日本浅草橋駅鉄柱 プラットホームの屋根を支える鉄柱の、緩やかにラウンドしたデザインが素晴らしい。これは古い鉄道のレールを再利用して造られたもので、開業の昭和7(1932)年から90年以上経った現在も開業時の状態を見事に保ち続けている。全国的に見ても、美を意識した駅舎の鉄柱は極めて珍しい。住所:台東区浅草橋1
メトロプロムナード モザイク壁画
メトロプロムナード モザイク壁画 佐治賢使作。新宿駅地下構内も改装工事が進み、もはや昭和時代の面影を失いつつあるが、JR線と地下鉄をつなぐ連絡通路にあるこの作品は、半世紀以上経った今も変わらずそこにあり続けてくれている。魚や鳥の形といい、タイルの色合いといい、高度成長期の雰囲気が凝縮されている。住所:新宿区新宿3

profile

平山 雄(昭和愛好家)

ひらやま・ゆう/『昭和ぐらしで令和を生きる』など昭和にまつわる著書が多数あるほか、雑誌『Begin』で「令和に響く昭和のハナシ」を連載中。

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