飛行機は毎日、多くの方の想いを乗せて、世界中を飛んでいます。ビジネスで移動される方や旅行に出かける方など、目的は実にさまざまです。
私が客室乗務員として乗務していた頃も、数えきれないほどの出会いがありました。その中でも、ある新婚旅行中のカップルとの出来事は忘れられません。
そこで今日は、私が機内で出会った新婚さんに起きたエピソードについてご紹介します。
新婚さんに予期せぬアクシデント!
それは、新婚旅行に向かう幸せいっぱいのカップルが搭乗した、国際線での出来事です。映画を楽しむ方やパソコンでお仕事をされる方、お休みになっている方など、いつも通りの国際線フライトでした。
そんな中、件の新婚さんの男性がフラフラとしながらお手洗いに歩いていく姿が目に留まりました。なんとなく気になって目で追っていると、お手洗いの前でバタンと倒れてしまったのです。
慌てて駆け寄り「お客様!」とお声がけをしても、返答がありません。しかし、幸いにもすぐに意識を取り戻されて安堵したその時、男性が「あっ...」と小さな声をあげたのです。
視線を落とすと、男性の下半身には水で濡れたような跡が。お客様ご本人も、対応した私たち客室乗務員も、すぐにその状況を理解しました。
【緊急対応!】このときCAがとった行動とは?
まず、私たち客室乗務員が考えたのは、「この状況を他のお客様に気づかれないようにすること」でした。
こういった機内トラブル時でも、阿吽(あうん)の呼吸で連携プレイができるのは客室乗務員の強みです。あくまでも普通に介抱しているように見せかけつつ、機内のブランケットで下半身を覆い隠し、お手洗いへご案内しました。
その後、座席にいたお連れ様の女性に事情を説明すると、「珍しくワインを飲んでいたので、酔ってしまったのかもしれません」と話されました。新婚旅行ということで、よりお酒が美味しく感じられたのでしょう。
しかし、女性は男性が粗相してしまったことを知ると言葉を失い、呆然としていました。しかも、機内の手荷物の中には着替えがないとのこと。
到着地まで濡れたまま過ごすなんてことになったら、せっかくの新婚旅行が台無しになってしまいます。すぐにチーフパーサーに状況を報告し、本来はファーストクラスのお客様にご用意している機内着(パジャマのようなもの)を、特例として新郎にお使いいただくことにしました。
しばらくの間は戸惑っている様子のお二人でしたが、徐々に落ち着きを取り戻し、最後は笑顔で「お世話になりました」といって降機され新婚旅行に出発されたのです。
お二人の後ろ姿を見送りながら、「新婚旅行が幸せな思い出でいっぱいになりますように......」と、心から願わずにはいられませんでした。
そして、時間がたった今でもこの新婚さんを思い出すことがあり、「新婚旅行の失敗談として、今は笑い話になっているといいな」と願っています。
機内でのお酒には要注意!
フライト中にお酒を飲んで、体調を崩されるお客様は少なくありません。お酒に強い方でも「いつもと同じくらいの量しか飲んでいないのに、気分が悪くなってしまった」というケースも見受けられます。
なぜなら、気圧と酸素量の影響から機内での飲酒は地上よりも酔いやすくなるためです。
機内の気圧は地上よりも低く、体内に取り込める酸素量も少なくなります。そのため、アルコールの影響を受けやすく、少量のお酒でも酔ってしまうのです。
今回のように、新婚旅行や特別なイベントが重なると高揚した気持ちから、ついつい飲み過ぎてしまうこともあるでしょう。
予期せぬトラブルを防ぐためにも、機内でお酒を飲む際は水分補給を忘れずに、飲みすぎに注意してくださいね。
安全で楽しい空の旅にするために
もしかすると「機内で寝るから、徹夜で出発しよう」と考えている方も多いのではないでしょうか?
しかし、疲労や睡眠不足はお酒に酔いやすくなるだけでなく、体調を崩す原因にもつながるので要注意です。
機内だけでなく到着後も元気に過ごすためにも、飛行機に乗る前日はしっかりと睡眠をとることをおすすめします。
機内でのお酒と体調管理に気を配り、快適な空の旅をお楽しみくださいね。
ライター:かくまるめぐみ
大学卒業後、日系航空会社に客室乗務員として入社。国際線をメインに乗務し、世界中を飛び回る。結婚を機に退職し、イタリアへ移住。現在も家族とともにイタリに在住し、Webライターとして活動。客室乗務員の経験から培った「細やかな心配り」を大切に、日々記事を執筆中。