2016年の放送開始から約10年。大人気ドラマシリーズ『家政夫のミタゾノ』は、1話完結のストーリーとクセになる奇想天外な展開で、コアなファンを増やし続けている異色のドラマシリーズである。主演・松岡昌宏が女装した家政夫・三田園薫は、(一部を除き)お金持ちの家に派遣され、そこに潜む“家庭の秘密”を暴きながら問題を解決していく。掃除をしながら依頼者の秘密を暴くスタイル、他局ドラマや時事ネタのパロディがふんだんに盛り込まれる作風など、毎回お決まりの展開ながら、なぜここまで長く愛されているのか?
1話完結×クセ強すぎ!いつからでも楽しめる異色の家政夫ドラマ
『家政夫のミタゾノ』の最大の特徴は、1話完結型のストーリーであること。シーズンごとに家政婦紹介所のメンバーが入れ替わることはあるが、基本のフォーマットは変わらない。だいたい以下の流れに沿って毎話展開される。
- 家政夫・三田園薫が、とある家庭に派遣される
- 家族の隠された秘密を暴きつつ、なぜか問題を解決してしまう
- 複数の家事テクニックが披露される
三田園は、一体どこからやってきたのか。そして、なぜ女装をして家政夫として働いているのか。彼女にまつわる情報はすべてが闇のなか。まさに“謎の家政夫”なのである。
無表情で淡々とした、丁寧かつ特徴のある話し方だが、時折り核心をつく言葉を残すのが三田園の特徴。依頼者の持ち物を勝手に触って「手が滑りましたわ」と言いながら中身をぶちまけるのは、もはや定番。家のあらゆる場所に神出鬼没で現れるのも、いつものこと。
SNSでも「ミタゾノさんのキャラがクセになる!」「私一生やめられない」「独特で中毒性あるよね」といった声が多い。松岡昌宏の演技力が、ドラマの中毒性を生み出しているのだろう。このドラマで油断できないのは、基本的にコメディでありながら、たまにグッとくる展開やセリフがあること。なかなかに人心掌握に長けたドラマなのである。
他局ドラマパロディ×時事ネタ満載!クセになるぶっ飛び展開
『家政夫のミタゾノ』のもう一つの大きな魅力は、大胆すぎる時事ネタや他局ドラマのパロディである。
たとえば第2シーズン(剛力彩芽演じる五味麻琴がパートナー)では『陸王』『下町ロケット』を彷彿とさせるネタが投入されたり、第5シーズン(山本舞香演じる本仮屋素子がパートナー)では、オリンピック関連の時事ネタを大胆に扱ったり。
他局でも関係ない、この“なんでもアリ”な節操のなさが、いわゆる『銀魂』的なノリに通じると感じている視聴者も多い。SNSでも「まさかこのネタをやるとは……」と毎シーズン驚きの声が飛び交っている。
筆者が個人的に好きなのは、コロナ禍である2020年に放送された第4シーズン(飯豊まりえ演じる霧島舞がパートナー)、「友達親子」をテーマにした回である。小沢真珠と恒松祐里演じる花田母娘が、まるで“友達のように仲が良い”けれど、実は母が必死に若作りをしていて、かつ娘は母による極度の束縛を疎んじがっており……という話。
母が娘のワンピースを着て、暗闇のなか娘の帰りを待っており、婚姻届をビリビリに破くシーンなんて「すごい」の一言。気になる方はぜひ過去回を観てほしい。
この第4シーズンではリモート映像を駆使した特別回を制作するなど「いまだからこそできる演出」に挑戦していたのも好感度が高い。
長く続くシリーズは、マンネリ化して飽きられることが多い。しかし『家政夫のミタゾノ』はむしろ回を重ねるごとに「何が飛び出すかわからない!」という期待感が増している。ぜひ『家政夫のミタゾノ』の魅力を味わってほしい。2025年現在、第7シーズンが絶賛放送中。いまからでも十分に間に合う。
テレビ朝日系『家政夫のミタゾノ』毎週火曜よる9時
ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_