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どんな姿が響いたのか?朝ドラの登場人物たちに“救われる”視聴者たち「心を軽くしてくれる」

  • 2025.3.10
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『おむすび』第22週(C)NHK

『おむすび』第22週「理想と現実って何なん?」では、結(橋本環奈)と幼馴染の菜摘(田畑志真)が高齢者向けのお弁当開発に挑むが、企業の厳しい現実に直面してしまう。その一方で、久々に登場したハギャレンのメンバーたちは、それぞれの道で成功を収めていることが判明。「ギャルたち、意外と優秀だった?」 という気づきもあった。

「ハギャレン、実は超優秀?」仲間たちが築いたキャリア

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『おむすび』第22週(C)NHK

「博多ギャル連合=ハギャレン」といえば、結(橋本)たちが学生時代に集まってワイワイしていた自由奔放なギャル仲間たち。しかし社会に出た彼女たちは、実はちゃっかりみんな仕事で成功を収めている。結は言わずもがな、国家資格である管理栄養士として活躍し、出版社に勤めていたり、農業を始めていたりと多彩。

令和元年(2019年)のデータによると、日本の女性の非正規雇用率は56%ほどらしい。だが、ハギャレンメンバーは自分のやりたいこと、好きなことに忠実に、しっかりキャリアを築いている。彼女たちの人生、決してゆるくはない。

世のなか、自分の好きなことや得意なことを軸に仕事を探す人もいれば、実現可能性を見据えながらキャリアを築く人もいる。ハギャレンのメンバーたちのように、一見フリーでやりたい放題生きているように見えても、彼女たちはしっかり自分にできることを考えながら形にしたのだ。

とりわけ、お金がなくお菓子を食べながら日々を凌いでいた鈴音(岡本夏美)が、農業を仕事にしたのは感慨深い。

なぜ理想が受け入れられないのか

結と菜摘は、高齢者向けの栄養バランスを考えたお弁当作りを計画する。しかし菜摘の勤務先であるコンビニチェーンの商品開発部長は、彼女たちの必死の提案を何度も却下する。

「時期を問わず安定供給できる食材を使っていない」「盛り付けや調理に手間がかかり、人件費がかかる」といった、実務的な問題が却下の理由だ。部長たちの言っていることは正論であり、企画が形になったあとの持続性なども含め考えると、もっともな意見ではある。

しかしどうしても、提案に対してあまりに親身になってもらえないのは、結と菜摘が“若い女性だから”なのでは……? と勘ぐってしまう。提案の内容に問題があるのなら、どうすれば実現できるのか、一緒に考えてくれてもいいのではないか。企業としての利益を考えるのは当然のことだけれど、まともに話も聞かずに門前払いなのは違和感しかない。

男女平等が叫ばれる現代において、若い女性の意見が軽視されがちな現実を想起してしまうシーンでもあった。

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『おむすび』第22週(C)NHK

タイミングを同じくして、かつて結たちが暮らす町内会のメンバーが寄り合っていた、米田家のヘアサロンは少しずつ静かになってきていた。例外なく高齢化の波がやってきているのか、早めに老人ホームへの入居を決めて町内会を出るメンバーも現れた。

しかし、寂しさはあれど、この事実が結たちの諦めかけた心に火を灯す。やはり高齢者向けの弁当は必要だ、とあらためて部長たちに進言。理想はあれど実現が難しいのなら、どうすれば少しでも実現に近づけられるか知恵を絞る。現実と折り合いをつけながら突破口を探す“しつこさ”を教えてもらえる週でもあった。

SNS上でも「確かに、理想ばかりじゃ生きていけないよね」「心を軽くしてくれるドラマ」という声が見られた。簡単に諦めない結たちの姿から得られるものは、たくさんある。



NHK 連続テレビ小説『おむすび』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_