『バニラな毎日』第7週では、主人公・白井(蓮佛美沙子)が 事故に遭い、パティシエとしてもっとも大切な手に怪我を負ってしまう。店を再建しようと立ち上がったばかりの彼女に、新たに立ちはだかった壁だ。そんな白井のもとには、料理研究家・佐渡谷(永作博美)やお菓子教室の生徒・秋山静(木戸大聖)をはじめ、これまでお菓子教室を通して知り合った人々が見舞いに訪れた。たった15分の放送ながら視聴者の心を揺さぶり、SNSでも「泣かされた」「人の感情の描き方が好き」と絶賛された第7週。その見どころを振り返る。
事故と手の怪我……白井に降りかかる試練
『バニラな毎日』第7週では、店を復活させようと立ち上がったばかりの白井(蓮佛)が交通事故に遭ってしまう。パティシエにとって生命線とも言える手に怪我を負ってしまうという、衝撃的な展開が描かれた。
果たして元通りになるのか、それとも後遺症が残ってしまうのか……。白井は無事に退院の日を迎えたが、その後も手に違和感を覚える描写があり、視聴者の間でも緊張感が走る。彼女にとってお菓子作りはライフワークであり、生きる意味そのもの。そんな彼女が直面する「思うように動かない手」は、今後の物語に大きな影を落としそうだ。
大学芋に込められた想い
白井とその母(筒井真理子)は、過去のちょっとした行き違いから、どうも距離を感じる母娘関係だった。しかし白井の事故がきっかけで、彼女たちは久しぶりに言葉を交わすことになる。母に対してかしこまった敬語を使う白井。その緊張している様子から、彼女が必死に、たまたまお見舞いにやってきた佐渡谷(永作)とその恋人を引き留めた理由が察せられる。
「甘いものが欲しい」と頼んだ白井に対して、母は「この子に甘いものを持ってくる人なんていないでしょう」と言いながら、手作りの大学芋を持ってきた。下手なところで買ってくるより文句を言わないと思って、と重ねた母だが、素直になりきれない不器用な愛情が、持参した大学芋に込められている気がしてならない。直接的な言葉ではなく、行動で愛情を示す表現が絶妙だ。
佐渡谷とヴィクトーの“ピティビエ”
白井の退院を祝うために、佐渡谷とその恋人ヴィクトー(マッシモ・ビオンディ)が用意したのは、フランスのパイ菓子「ピティビエ」。パイのサクサクとした食感と、挟まれたアーモンドクリームの風味が特徴のピティビエは、まだ手が本調子ではない白井でも食べやすいお菓子。そこには、白井への細やかな気遣いが感じられる。
前述した、大学芋を用意した母のシーンでもそうだが、苦しい状況に立たされている白井に対して“お菓子”で思いやりを伝えるこれらの描写は『バニラな毎日』ならではと言える。佐渡谷とヴィクトーが、二人で協力しながらピティビエをつくっていることから、二人の仲の良さや信頼関係を描き出す効果もある。
白井がお店を再建しようと踏み出した矢先に、またしても降りかかった大きな試練。今後、彼女はどうやってこの壁を乗り越えていくのか? SNS上では「たった15分で泣かせてくる!」「人の感情の描き方が好き」といった、キャラクターの魅力に言及する声も多い。白井を応援したい気持ちは、全視聴者の共通するところだろう。
NHK 夜ドラ『バニラな毎日』毎週月曜~木曜よる10時45分放送
NHKプラスで見逃し配信中
ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_