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映画界の“歌姫”たちに続けるか? 華々しく女優デビューする若手歌手に“注目”

  • 2025.2.27
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(C)SANKEI

中島健人が主演を務める映画『知らないカノジョ』が2月28日に公開となる。ヒロインを演じるのは、シンガーソングライターのmilet。劇中で演じるのは、歌手になる夢を諦めて夫を支える孤独な妻であり、もう1つの世界線で活躍する人気歌手・前園ミナミ。miletは今作が映画初出演で、本格的な演技も初挑戦となる。

実際に活躍する、または無名ながら実力のある女性シンガーソングライターにスポットを当てた映画はこれまで多く制作されてきた。『知らないカノジョ』もまた、紛れもなく前者のパターンだと言えるだろう。

YUI、miwa、大原櫻子、アイナ・ジ・エンド……多くのアーティストが通ってきた女優デビュー

女性シンガーソングライターが出演する映画で最も有名なのは、2006年公開の『タイヨウのうた』ではないだろうか。出演したのはYUI。すでにデビューした後ではあったが、「YUI for 雨音 薫」名義でリリースした「Good-bye days」は彼女の代表曲となり、後述するmiwa、そしてmiletへと受け継がれる一つのモデルケースとなっていく(3人ともソニーミュージック内のレーベルというのが共通点にある)。映画公開と同年に放送されたドラマ『タイヨウのうた』では、女優の沢尻エリカが同名役を演じ、歌手デビューをした、YUIの逆パターン。この翌年にあの有名な舞台挨拶が行われることとなる。

miwaは2015年公開の映画『マエストロ!』でヒロイン役、2017年の『君と100回目の恋』では主演の一人を演じている。2010年にデビューしたmiwaは、2012年リリースの「ヒカリヘ」で一躍有名に。そう考えると、miwaの場合はある程度の知名度を獲得してからの女優デビューということになる。『マエストロ!』ではフルート奏者の役ということも特徴的だ。YUI同様に、miwaもこの2作で女優としての道は途切れてしまっている。

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大原櫻子は2013年公開の主演映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』で、女優として、さらに歌手としてもデビューしている。アーティストとしては2015年に『NHK紅白歌合戦』に初出場。映画、ドラマ、舞台とコンスタントに活躍し、2019年にはNHK連続テレビ小説『なつぞら』に出演。デビューから10年が経った『大原櫻子10周年スペシャルコンサート -10(天)空の歌-』にて、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』で共演した佐藤健がスペシャルゲストとして登場したことが大きな話題となった。

アイナ・ジ・エンドにとって初主演映画となった2023年公開の『キリエのうた』もその一つに数えられる。アイナが演じるキリエは、歌うことでしか声を出せない住所不定の路上ミュージシャン。初めて公開されたキャラクタービジュアルは、アコースティックギターを爪弾く姿だった。アイナはほかにもドラマ、舞台でも女優として活動をしており、ジャニス・ジョプリンを演じたミュージカル『ジャニス』を例に、その声に見出された運命的な役であれば引き受けている、のかもしれない。

ほかにも藤原さくら、井上苑子といった女性シンガーソングライターがいるが、ギターを弾いていない別のケース(前時代的な言葉で言えば“歌姫”)では、中島美嘉も2001年放送のテレビドラマ『傷だらけのラブソング』で華々しく女優、歌手デビューしたシンガーソングライターだ。後の主演映画『NANA』シリーズから生まれた「GLAMOROUS SKY」は誰もが知る映画から生まれたヒット曲である。

『知らないカノジョ』は歌手としてだけでなく、miletの人懐っこい演技が魅力に

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こうした作品は日本のみならず、海外にも多く存在している。ホイットニー・ヒューストン主演の1992年公開の映画『ボディガード』はあまりにも有名であるが、レディー・ガガ主演の2018年公開の映画『アリー/ スター誕生』は、ガガがシンガーソングライターのアリー役を演じ、彼女の歌唱力、ステージングが存分に生かされたミュージカルドラマだった。

『知らないカノジョ』は、2021年公開のフランス映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』をベースに、設定や舞台を改変したラブストーリーだ。筆者は公開前に試写にて本作を観ているが、milet演じる前園ミナミが路上にて「I still」を弾き語りで披露する劇中のシーン然り、その楽曲が主題歌になっていること然り、設定やストーリーは全く違うものの『タイヨウのうた』から脈々と受け継がれる映画フォーマットにあるように感じた。ただ、それを否定するわけではなく、大学時代のミナミを演じる等身大のmiletの演技は女優としてもナチュラルであり、彼女がファンから広く親しまれている面でもある。公開に伴い、miletと中島健人が多くのメディアに出演しているが、求められているのはやはりmiletの真摯で、少し人懐っこい部分な気もしている。ここからmiletがアーティスト活動と並行して、女優としても活動していくのかは定かでないが、この作品を機にしてさらなるステップアップを見せるのは確実だ。


ライター:渡辺彰浩
1988年生まれ。福島県出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』展、『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。