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視聴者を震わせる!“2025年冬ドラマ”思わず次回が気になる作品を一挙紹介

  • 2025.1.29

2025年冬(1~3月)クールの連続ドラマが出揃いつつあるが、考察要素を劇中にうまく散りばめながら、ドラマならではの魅力を模索している作品が多い。 その筆頭は、バカリズム脚本の『ホットスポット』だろう。

SF的世界と他愛のないおしゃべりの落差が笑いを生むバカリズム脚本の『ホットスポット』

日本テレビ系で日曜夜10時30分から放送されている本作は、富士山の麓にある田舎町に宇宙人が潜んでいるというSFドラマ。 ビジネスホテルで働くシングルマザーの遠藤清美(市川実日子)は、同僚の男性・高橋孝介(角田晃広)の正体が宇宙人だと知ったことをきっかけに、温泉を目当てに人間に擬態した宇宙人がこの街に訪れていることを知る。

いわゆる宇宙人と人類の出会いを描いたSFドラマだが、劇中で描かれるのは、ホテルの店員として働く清美の仕事の風景と、彼女の幼馴染である小学校教師の中村葉月(鈴木杏)、泌尿器科の看護師・日比野美波(平岩紙)との3人でのおしゃべり。
宇宙人の登場する壮大なスケールのSFでありながら、物語は地に足のついたものとなっている。
このギャップはバカリズムが得意とする作劇手法で、2023年に高い評価を獲得した『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)も、タイムリープを題材にした同じ時間を何度も繰り返すSFドラマの中に、友人同士の他愛のないおしゃべりの楽しさを延々と見せる日常描写が共存していた。

この壮大なSF的世界観と日常的なおしゃべりの落差が、脱力した笑いに繋がっているのがバカリズム脚本のドラマの魅力だろう。

官僚出身の謎の教師が生徒たちを挑発する『御上先生』

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(C)SANKEI

一方、日曜劇場(TBS系日曜夜9時枠)で放送されている『御上先生』は、官僚派遣制度で市立高校に出向した文部科学省の官僚・御上孝(松坂桃李)が高校生たちと向き合う中で社会問題が浮かび上がる現代的な学園ドラマとなっている。
『女王の教室』(日本テレビ系)を筆頭に、生徒たちを挑発して価値観を揺さぶることで、本当の教育を行おうとする不気味な教師が主人公の学園ドラマがテレビドラマでは定期的に作られているが『御上先生』もまた、謎の教師・御上の挑発的な行動が生徒たちを翻弄していく様が見所となっている。

また、生徒役がとても豪華で、奥平大兼、窪塚愛流、蒔田彩珠、髙石あかり、影山優佳、上坂樹里といったすでにドラマや映画に出演した話題になった若手実力派俳優が勢揃いしており、とても見応えがある。
だが、学園ドラマは、無名の若手俳優が生徒役で突然ブレイクする瞬間があるため、他の生徒役の演技にも注目したい。 一方、教師役で松坂桃李と吉岡里帆が共演しているのを観ると、松坂が小学校教師、吉岡が教育実習生を演じた2016年のドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)を思い出す。
松坂が演じる御上と同期の官僚・槙野恭介を演じた岡田将生も『ゆとりですがなにか』で主役を演じていたが、当時、ゆとり世代の頼りない若者を演じた3人が本作で共演している姿を観ていると、時の流れを感じる。

香取慎吾がおじさんを演じる社会派ホームドラマ『日本一の最低男』

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(C)SANKEI

対して、『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)は社会派テイストのホームドラマだ。
本作は元テレビ局の報道マンで、現在はフリージャーナリストの大森一平(香取慎吾)が区議会議員選挙に出馬して家族に理解のある議員としてSNSでアピールするために義理の弟の子育てに関わるという異色のホームドラマ。 本作のプロデューサー・北野拓はNHK出身で、野木亜紀子脚本のドラマ『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』(NHK)や『連続ドラマW フェンス』(WOWOW)といった社会派ドラマをプロデュースして、高い評価を受けている。今回はフジテレビで初めてプロデュースするドラマだが、北野らしい社会派テイストとフジテレビドラマらしいコミカルなタッチが融和した作品となっている。
また、主演の香取慎吾がフジテレビのドラマで主演を務めるのは久しぶりだが、年相応のおじさん役が板についている。「新しい地図」の草彅剛、稲垣吾郎と同じように、魅力的なおじさん俳優として活躍の場がこれから増えそうだ。

謎だらけで先の展開が読めない『フォレスト』と『私の知らない私』

一方、序盤が謎だらけで先の展開が全く見えないため、視聴者の考察が盛り上がりそうなのが、『フォレスト』と『私の知らない私』である。

『フォレスト』は、テレビ朝日系で日曜夜10時15分から放送されている朝日放送制作の作品で、「嘘」がテーマのサスペンスドラマとなっている。
フラワーギフトショップで働く幾島楓(比嘉愛未)は、クリーニング店「小林ランドリー」の店主・一ノ瀬純(岩田剛典)と平凡だが幸せな生活を送っていたが、ある日、母親が亡くなったという知らせが届き、久しぶりに実家に戻る。 しかし母親の幾島鈴子(松田美由紀)は生きており、自分が経営するホテルグループ「ブランフォレスト」の後継者に楓を無理やり継がせようとする。
鈴子は金と権力の力で楓を支配しようとする毒親で、そんな鈴子のやり口が嫌で楓は実家から逃げ出したことを純に隠していた。一方、純も何か秘密を抱えており、鈴子と純の間にも因縁がありそうだ。

先の展開は読めず、母の鈴子も恋人の純も行動が怪しいため、楓がどうなるのかわからない。恐怖に怯える比嘉愛未の表情が圧巻で、ホラーとしても楽しめる一品だ。

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(C)SANKEI

一方、木曜深夜に放送されている『私の知らない私』(日本テレビ系)も先の展開が読めないサスペンスドラマだ。

主人公の羽田芽衣(小野花梨)は山中で倒れ、目を覚ますと一年間の記憶が失われていた。彼女の婚約者だと名乗る外科医の西島奏多(小池徹平)からフォトウェディング会社に転職したと言われた芽衣はプランナーとして働くことになるのだが、そこに高校時代の親友だったが音信不通だった篠原翠(馬場ふみか)がブライダル専門のヘアメイクアーティストとして現れる。再会を喜ぶ芽衣だったが、彼女は芽衣に恋人を殺されたと恨んでおり、芽衣を貶めようとする。

芽衣の記憶のない「空白の一年」については、これからじわじわと明かされるのだろうが、いつの間にか自分が誰かを殺害しており、周囲から加害者として敵意を向けられるという恐怖が劇中では描かれている。

そもそも婚約者も仕事も、誰かが偽装した嘘の世界かもしれず、続きの展開が全く読めない。 ビジュアルだけ観るとよくあるドラマだが、描き方がとても新しい作品だと感じた。


ライター:成馬零一

76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)がある。

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