計算に時間がかかりそうに見える問題でも、工夫を凝らすことで、驚くほど簡単に答えを算出できるときがあります。
今回の問題も複雑そうに見えますが、計算の工夫をするポイントさえ見抜ければ、電卓に数字を打ち込むよりも速く答えを出せるかもしれませんよ。ぜひ、挑戦してみてください。
問題
次の計算をしなさい。
98+46−98×46÷98
※制限時間は10秒です。
解答
正解は、「98」です。
二桁の数の掛け算や割り算に躊躇していると、10秒以内に計算をするのは難しいでしょう。
次の「ポイント」で、どのような計算の工夫をしたらよかったのか、確認してみましょう。
ポイント
今回の問題のポイントは「掛け算と割り算を一気に計算すること」、そして「計算の順序を変えること」です。
この二つの工夫をすることで、次のように答えを出せるようになります。
98+46−98×46÷98 ←掛け算と割り算を一気に処理する(98×46÷98=46)
=98+46−46 ←46−46から計算する(46−46=0)
=98
とても簡単に答えが出せるように見えますね。しかし、どうしてこのような工夫が可能なのか不思議に思う人もいるでしょう。
次の解説では、工夫が成り立つ背景をステップごとに説明していきます。
ステップ1: 掛け算と割り算を一気に計算する
まず、掛け算や割り算は足し算や引き算よりも優先的に計算をするというルールを思い出してください。
よって、計算は左の足し算からではなく、中央の掛け算から始めることになります。
とはいえ、「98×46」の計算を10秒以内にするのは難しいものです。そこで、掛け算の直後の割り算に注目します。「÷98」の98は直前の掛け算の掛けられる数と等しい数です。このように、掛け算の直後に掛けられる数で割ると、その答えは掛ける数になります。
■×▲÷■=▲
<成り立つ理由>
■×▲÷■
=(■×▲)/■ ←割り算を分数で表し、■で分子分母を約分する
=▲/1
=▲
この考え方を使えば、次のように掛け算と割り算をまとめて計算することができます。
98+46−98×46÷98
=98+46−46
ステップ2:計算の順序を変える
残りの式は足し算と引き算です。
この二つの計算の優先度は同じなので、「98+46」をしてから「−46」に進めばよいのですが、繰上りや繰り下がりがあるため、時間のかかる計算と言えるでしょう。
そこで、計算の順序を変えて「46−46」から計算することを考えます。引かれる数と引く数が同じなので、当然答えは0です。足す数が0になったので、最後の足し算は一目見ただけで答えが98だと分かります。
98+46−46
=98+0
=98
しかし、このように計算の順序を勝手に変えてもよいのでしょうか?
計算の順序は変えてもよい場合と、変えてはいけない場合があります。例えば、結合法則が使える場合は計算の順番を変えることは問題ありません。
<結合法則>
足し算や掛け算では、計算の順序を変えても答えが同じという法則
(◎+▲)+■=◎+(▲+■)
(◎×▲)×■=◎×(▲×■)
ただし、結合法則は引き算や割り算には使えません。そこで、今回の式を足し算だけの式に変換してみましょう。
98+46−46
=98+46+(−46)
これで、結合法則が利用できるようになりました。あとは、以下のように計算するだけです。
98+46+(−46)
=98+{46+(−46)} ←46+(−46)の部分を先に計算する
=98+(46−46) ←+(−46)を−46に再変換
=98+0
=98
まとめ
今回の問題では、「掛け算の直後に掛けられる数で割ると、その答えは掛ける数になる」ことを利用して、二桁の掛け算や割り算を回避できました。
また、結合法則を使えば計算の順序を変えられるので、時間を節約することも可能です。
計算をシンプルにする工夫は、計算ミスを防ぐことにもつながります。ぜひ、さまざまな問題にチャレンジして、工夫のバリエーションを増やしていってください。
※当メディアでご紹介する数学関連記事においては、複数の解法をもつものもございます。 あくまでも一例のご紹介に留まることを、ご了承ください。
文(編集):VY
数学とIT技術学習が趣味のWebライター。実用数学技能検定2級と数学教員免許を取得後、家庭教師や学習支援スタッフとして数学指導を行ってきた。文系と理系の別、年齢にとらわれない、誰でも楽しめる数学解説作成を目指している。
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