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朝ドラ『おむすび』橋本環奈が演じたギャルから栄養士への壮大な“転身劇”

  • 2024.12.28

神戸で生まれ、糸島に育ち、姉・歩(仲里依紗)の影響からギャル文化を忌避していた主人公・米田結(橋本環奈)。これまでの物語の軌跡として、彼女にギャル友達ができ、ギャルの精神を胸に生きるようになる過程が糸島編、プロ野球選手を目指す恋人・四ツ木翔也(佐野勇斗)のために栄養学校へ通うようになるのが東京編、そして翔也の勤める星河電器の社員食堂で働くようになるのが神戸編だ。肩を壊して野球を続けられなくなった翔也との関係を前に、結は再び糸島へと帰省する。

ギャル文化を浸透させる糸島編

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『おむすび』第13週(C)NHK

結はギャルが苦手だった。いや、苦手なんていうレベルではない。ハッキリと言葉にするほど嫌いだった。それは、伝説のギャル集団「博多ギャル連合=ハギャレン」のカリスマギャルとして君臨していた、結の姉・歩の影響が大きい。

神戸に住んでいた当時、阪神淡路大震災を経験した米田家。歩はこの震災で親友を亡くしている。二人の間で出ていた「ギャルになる」という思いを体現するため、歩は髪を明るく染めた。服装も派手にし、その目立つ様子にほかの家族は驚いたが、歩本人は気にも留めない。彼女にとって、それはもう二度と話すことのできない、親友との約束だったからだ。

しかし、事情を知らない結からすれば、唐突にギャルになり、周りの迷惑も顧みずに自分勝手に行動するようになった姉の思いが見えてこなかった。次第に心の距離は離れ、やがて歩は東京に行ってしまい、物理的な距離も離れてしまう。

「あの歩の妹」と指をさされる生活に耐えかねていた結だが、ある日「ハギャレン」を復活させたいと望むギャル集団に声をかけられる。ルーリー(みりちゃむ)たちとは、最初は相容れないものの、少しずつ交流が深まっていく。

やがて、仲間がピンチのときには駆けつけること、他者の目を気にせず自分の好きなものを貫くこと、といったギャルの掟に触れるごとに、結の心にも変化が訪れるのだ。

ルーリーたちとの出会い、そして恋人・翔也との交流によって、結の人生の舵が切られていく。プロ野球選手を目指す翔也を支えるべく、結は栄養士になるため、東京の栄養学校へ通い始める。

栄養士を目指し奮闘する東京編

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『おむすび』第13週(C)NHK

どうしても困った人を放っておけない、助けにならないと気が済まない気質について、結は「米田家の呪い」と口にしていた。恋人がプロ野球選手になって立派に活動し続けられるよう、栄養士を目指す精神も利他に基づいているように思える。

結が栄養学校に通う東京編では、同期の生徒として矢吹沙智(山本舞香)、湯上佳純(平祐奈)、森川学(小手伸也)と出会う。

スポーツ専門の栄養士を目指す沙智=サッチンとは、目標に対する熱量・姿勢の違いについて意見が異なり、たびたびぶつかるシーンもあった。お嬢様の佳純=カスミンは独特の価値観でマイペースに突き進む面があり、結は森川=モリモリと、なんとかチームの一体感を上げようと苦心する。

献立の作り方で意見が交差し、ちょっとした言葉の綾で気持ちがすれ違う。結は、糸島にいたころとはまた違った人間関係の機微を学ぶことになった。それに加え、慣れない就職活動に四苦八苦し、多くの人が経験する集団面接や“お祈りメール”に心を痛ませる場面も。

紆余曲折ありながらも、結はなんとか栄養学校を卒業し、翔也の勤める星河電器の社員食堂に栄養士として就職することに。恋人のツテで就職先を決めるなんて……と当初は渋っていた結だが、もともと翔也を支えるために栄養士になった彼女にとって、選んだ道には何の矛盾もないように見える

社員食堂で働くことを知る神戸編

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『おむすび』第13週(C)NHK

星河電器の社員食堂で働き始めた神戸編。ここで新しく出会うのは、少々気難しいところのあるベテラン調理師・立川周作(三宅弘城)と、先輩調理師にあたる原口尚弥(萩原利久)だ。

栄養士として就職したはいいものの、現場の動きには慣れていない結。昼休みになると怒涛の勢いでやってくる社員たちを前に、最初は必死に洗い物や掃除をするくらいしか選択肢がない。

そのうえ、ベテランである立川には彼なりの流儀があり、社員たちに提供する料理のレシピもまともに共有されていなかった。少々味が濃すぎるようにも思える料理に対し、同じ課題感を持っていた原口と秘密裏にレシピ制作を進めるなど、これまでの結とは一味違ったアプローチをする面も垣間見える。

いきなり入ってきた栄養士である結に懐疑的だった立川だが、彼女に日替わりメニューのレシピ作成を任せるなど、次第に態度が軟化し始める。社員食堂を存続させるため、そして社員たちに美味しい食事を提供するため、と考えるスタンスは変わらないと気づいたからだろう。

結の仕事が軌道に乗り始めたタイミングで、また新たな曲がり角。翔也が肩を壊してしまい、これまでと同じように野球を続けることは難しくなってしまった。結婚も直近かと思えるほど順調だった彼らの関係性に、修復の難しい亀裂が入ってしまう。

翔也は、まともに野球もできない自分に価値はないと思っている節があり、「これじゃ結を幸せにできない」と口にする。その発言に違和感を覚えた結は、しびれを切らしたように「じゃあ別れる、さようなら」と翔也の元を離れていってしまう。

お互いに距離をとり、自分や相手と向き合い、これからのことを考えるためにも、結がいったん糸島へ帰省するのは良い選択だった。祖母・佳代(宮崎美子)のリクエストを受け、結がつくった夕食は豚肉と玉ねぎのニンニク炒め。翔也との思い出の詰まった食事でもある。すると、早く結に会いたくなった、と言って黒髪に戻した翔也が糸島にあらわれた

二人はあらためて、お互いに向き合って本音でやりとりする。翔也の「これじゃ結を幸せにできない」発言に、結が覚えていた違和感。それは、彼女が翔也に「幸せにしてもらおう」とは一ミリも考えていないことによる、二人のスタンスの違いだった。

「一緒に幸せになろう」と口にした結は、涙しながら「うちと結婚してください」と逆プロポーズ。次週「結婚って何なん?」へと繋がっていく。



NHK 連続テレビ小説『おむすび』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_