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「散々すぎる」「気の毒」取材と称して呼び出され、再び糾弾される主人公に同情の声… 木曜劇場『わたしの宝物』

  • 2024.12.12

ドロドロ不倫ドラマの様相を呈しつつある『わたしの宝物』において、主人公・美羽(松本若菜)に接触した水木莉紗(さとうほなみ)の言動に対する言及が目立つ。美羽の前職の後輩であり、歳の離れた友人である小森真琴(恒松祐里)への意見も多かったが、ここにきて「場をかき乱す第三者がまた増えた」「美羽、気の毒だな。いろいろな人から責められて散々すぎる」の声も。

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(C)SANKEI

もう一人の要注意人物、浮上?

かつて真琴は、美羽、美羽の夫・宏樹(田中圭)、そして美羽が再会した幼馴染・冬月稜(深澤辰哉)をめぐる“不倫関係”に土足で入り込み、無闇やたらに場をかき乱す行為をして、SNS上で厳しい声を浴びせられていた。宏樹が心を癒すサードプレイスとして使っている、喫茶店・TOCAのマスターである浅岡(北村一輝)から「他人の幸せをあんたが決めるな」と忠告される場面まであったほど。

しかし、真琴と同等か、それ以上に要注意な人物が浮上した。ともにフェアトレードの会社を運営する、冬月の同僚・莉紗である。

彼女は冬月と、アフリカに学校をつくる夢を果たすため渡航していた。現地で事故に巻き込まれ、負傷して病床に伏す冬月を、もう一人の同僚と偽った過去がある。冬月が繰り返し「大切な人」と称する美羽に密かな敵対心を抱き、ここで嘘をついて冬月が亡くなったことにすれば、彼を引き留められると考えた末の行動だった。この件については、莉紗自身が冬月に打ち明け、謝罪している。

冬月から美羽の話を聞かされるも、思いをせき止めることができなかった莉紗は、冬月に思いを告げる。しかし受け入れられることはなく、退職を決意。このまま冬月から距離をとるのかと思いきや、莉紗は冬月の”大切な人”である美羽の人間性を知りたい好奇心のまま、取材と称して接触を図る。

序盤は、図書館でおこなわれたフリーマーケットについての話を聞いていた莉紗。しかし、次第に本心が顔を覗かせ始める。美羽が冬月との思い出に触れ「まだ知らない世界があるんだなって、感激しました」「あのときも昔も、いつも救ってくれました」と笑顔で言うのを見るや否や、「冬月は救われましたか?」と必死に我慢していた感情を爆発させた。

宏樹のことを密かに思っていた真琴のように、莉紗の立場もつらい。仕方がないことにせよ、好意が受け入れられない現実を飲み下すのは難しい。しかし莉紗が「冬月は、あなたに会いたい一心で生きて帰ってきたんですよ」と美羽を糾弾するところまでは理解できても、続けて「冬月稜は、私の大切な人です」「私は、あなたが許せません」と追い込んだ心境は、やはり真琴と同じような“正義の押し付け”ではないだろうか。 

美羽が幸せになる道は

かつては仲のよかった夫婦だったのに、夫・宏樹のモラハラめいた言動に少しずつ神経をすり減らしていった美羽。そんなタイミングで再会した幼馴染・冬月に癒され、子どもを宿したとわかった瞬間に、相手は海外で亡くなってしまった。

後にそれが間違いだったと判明するわけだが、そのころにはもう娘の栞が生まれており、一人娘を抱いた宏樹は元の優しさを取り戻していく。「子どもさえいれば」と悩んでいた少し前のことが嘘のように、バラバラだったパズルが上手く嵌った頃合いを見計らうようにして、また冬月が美羽の目の前に現れた。宏樹にも冬月にも、誰にも言えずにいる真実を抱えながら、唯一本当のことを告げられた母親は手の届かないところへ行ってしまった……そんな美羽の心境を思うと、彼女が身を裂かんばかりに悩んでいるのがよくわかる。

美羽が幸せになる道はあるのか。そう考え出すと、そもそもの幸せの定義や、このドラマにおける「ハッピーエンド」とは何か、と思い至らずにはいられない。宏樹が美羽との離婚を考え直してくれればいいのか。また美羽と宏樹、そして栞の三人で、夫婦や家族の関係をやり直すことができれば大団円となるのか。

物語は結末に近づいている。どんな終わりが示されるべきなのか、どの視聴者にも見当さえつかない状況は、まさに五里霧中に立たされているような登場人物たちとシンクロしているようだ。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。
X(旧Twitter):@yuu_uu_