1. トップ
  2. 第1話から唸りたくなる好演が繰り広げられる…!オーディションを勝ち抜いたキャストたちの深い演技“日曜劇場”

第1話から唸りたくなる好演が繰り広げられる…!オーディションを勝ち抜いたキャストたちの深い演技“日曜劇場”

  • 2025.1.24

2025年1月クールのドラマで、『御上先生』は放送前から大きな話題を呼び、注目を集めていた。東大卒のエリート文科省官僚が、東大進学率の高い私立高校3年の担任になるという設定を聞いたものの、一体どんな内容なのかよくわからず、期待が最大限高まった状態で第1話に臨んだところ、期待を大きく上回る面白さだった。 ※この記事にはネタバレが含まれています。

興味をそそられる松坂・吉岡コンビ

undefined
日曜劇場『御上先生』第1話(C)TBS

『御上先生』の主演は、映画『新聞記者』では官僚役を、ドラマ『ゆとりですがなにか』では教師役を演じた松坂桃李。御上孝に担任の座を奪われた形で副担任となった是枝文香役は、『ゆとりですがなにか』では松坂が担任教師役を演じる小学校のクラスの教育実習生役を演じていた吉岡里帆。この松坂・吉岡コンビが、学校を舞台に教師として対峙するという設定に、まず興味をそそられた。

是枝は、2年生から持ち上がりで担任を受け持つはずが、大学受験を控える大事な3年生の学年で、御上が担任に赴任したことに不満を抱いている。そんな是枝に御上は、「こんなタイミングで担任を代えられたんですよ。戦うべきです」と告げる。彼女が担任に返り咲いたら、自分は退かなければならないのに。是枝は、御上が敵なのか味方なのか測りかねてしまう。

一見冷たそうで、実は温かい面を持っているかもしれない御上の眼差しを演じる松坂の表現力に圧倒された。そして、自分はこれからどんな行動をとるべきなのか、心が揺れる不安な様子の是枝を演じる吉岡にも安心感しかない。

ギリギリまで隠されていた岡田将生の出演

undefined
日曜劇場『御上先生』第1話(C)TBS

初回放送の2日前まで出演が明かされていなかった岡田将生は、御上の文科省同期の官僚・槙野恭介を演じている。『ゆとりですがなにか』などでも共演した岡田と松坂は、普段から親しい仲であることは有名だ。そんな岡田が、御上が“左遷”だと語る高校赴任を命じられるように陥れたかもしれない槙野に扮しているが、不敵な笑みを浮かべつつも、きっと槙野は御上を裏切ってはいないと期待させるような表情を見せているのが秀逸。第2話以降、御上と槙野の関係が紐解かれていくのが楽しみだ。

御上と槙野の上司で文科省総合教育政策局局長の塚田幸村の食えない雰囲気を醸し出す及川光博もたまらないし、生徒思いの理事長のようで腹に一物ありそうな古代真秀に扮する北村一輝も最高だ。さらに、官僚の試験を落ちて教師になったという3年生の学年主任・溝端完の、御上への嫉妬をあらわにする迫田孝也の演技も面白い。

筆者が気になったのは、養護教諭の一色真由美が御上と面と向かって挨拶する前、彼のうしろ姿を意味あり気に見ていたこと。とても優しそうな一色だが、何かを知っていることを匂わせる臼田あさ美の演技にも注目したい。

生徒役キャストの輝く演技

大人役キャストたちが安定感抜群の演技を見せる中、生徒役のキャストたちもオーディションを勝ち抜いて役を勝ち取っただけあって、第1話から思わず唸りたくなる好演が繰り広げられていた。先日、当サイトに生徒役は朝ドラや大河ドラマ、話題の作品への出演経験者が多いという記事を書いたが、第1話で特に光っていたのは神崎拓斗役の奥平大兼と、富永蒼役の蒔田彩珠。神崎と富永は幼馴染みという設定で、富永は報道部の部長の神崎が御上に敵意を抱いて突っ走ろうとしている様子を心配している。

undefined
日曜劇場『御上先生』第1話(C)TBS

富永は、御上が担任になったことでクラスが騒がしくても、飄々とした態度で、むしろ面白がっている模様。ゲームセンターにいるところを御上に見つかっても、気にも留めない富永。一方、ピリピリし続けた挙句、文科省の闇を暴こうと躍起になり、「御上先生は犯罪者」という学校新聞を発行した神崎。御上にゴシップ記事だと言われた神崎の悔しそうな、生意気そうな顔を表現する奥平と、同級生だが母性を感じさせる富永に扮する蒔田の懐の深い演技に引き込まれた。

第2話以降も、29人の生徒それぞれにスポットがあたるそうなので、各キャストの好演に期待したい。

『新聞記者』の脚本家と主演俳優による重厚なドラマ

御上は、赴任早々、生徒全員の顔と名前はもちろん、部活動や家庭環境なども暗記していた。とにかく頭が良く、生徒に何を聞かれても、神崎が食い下がっても、あっという間に論破してしまうエリートだ。だが、生徒のことを考え、教育現場を変えようとしている温かさが、第1話を見ただけで十分伝わってきた。

そんな御上を見事に体現し、よどみなく長ゼリフを操る松坂に、初回から完全にノックアウトされてしまった。『御上先生』からは普段の松坂桃李の姿は微塵も感じられず、御上孝という人物そのものとして存在しているという印象を受けた。

教育を変えるために文科省に入ったという御上。第1話には時折、彼の過去の場面が挟み込まれていたが、御上にどのようなことが起きて今に至ったのか。そして、彼の真意は何なのか。常盤貴子が演じる、神崎がスクープした不倫によって教職を追われ、コンビニで働く元教師の冴島悠子と、国家公務員試験で起きた殺人事件、御上の“左遷”と、文科省が繋がっているというのも大いに気になる。

『新聞記者』の脚本家・詩森ろばが紡ぐ物語は決して一筋縄では行かないと思うし、何層にも重なった複雑で重厚な展開が待ち受けているに違いない。同作でも主演を務めた松坂と、詩森との再コラボレーションが素晴らしい『御上先生』の第2話にも期待が膨らむばかりだ。



TBS『御上先生』

ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP