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『はたらく細胞』監督が演出を担当していた…!社会現象を巻き起こした“26年前の作品”を振り返る

  • 2024.12.28

1998年、リアルタイムで観ていて衝撃を受けたドラマ『神様、もう少しだけ』。人気音楽プロデューサーと、ごく普通の女子高生のラブストーリーだが、HIV感染という、当時の日本のドラマでは取り上げていなかったテーマを真正面から描き、高視聴率を獲得。視聴者の心に深く刺さり、忘れられない作品となった。 ※この記事にはネタバレがあります。

『神様、もう少しだけ』あらすじ

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(C)SANKEI

音楽プロデューサーとして成功している石川啓吾(金城武)は、大切な人を亡くし、生きることに傍観的になっていた。啓吾の大ファンである女子高生の叶野真生(深田恭子)は、彼のコンサートに行くのを楽しみにしていたが、チケットを紛失。チケット代を稼ぐために援助交際をした真生は、その際にHIV感染してしまう。

一方、コンサートの帰りに真生と出会った啓吾は、天真爛漫で素直な気持ちを自分にぶつけてくる真生に惹かれていく。啓吾と想いが通じ合い、幸せな真生だったが、HIV感染者となったことで、生活が一変する。

深田恭子の熱演が光る意義のあるドラマ

当時、弱冠15歳の新人だった深田は、エイズと向き合いながら、愛に生きようともがくヒロインが20歳になるまでを熱演。難役に挑戦した彼女は、大きな知名度を得ることとなった。金城は、香港映画『恋する惑星』などに出演するアジアの大スターだったが、『神様、もう少しだけ』への出演が、日本でも幅広く知られるきっかけとなった。それほど本作は注目度が高く、多くの視聴者を釘付けにしたのだ。

真生は不良少女というわけではなく、当時の“今風のギャル系”の、いわゆる普通の女子高生。援助交際もチケットを買うために、性行為は無しの1回だけのつもりだったが、相手と会って話すうちに性行為に同意してしまった。本作は、HIV感染の正しい知識を持たないことへの警鐘を鳴らし、軽い気持ちで性行為を行うことの代償を描出しており、このテーマのドラマを21時のゴールデンタイムに放送したことに大きな意義があったと思う。

仲間由紀恵や宮沢りえも出演

人気音楽プロデューサーと普通の女子高生の恋という部分は、シンデレラストーリーのようで、今で言う“推しとのリアルな恋”が実現するという夢のような話だ。金城が演じた啓吾は、クールに見えて、心に傷を抱えている。真生の真っ直ぐな愛情が、そんな啓吾の心を溶かしていき、2人は両想いに。だが、真生がHIV感染していることが分かり、2人の恋愛は厳しいものとなる。

啓吾の心の傷の原因は、プロデューサーとして売れる前に支えてくれた恋人のリサが、妊娠するも死産し、彼女も妊娠中毒症で亡くなったことだった。真生と交際し、彼女も妊娠するのだが、HIV感染した上での妊娠には大きなリスクがあり、啓吾は真生が心配でならない。啓吾は感染しておらず、HIV陰性だったが、やがて真生はエイズを発症する。

リサを演じたのは宮沢りえ。リサの妹で、啓吾がプロデュースしている歌手のカヲルを仲間由紀恵が演じた。当時、宮沢はすでに有名俳優だったが、仲間は俳優としては新人で、彼女も本作で知名度を上げた一人となった。ちなみに、仲間の歌唱シーンには工藤静香の歌声が使用されている。

ハッピーエンドを願った純愛ドラマ

HIV感染が学校で知られてしまい、真生がいじめを受ける展開には心が痛くなった。親友まで、自分がターゲットになりたくないからと傍観者となるなど、ここでもエイズの知識がまだ広まっていなかったことがよく分かる。

また、啓吾を好きなカヲルが真生に嫉妬してついた嘘で、真生と啓吾が引き裂かれる描写には、「どうか誤解が解けて、2人が幸せになってほしい」と願わずにはいられなかった。『神様、もう少しだけ』は、エイズという病を乗り越え、さまざまな壁を打ち破って、真生と啓吾がハッピーエンドを迎えることを、祈るような気持ちで見届けた純愛ドラマだった。

本作の後、仲間は『TRICK』や『ごくせん』シリーズに主演し、大人気俳優となっていくので、彼女が10代の頃に悪役的キャラクターを演じた『神様、もう少しだけ』は、ある意味、貴重かもしれない。

ヒットメーカーが26年前に送り出した名作

本作の演出を担当した一人である武内英樹は、『テルマエ・ロマエ』や『翔んで埼玉』シリーズ、そして最新映画『はたらく細胞』などの監督であり、超ヒットメーカー。1998年のドラマで、ここまでの演出を成したことに称賛を送りたい。

そして、『ラブジェネレーション』や『大奥』シリーズ、『ラスト・フレンズ』などで知られる浅野妙子が執筆した脚本が秀逸だからこそ、『神様、もう少しだけ』が心に響く作品になったのだと思う。真生のセリフからは、少女であるがゆえの純粋さと、恋人やお腹の子という、愛する者ができてからの強さなどが感じられ、真生を愛するようになってからの啓吾のセリフからは、ほとばしる情熱が伝わってくる。特に、啓吾の「お前と一緒にいたい。1分1秒も無駄にしたくない」というセリフが忘れられない。

現在、配信もされている『神様、もう少しだけ』。26年前のドラマだが、筆者同様、衝撃を受け、感動し、ずっと心に残るドラマになった人は多いはず。名作ドラマの1本として、今こそ観るのをお勧めしたい。



ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP