1. トップ
  2. 地上波ではもう放送できない?「何度でも観れる」24年前の“クドカン節全開”な作品にハマる若者が続出

地上波ではもう放送できない?「何度でも観れる」24年前の“クドカン節全開”な作品にハマる若者が続出

  • 2024.10.23

ヒット作を数多く生み出している宮藤官九郎が、初めて単独で脚本を担当した連続ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(以下『IWGP』)。2000年に放送されて大ヒットし、24年経った現在も配信で観て楽しむ人が多い人気ドラマだ。

リアルタイムで観ていた筆者は、毎週楽しみでたまらないほど本作の大ファンになり、偶然だが今では池袋に割と近いところに住んでいるため、池袋西口公園の近くを通るたびに、心の中でニヤニヤしてしまう。

『IWGP』が配信で観られるようになってから、若い世代にもハマる人が増えているという。なぜ20年以上前の本作が今でも人気なのか、理由を探ってみたい。

小ネタ満載のクドカン節ドラマ

石田衣良の同名小説が原作だが、ドラマは完全にクドカン節。監督は主に、『TRICK』シリーズで知られる堤幸彦が務めていることもあり、小ネタが随所に散りばめられた、原作とは異なる、おふざけ感のある面白さ満載の作品になっている。まず、ここがハマるポイントの1つと言えるだろう。

小ネタが盛りだくさんとは言え、池袋にたむろする不良たちの話なので、抗争や揉め事が多く描かれ、リンチや恐喝といった目を覆いたくなる描写もある。風俗やドラッグ、“ネズミ講”など、今ならコンプライアンス的に問題になりそうな要素を扱うシーンも多々あり、こういった場面が地上波で、しかもゴールデンタイムに放送されていたことに、若い世代は驚くと同時に、新鮮に感じるのかもしれない。

宮藤は、最近も『新宿野戦病院』で、“トー横キッズ”の薬物の過剰摂取や“パパ活”を物語に組み込んでいたが、『IWGP』ではより直接的な描かれ方で、薬物売買や“デリヘル”等を取り上げていた。

視聴者を惹き付けた長瀬智也が演じる主人公の魅力

筆者が思う『IWGP』の一番の魅力は、何と言っても主演の長瀬智也のカッコ良さだ。長瀬が演じているのは、主人公のマコト。彼は、地元である池袋の工業高校を卒業した後、“プータロー”をしている。現在では、“プータロー”という言葉は通じないかもしれない。フリーターと同じ意味で、マコトは定職に就かず、実家の果物屋を手伝ったり、賭けボウリングで小遣いを稼いだりしつつ、池袋西口公園辺りで遊んでいるのだが、近所の女性たちに大人気で、“セクスィーガイ”ランキングで常に1位に選ばれるイケメンだ。

もともとは、有名な不良として、池袋で名を馳せたマコト。20歳になった今では、「めんどくせぇ!」が口癖ながらも、頼まれたら断れずに人を助ける正義感があり、破天荒な方法でトラブルを解決する。そんなマコトを快演する長瀬がとにかくカッコ良く、そして面白く、男女問わずファンを増やした。今の若い世代にも、彼の魅力に惹かれる人は多いのではないだろうか。

クドカン作品と長瀬智也の相性は抜群

『IWGP』以降も、長瀬は宮藤が脚本や監督を務める作品に数多く出演している。クドカン作品と長瀬の相性は非常に良く、男性ではあるけれど、長瀬は宮藤の“ミューズ”的な存在になったのだと思う。TOKIOのボーカルでフロントマンだった長瀬は、俳優業をする際も、主にイケメン的な役どころを演じていたと思うが、クドカンは長瀬を正統派のイケメンとして扱うどころか、イタいキャラクターを嬉々として演じさせているのが面白い。

『IWGP』のマコトも“セクスィーガイ”ではあるが、勃起障害という設定だし、『うぬぼれ刑事』では恋愛体質でうぬぼれが強い刑事役。宮藤が監督・脚本を担当した映画でも、『真夜中の弥次さん喜多さん』では、“ヤク中”の喜多さん(中村七之助)とディープに愛し合うワイルドな弥次さん役、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』では、地獄の赤鬼・キラーK役だ。

宮藤官九郎が撮りたかった長瀬智也とは

筆者は、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』の時に宮藤にインタビューしたのだが、長瀬について「僕は彼を二枚目として演出するつもりはないんです。普通にカッコ良く撮るんだったら、上手にできる監督はたくさんいるだろうし。自分の映画に出てもらうからには、普段見られないところを見せたいと思っているので、どうしてもそういう演出になっちゃうんですよね」と語っていた。

『IWGP』では、宮藤は脚本のみの担当だが、当時から長瀬が演じるキャラクターを二枚目には描いておらず、彼が普段見せない部分を引き出し、視聴者を惹き付けたように思う。長瀬は、宮藤の脚本ドラマ『俺の家の話』に出演したのを最後に、芸能界から遠ざかったが、相変わらず彼のファンは多く、復帰を待ち望む声も耐えない。

そんな長瀬の魅力がたっぷりと詰まっている『IWGP』は、今は芸能界にいない彼の姿をたくさん見ることができるし、長瀬とクドカン作品との相性の良さを感じられるからこそ、老若男女問わず、夢中になれるドラマなのだろう。

現在、主役級に出世した俳優たちが豪華共演

undefined
(C)SANKEI

さらに、『IWGP』には、『ラスト サムライ』で世界的な俳優として有名になる前の渡辺謙をはじめ、現在、人気大物俳優になっている主演級のキャストが多数出演しているのも、何度でも観られる理由の1つかもしれない。阿部サダヲ、妻夫木聡、高橋一生、佐藤隆太、窪塚洋介、山下智久らの若い頃の演技を堪能できるのも見どころだ。

豪華キャストたちがクドカンの手のひらで遊んでいるような、面白すぎる見どころ満載の『IWGP』。「何度でも観れる」「今でも面白い」本作は、20年以上経っても決して色褪せることがない傑作ドラマだ。



ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP