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『虎に翼』の絶賛っぷりが影響?「いまいちハマれない…」NHK『おむすび』一週目を終えて

  • 2024.10.4

平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が栄養士になるまで、そして栄養士になってからの人との繋がりをハートフルに描く連続テレビ小説『おむすび』が9月30日より放送スタート。第一週を終えた段階でのSNSでは、「結を応援したくなる!」「懐かしい!」などの言葉が届く一方で、「虎に翼を引きずっていて、いまいちハマれない…」といった厳しい意見もあり、評価が真っ二つに割れている。

“野菜”と“平成ギャル”のシンクロニシティ

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『おむすび』第1週(C)NHK

「美味しいものを食べると、悲しいことを少しは忘れられる」。本編で発される結のセリフが、きっとこの作品の根底を流れるテーマである。食べ物は人の心を救う。美味しいものは、人と人とを繋ぐ。平成元年生まれの結は、自然のどかな福岡の町で、農業を営むあたたかな家族と友人たちに囲まれながら暮らしている。

そんな彼女の生活を脅かす要因となっているのが、姉・米田歩(仲里依紗)の存在。福岡で「伝説のギャル」として有名な彼女は、現在は東京に出ていて音沙汰がない。しかし、博多ギャル連合……通称・ハギャレンを復活させようと、歩を信奉するギャルたちが結に接触する。

ギャルという存在は、時代が平成に入ってからというもの、少しずつ影響力が弱まっていった。母数そのものが減っていったのもあるだろう。平成元年生まれの結が高校生になる頃には、もう「いまさらギャルなんて……」と言われてしまう時代遅れの象徴になっていたのだ。

彼女たちギャルを取り巻く、世間の風当たりは優しくない。不良と一緒くたにされ、ただ集まって話をしているだけで煙たがられてしまう。結の祖父・米田永吉(松平健)が、廃棄寸前の野菜を一袋100円で売りさばくシーンがあるが「このままだと、ただのクズになってしまう」といった趣旨の発言は、そのまま、世間から遠巻きにされているギャルたちと重なる。

『おむすび』を完走するための注目ポイント

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『おむすび』第1週(C)NHK

表情豊かな橋本環奈の演技に、まさに朝ドラヒロインにぴったり! と絶賛する声もあれば、直前まで放送されていた『虎に翼』の絶賛っぷりに影響を受け「学芸会みたい」と評する声も。『おむすび』を完走するための注目ポイントとして「結の姉・歩は物語にどう影響するか」「結はどうやってギャルになり、どうやって栄養士になるのか」の2点が挙げられるだろう。

歩の存在は写真でしか示されておらず、本人が登場するのは2週め以降になると思われる。結は、歩とは直接関係のない場所でギャルたちと出会い、彼女たちに興味を持つが、いつだって結の心にはコンプレックスのように歩の存在がついて離れない。おそらく結は一定期間ギャルとして生きていくはずで、それは歩の影響があってこそなのだ。結の人生に、歩はどれほど関わってくるのだろうか。

そして、結がギャルから栄養士を志すきっかけについても丁寧に見守りたいところだ。栄養失調で倒れてしまったギャルのために、祖母が握ってくれたおむすびを手渡すシーンがある。おそらく、すでにこの瞬間に結は、食べ物が人の心を救い、人と人を繋げる実感を得ていることだろう。

結が栄養士の道に進むきっかけとして、父・米田聖人(北村有起哉)の存在も覚えておきたい。彼は実家に戻って農業を手伝っているが、以前は神戸で理容師をしていた経験がある。現在も時折、行きつけのバーで出張カットをしている様子が描かれていることから、まだ彼のなかには理容師を続けたい夢がくすぶっているはずだ。

このことを結が知れば、やりたいこと、興味のあることから目を逸らさず、挑戦する大切さに気づくかもしれない。この辺りの心情をゆっくり細やかに描いてくれることで、より『おむすび』のテーマ性が際立つのではないだろうか。



NHK 連続テレビ小説『おむすび』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_