“禁断”をあえて大袈裟に描かない、 有村架純＆坂口健太郎出演ドラマに大きな反響「見る人によって解釈が変わる」「涙が止まらない」

『地面師たち』や『極悪女王』など、Netflixオリジナルドラマが話題を集めた2024年。そんな今年を締めくくるのは、心臓移植を題材にしたオリジナルラブストーリー『さよならのつづき』。脚本・岡田惠和、監督・黒崎博、主演・有村架純の2017年前期朝ドラの『ひよっこ』の組み合わせに期待が寄せられていたが、その声に違わず美しく繊細なラブストーリーになっている。

北海道とハワイを舞台に描かれる、心臓移植による記憶転移から始まる物語

『さよならのつづき』は、その名の通りさよならから始まる物語。勝ち気でサバサバした女性の菅原さえ子（有村架純）は、最愛の恋人・中町雄介（生田斗真）からプロポーズを受けた数分後、交通事故により恋人を失う。さえ子は、彼への思いを胸に北海道へ移住し、コーヒー製造会社で働いていた。そんな彼女は、雄介を彷彿とさせる男性・成瀬和正（坂口健太郎）に出会う。成瀬は雄介から心臓移植を受けていた。成瀬は、記憶のなかに現れる見知らぬ女性に惹かれ、そして出会ってしまったさえ子に惹かれている自分の想いを否定できない。成瀬の妻・ミキ（中村ゆり）は、コーヒーが飲めるようになったり、少し明るくなったりと変化した成瀬の姿に戸惑いがあった。

この物語の舞台は北海道。ニセコ駅や蘭越駅、小樽駅などの駅舎や見晴らしのよい駅のホーム、広大な土地を走る1車両編成の電車、海辺に隣接したカフェなど自然豊かな北海道の景色を思う存分堪能できる映像に仕上がっている。季節が巡ることで、変化する光の暖かさや風の温度まで感じられる映像の質感の良さは、正直民放ドラマでは味わえないレベルだ。もう一つの物語の舞台はハワイ。実は、作中でハワイとされている空港シーンやコーヒー農園のシーンはニュージーランドで撮影をしているそう。照りつける日差しの強さや、透明感のある真っ青な海。北海道と対比されることでより異国感があり、そこで出会うさえ子と雄介の特別感にも繋がっている。その地域が持つ独特の空気感をまるごと体感できるような映像になっている。

正直、映像を見るだけでも自然の豊かさに癒されてしまうドラマだが、この美しい映像のなかで抑えきれないエゴが滲む切ないラブストーリーが展開されるからこそ、『さよならのつづき』には特別な美しさがある。

『さよならのつづき』は、純愛かエゴか

この物語は、さえ子が雄介を失い、成瀬が雄介の心臓と記憶を引き継いだところから始まる。本来なら、ドナーの関係者と移植を受けた側であるレシピエントは接触できない。しかし、さえ子と雄介は出会ってしまう。

さえ子は、成瀬のなかにいる雄介に会いたくて、一緒にいたくて成瀬に会うことをやめられない。成瀬の心臓の音を聞き、雄介がそこにいることを感じずにいられないのだ。一方、ミキは成瀬が心臓移植により元気になったことは嬉しいのに、雄介の影響を受け変化した成瀬に戸惑い、その姿に喜べない。成瀬も、ミキを大切にしたいという気持ちはありつつも、自分のなかにあるさえ子への気持ちが否定できない。それが雄介の影響なのか、自分のなかにある感情なのかもわからない。

しかし、この物語は出会ってはいけない2人が出会い恋をしてしまう“禁断さ”を、大袈裟には描かない。自分のなかに生まれる相手への気持ちやそれによって生まれてしまう不合理さ、それらに折り合いをつけようとして生きている大人たちが描かれている。言ってしまえば、相手への愛とエゴがそこかしこに滲んでいる。相手に自分のエゴをぶつけ、思い通りにならなくて、そして相手への愛があるから自分の思いに蓋をする。そんなそれぞれの矢印が絡みあっていく。その様が美しくもあり、滑稽にも見える。人を愛し、そしてそれに悩む人間の姿は、こんなにもいじらしいのかと気付かされた。

SNSでは、「映像が綺麗」「終盤、涙が止まらない」「切なくて悲しい」「見る人によって解釈が変わる」など、映像と物語の美しさに感銘を受けている人も多い。2024年ラストに、北海道とハワイの広大な自然と相手を思う切実な想いがしみるラブストーリーを堪能してみては。

Netflixシリーズ「さよならのつづき」
［出演］
有村架純、坂口健太郎
中村ゆり、奥野瑛太、伊藤歩
斉藤由貴、古舘寛治、宮崎美子、イッセー尾形
生田斗真 ／ 三浦友和
［脚本］岡田惠和
［監督］黒崎博
［原案・企画・製作］Netflix
話数：全8話（一挙配信）

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ライター：古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X（旧Twitter）：@k_ar0202