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大竹しのぶ演じる“義母”に「そこまで言わなくても」最終回直前で賛否入り乱れ…月9『海のはじまり』

  • 2024.9.16

第10話の放送を終えた月9『海のはじまり』も、最終回まであと2話に迫っている。主人公・月岡夏(目黒蓮)の別れた恋人・百瀬弥生(有村架純)の言動に対する賛否や、義理の母・南雲朱音(大竹しのぶ)の「奪うようなものなんだから」発言に、SNS上では夏を擁護する声が目立つ。

なぜ夏はここまで責められるのか

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(C)SANKEI

大学時代の元恋人・南雲水季(古川琴音)が、知らせないまま産んでいた娘・海(泉谷星奈)を引き取り、二人で暮らしていくことを決意した夏。弥生と別れたあとの彼は、家族である月岡家の面々から弥生と別れたことを非難され(冗談混じりではあるが)、水季の元同僚・津野晴明(池松壮亮)からも行く先を懸念され、朱音からも辛辣な言葉を向けられてしまう。

とくに朱音が発した「意地悪言えば、奪うようなものなんだから」という言葉には、SNS上でも言及が多かった。元はと言えば、夏は“被害者”と称してもおかしくない立場である。一人残されてしまった娘を、責任持って引き取り育てようとする姿勢に、賞賛を向けてくれる人物はいない。「そこまで言わなくても」「夏がかわいそう」といった感想が目立つ。

朱音の言動を俯瞰してみると、確かに彼女は矛盾している。父親としての責任を果たせ、とはっきり夏に要求したわけではないものの、水季が残した娘・海の存在を認識することを希望し、親子として二人で暮らすことを遠回しに望み、誘導していたと言えなくもない。少なくとも、これまでの朱音の振る舞いを思い返してみると。

それが、いざ海を引き取って育てることを夏が決意すると、途端に寂しさが具体的な手触りをともなって去来したのだろう。娘を亡くし、孫までいなくなる。永遠に会えないわけではないけれど、老いた夫婦にとっては非情な変化なのだ。朱音自身も、これまで自ら示していた姿勢と相反する感情を前に、コントロールが効かなくなっているのかもしれない。

弥生の価値観に意見が真っ二つ?

SNS上で賛否が集まっているのは、朱音の言動に限らない。夏と別れたあとの弥生の様子にも、疑問を呈する声がある。

夏と別れ、海の母親にならない選択をした弥生は、その理由について「二人のことは好きだけど、二人といると、自分が嫌いになる」「3人でいたいって言ってくれてうれしいんだけど、うれしいのに、やっぱり私は月岡くんと二人でいたかった」とはっきり言っている。この言葉は、捉え方によっては「海がいなければ、夏と二人でいられた」と解釈されても不思議ではない。

そんな弥生は、夏と別れたあと海と会い、夏と離れること・海の母親にならないことの両方を自ら告げた。少し前まで「本当にママになったら嬉しい?」と海に確認していたにも関わらず、だ。意思の撤回が早すぎると、それはそのまま変わり身の速さに直結する。海は素直で明るい気質のため、比較的すんなりと受け入れているように見えるが、心の傷は表には見えないものだ。

弥生が海に新しく提示した関係性は「友達」だ。海にとっての、大人の友達。親でも教師でもない大人の友達には、同じクラスの“友達”には言えないことも相談できる。この新しい概念が、海にどんな影響を及ぼすのかは未知数だ。

SNS上では、弥生の発した「友達ってね、会いたいときに会って、頼りたいときに頼ればいいの」といった、友達についての価値観にも疑問の声が挙がっている。こちらも見方によっては、あまりにも自己中心的に映ってしまいかねない。半ば弥生は「自由」を象徴するキャラクターであるかのように、どこか軽やかささえ滲んでいるが、自分らしさを履き違えると、ただの利己的な人物になってしまう。

夏と別れたあとの弥生が、夏に報告しないまま月岡家に挨拶に訪れたことも、少々出過ぎているのでは? との声も。夫婦だったならまだしも、恋人同士の段階でここまで結びつきが強くなるものだろうか。

それほど月岡家と弥生の関係性が信頼に基づいたものであり、結婚まで秒読みだった事実を示唆しているのだろう。しかし、そうなるとますます夏と弥生にとって、水季や海の存在が宙に浮いてしまいかねない。

最終回目前の『海のはじまり』。せめて夏や海が幸せになってくれますように、と願う視聴者が多数派だろう。人はいかにして親になるのか、その軌跡を追ったこの物語は、どこに行き着くのだろうか。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_