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「スポットライトが当たらない」3代目山の神、陸上界を変える新たな挑戦【神野大地インタビュー】

  • 2024.8.19
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2015年の箱根駅伝5区区間賞で「3代目山の神」の称号を獲得した神野大地選手。青山学院大学卒業後、マラソンでの東京五輪、パリ五輪の出場を目指すも叶わず。2023年12月、新たに発足されたM&Aベストパートナーズ(以下、MABP)陸上部のプレイングマネージャー就任が発表されました。箱根駅伝快走から9年。神野選手の新たな挑戦について聞きました。

陸上界を盛り上げるために、新チームを発足

ーー2023年12月、MABP陸上部が発足し、神野さんはプレイングマネージャーに就任されました。陸上部立ち上げにいたった経緯を教えてください。

神野 MABP代表取締役副社長の松尾さんからX(旧Twitter)にDMをいただいたことがきっかけです。松尾さんも陸上競技の経験者で、大学時代には箱根駅伝に出場しています。自身を育ててくれた陸上界に恩返しをしたいとの思いがあり「神野さんとなら、一緒に面白いことができるのではないか」と連絡してくれました。

ーー松尾さんと意気投合して陸上部を創設することになったのでしょうか?

神野 松尾さんは「結果を出した人が報われる社会を作っていきたい。陸上界も、結果を出した選手がもっと報酬的にも恵まれる業界になって欲しい。」と言っていて。僕も同じような課題意識を持っていたので、ぜひ一緒に挑戦したいと思いました。陸上界全体を盛り上げるために、自分たちで新たに陸上部を立ち上げる決断をしました。

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YouTubeより

M&Aベストパートナーズ陸上部

応援されるチームをつくる

ーー陸上界への課題意識について詳しく聞かせてください。

神野 実業団とプロの両方を経験して感じたのは、実業団の駅伝日本一を決めるニューイヤー駅伝の注目度がいまひとつだなということ。盛り上がっていないわけではないのですが、もっと盛り上がるはずなんです。

 選手目線で見ると、元日のニューイヤー駅伝はものすごい戦いです。長距離界のトップランナーたちのぶつかり合いで新年一発目に日本一を決める。そういう大会だと思うんです。でも、選手にはそれほどスポットライトが当たらない。応援しているのは、出場企業の社員さんたちがほとんどです。

 多くのファンに応援されるわけでもなければ、活躍したら収入が大きく上がるわけでもない。選手たちからすると、ニューイヤー駅伝を頑張る理由がそれほどない、というのが現状なんです。「1年間競技をやらせてもらっているんだから、駅伝で企業の看板背負って走ってこい」と。そんな感じなんです。

ーー陸上界の課題に対して、MABP陸上部はどのようなチームをつくるのでしょうか?

神野 僕たちは、所属企業とその社員さんのために走ることは当然として、それ以外にもたくさんのファンの方に応援されるチームをつくりたいんです。

ファンが増えれば、陸上選手の価値は上がります。いろいろなお金が動くようになり、選手たちのやりたいことがもっとできるようになってくると思うんです。 

ーー「応援されるチーム」が一つのキーワードなのでしょうか。

神野 日々の厳しい練習をこなして結果を求めていくプロの陸上選手にとって、応援は競技を続ける上での大きなモチベーションです。選手によって個人差はあれど、応援や注目を浴びることは少なからずモチベーションの一つにはなっているはずです。なぜ、箱根駅伝を多くの学生ランナーが目指すかといったら、あれだけ注目度が高く、沿道の応援の数もすごいことが大きな理由だと思います。

僕自身、青山学院で箱根駅伝に出場していたころから、応援の力をめちゃくちゃ感じてきました。応援は「頑張る源」です。だからたくさんの方に応援していただきたいと思っています。

また、陸上界のレベルや選手の価値を上げるためにも、ファンの存在は不可欠です。陸上ファンがもっと増えれば、マラソン大会の優勝賞金が増えたり、スポンサーがたくさんついたりして、業界全体が盛り上がっていきます。結果的に、選手が報われる世界になると思います。

MABP陸上部は、ニューイヤー駅伝をさらに盛り上げる。そして陸上界を変えるということにチャレンジしていきます。

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写真:SANKEI

2027年ニューイヤー駅伝出場を目指す

ーー2023年12月にMABP陸上部が発足して以来、神野さんはプレイングマネージャーとしてどんな活動をしているのでしょうか?

神野 メインはスカウト活動です。新しいチームなので、まずはみなさんに知ってもらわなければいけません。大学を訪問させていただき、陸上部の監督さんにチームの説明をしたり、選手と面談したりしました。箱根駅伝出場校はほぼ全て回らせていただきました。

ーー2025年4月に本格始動とのことですが、今後の目標は?

神野 2026年の予選を勝ち抜き、2027年元日のニューイヤー駅伝に出場することが目標です。とはいえ初年度から狙っていきたい気持ちはあるので、2025年の予選から本気で挑んでいきたいと思っています。

そのためにもまずは選手をそろえていきたいですね。駅伝に出場する選手は7人ですが、現状、所属選手は僕と堀尾謙介選手、鬼塚翔太選手の3人。今の大学4年生や他企業からの移籍選手、ケニア人選手も獲得する予定で、 初年度は9〜10人体制を想定しています


M&Aベストパートナーズ陸上部公式Xアカウント

取材・文
岡村幸治

1994年生まれ。スポーツ新聞社で野球記者として巨人や高校野球などを取材。2021年に独立し、アスリートや経営者などにインタビューを行っている。海外旅行が好きで、2023年には世界一周の旅に出た。