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「髙山なんかなあ、もったいないよ」岡田監督が語る、プロで活躍する“考え方”「その組み合わせを考えるのが監督の采配やろ」

  • 2024.5.2
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写真:SANKEI

昨季、阪神タイガースを率いてチームを38年ぶりの日本一へと導いた岡田彰布監督。就任2年目の今季も開幕からチームは好調。4月28日時点でセ・リーグ首位に立ち、球団初の「連覇」へ向けて最高のスタートを切っています。そんな“名将”は普段、ベンチで何を思うのか――その胸の内を公開します!

【本記事は岡田彰布・著『普通にやるだけやんか オリを破った虎』(Gakken)より一部抜粋して掲載しています。】

■できることをやれ、できないことをするな

選手はそれぞれが、自分の特徴を出したらええんよ。おれはプロは短所を直すんじゃなくて、長所を伸ばせばええと思う。その組み合わせを考えるのが監督の采配やろ。

かつて、おれが阪神の二軍監督で、野村克也さんが一軍監督だったときよ。「短所を直さんと、二軍の選手は一軍の試合では使えない」と言われたんやけど、おれは納得できなかった。

打つ、走る、守る、バントする、遠くに飛ばせる、打球方向を狙って打てる。先発で長いイニングが投げられる、球が速い、変化球が得意、コントロールがいい、動揺しない。おれはそれぞれが得意技を磨いて、チームとして組み合わせれば強くなると考えてる。2023年の阪神はまさに、それで日本一になったと思うとるよ。

「できることを普通にやる」というおれの法則には、裏側に「できないことをしようとするな」という法則がある。打者は3割打てれば一流やのに、ときどきおるんよなあ。そのままで3割打てているのに、やり方を変えようとする選手がなあ。何しとるんやろと思うよ。4割打とうとしとるんか? 4割打った打者なんか、プロ野球の世界におらんやん。新人王獲ったのに、そのあとは結局阪神では戦力外になってしまった髙山なんかなあ、もったいないよ。

長所を出し切る。それでええんよ。自らの力量を、いい意味で自覚する。いらんことせんでええんや。普通の集合体が、チーム全体の強さにつながるんやから。

■「代打アレ」は、ダレ?

もともとおれは口数の多いほうではない。だから選手は「監督と直接話したことがない」と口をそろえるわな。2023年のオフにはバラエティ番組で、選手がみんなそんなこと言うて笑いを取ってた。

おれは昔から何も変えてないよ。前回の主力やった赤星は「若い選手には、岡田監督の通訳をしていた」とどっかで言うとったなあ。「優勝」を「アレ」と言い換える前から、おれは何でも「アレ」としか言わんかったもんなあ。

これも赤星が言うとった。「今日はお前、アレやから」と試合前に言われたら、アレの意味はスタメンではないぞ、ということだったとか……。そんなん言わんでも分かるやろ。前後の状況で判断せえよと、思うわなあ。

それが若い選手は慣れていないから理解できないようや。若い選手だけでなくおれが「代打アレ」と言ったらコーチが、違う選手に準備させたことがあるわ。「なんでお前がヘルメットかぶっとるんや。代打はお前と違うやろ」と怒ったこともあったなあ。

■唯一無二の平田ヘッドの存在

平田ヘッドコーチはおれの2つ下やから、64歳か。「本当に岡田監督には助けてもらった。前回とはまったく違う岡田監督になった。お互い年を取りましたから……。別人ですね。周りを見て、カリカリせずに、余裕を持って、わたしもうまく使ってもらいました」。平田ヘッドが、日本一になった直後にユーモアを交えて言っていたのを人づてに聞いた。

試合中はベンチに座ったおれの隣で、腕を組んで立っとるわ。なんや知らんけど、にこにこと笑ろうとる。それでええんよ。細かい作戦のことより、ベンチ全体の雰囲気を和ませる。そういう性格やから。

以前は中日戦でおれの代わりに退場したこともあるし、2023年もおれが審判と話しているのを見ながら時間計っていたらしい。長引くと退場になるからチェックしてたんやろ。

まあそれが平田ヘッドの役割やな。おれが審判団に強く詰め寄ろうとすると、すっと間に入る。選手だけでなく、すべての面でクッション役となる、それでええやん。


抜粋・編集
花田雪
1983年、神奈川県生まれ。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行い、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆。著書に『あのプロ野球選手の少年時代』(宝島社)『オリックス・バファローズはいかに強くなったのか』(日本文芸社)がある。

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