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「青春ドラマ?それともサスペンス?」『下剋上球児』南雲(鈴木亮平)の“秘密”が及ぼす影響

  • 2023.11.8

放送開始前は「弱い野球部が強くなっていく様子を見守る、熱い青春ドラマ」かと思っていたが、どうやら様子が違う。『MIU404』(2020)や『最愛』(2021)などのドラマを送り出してきた、固定ファンの多い新井順子プロデューサー×塚原あゆ子演出のコンビ。次に彼女たちが手がけているのは、2023年秋クールの日曜劇場『下剋上球児』だ。

鈴木亮平を主演に、脇を固めるのは黒木華、小日向文世、井川遥、そして弱小高校の球児たちを演じる若手役者の面々である。鈴木亮平が演じる高校教師・南雲の秘密が明らかになった途端に、このドラマは熱い青春ドラマから様相を変えた。

※以下ネタバレを含みます

球児たちの熱いドラマに混じるサスペンス要素

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©TBSスパークル/TBS 撮影:ENO

高校教師の南雲(鈴木亮平)は、同僚の山住(黒木華)からのしつこい勧誘に折れ、越山高校の弱小野球部の監督を務めることに。しかし、南雲の表情は終始暗いままで、挙げ句の果てに「夏まで」という期限まで切られる始末。南雲自身、甲子園で活躍した経験を買われての抜擢だが、何がそこまで彼の足を踏みとどまらせていたのか。

第二話で、南雲の秘密が明らかになる。単位が足りずに大学を卒業できなかった彼は、そのまま中退し、教員免許を取得しないまま高校教師になった。つまり、無免許で不正に高校教師を名乗っていたのだ。

身分を偽って仕事をしていた南雲と、部員が一人しかいない状況でメンバー集めから始めた越山高校の野球部。どちらも、まさに下剋上しか道はない状態といえるが、毛色はまったく違う。

生徒を“裏切った”南雲の進退は?

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©TBSスパークル/TBS 撮影:ENO

練習を重ね、少しずつ強くなっていく球児たちの姿を見守る傍ら、南雲の進退が気になって仕方がない。主人公に秘密を背負わせるのは、物語をドラマチックにするうえで効果的なやり方といえるだろう。しかし、その秘密の重さゆえに、すでについていけていない視聴者も多いのではないだろうか。

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©TBSスパークル/TBS 撮影:ENO

甲子園を目指す球児たちを応援すればいいのか、それとも、罪を犯した南雲がこの先どのように償うのかを見守ればいいのか。彼がふたたび教師として越山高校に戻ってこられる可能性は、限りなく低い。教師にとっての身分詐称は、物語上の設定だとしても、重すぎる。

南雲を信頼し、甲子園の予選出場まで走り抜けてきた球児たち。この先、彼らがこの事実を知り、受け入れていくまでの過程が描かれていくだろう。それまでに、このドラマを見守る私たちの態度も決めなければならない。

 



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_