数学の単元のひとつに「論理と証明」というものがあります。
数学って計算するものでしょ?というイメージがあるかもしれませんが、「AとBは等しい」というような定理や性質を説明する「証明」も数学のひとつです。
「証明」は論理立てて説明する必要があるため、日常生活での「議論する力」にもつながります。
数学を通して、論理的な思考力を身につけましょう。
問題
数学の証明をやっていると、論理的に正しく進んでいるように見えて、実は間違えていたということがよくあります。
下の証明の結論は「1=2」となっていますが、もちろんこれは間違いですね。
実はこの証明、正しいように見えて、ひとつだけ誤りがあります。誤りがあるため「1=2」という結論が出てしまったのです。
何行目が誤りであるか、理由もあわせて指摘してください。
〔1〕a=bという式を考える。
〔2〕a=bの両辺にaをかけると、a²=ab
〔3〕両辺からb²をひくと、a²ーb²=abーb²
〔4〕両辺を因数分解すると、(a+b)(a-b)=b(a-b)
〔5〕両辺を(a-b)で割ると、a+b=b
〔6〕a=bだったので、a+a=a、つまり2a=a
〔7〕両辺をaで割ると、2=1
「1=2」という結論が出てしまいました!
どこが誤りでしょうか。
証明の誤りは「〔5〕の式変形」です!
解説
今回の証明はa=bという式をスタート地点にして、等式の変形を行なっています。
イコールが成り立っている式に、ある数をたしたり、ひいたり、かけたりすることは問題ありません。しかし、注意が必要なのはわり算をするときです。
等式の両辺を同じ数で割っても、その等式は成り立っている、というのは正しいです。
(例 3x=12のとき、両辺を3で割るとx=4)
ただし「0で割ることはできない」という点に注意です!数学では、「0で割る」ということが定義されていません。
今回の証明では、5行目で次のような変形をしました。
(a+b)(a-b)=b(a-b)
この両辺を(a-b)で割ると、a+b=b
「a-bで割る」ということをしているのですが、元々aとbはa=bという関係です。
つまりa-b=0であり、「a-bで割る」というのは「0で割る」ということをしていることになります。
数学では定義のされていない「0で割る」という計算をしたために、「1=2」という誤った結果が導かれてしまったのです。
まとめ
一見すると正しいような証明も、しっかり考えるとその誤りに気がつくことができます。
数学では「計算をする」というだけではなく、「証明する・説明する」というのも大事なことのひとつです。
学生時代に「なぜ数学を勉強するのか?」と疑問に思った方も少なくないかもしれません。
しかし、「論理的に説明をする力」というのは、さまざまな場面で求められます。ぜひ数学を通して、論理的な思考力を養ってください!
文・編集(監修):SAJIMA
日本国内外の学校、学習塾で数学・理科の講師として幼児から高校生までを指導。現在はフリーランスとして独立し、オンラインを中心に授業を展開している。子供への学習指導だけでなく、大人向けの数学講座も開講し、算数・数学の楽しさを広く伝える活動を行っている。日本数学検定協会認定「数学インストラクター」。