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【第2回】ウガンダと日本を結ぶ仲本千津さんに聞く「先進国・開発途上国ではない、新しい日本とアフリカの関係」

  • 2018.8.29
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ウガンダと日本をビジネスでつなぐ、女性社長の仲本千津さん。アフリカで仕事というと、NGOと考えがちだが、彼女はウガンダ人と対等な関係値でいられるビジネスこそ、将来へつながる持続的な可能性があるものと考えている。いわゆる“当たり前・常識”がない世界から見た日本とは? アフリカと日本の新しい関係性とは?

いろんな国の人が集まれば、当たり前がなくなる。だからこそ、自分らしさ、自分のアイデンティティが大事!

――世界から、ウガンダから見た日本の印象を教えてください。

日本には枠というか、社会的な通念、常識といわれるものがあるのに対して、ウガンダには当たり前というものがない。これはロンドンなど他のコスモポリタンな都市でも感じることで、いろんな文化やバックグラウンドの人が集まれば、いわゆる常識とか、当たり前ってないんですよね。あったとしても、お互いに異なるものを受け入れようとする土壌があります。
それが、ウガンダや他の国から日本に帰ってくると大きく感じられますね。日本のように枠にとらわれた何か、いわゆる常識がないからこそ、自分は何者なのか、何をしたいのかのような、アイデンティティとか自分の考えを強く持っていることが大事なんだと思います。

日本だと、特に女性の間には社会的な「べき論」や、他者からの同調圧力みたいなものが根深くありますよね。
例えば、女性なんだから仕事をしていたとしても、家事や育児をきちんとこなさないといけないとか。そういった世間体というか、社会の一般的通念のようなものがありますよね。働く女性たちも、他の部分はとても自由で斬新的な発想をするのに、結婚や家事、育児などに関してはそこに縛られてしまうというか。うまく料理のできない自分にガックリきたり。息苦しさがありますよね。

もっと自由に自分の指標で生きていくということが、自然にあっていいと思いますね。

洋裁クラスの様子
出典:RICCI EVERYDAY

日本はミスを許さない文化、 “できて当然”。ウガンダは許す文化、だからこそ相手への期待値も低い

——日本とウガンダの違いって何か感じることはありますか?

大きな違いはミスに対しての受容力ですね。日本にはどことなく、“ミスは許されない”文化がありますよね。ミスに対する社会からの叱責がものすごく大きいと感じます。そして会社や組織全体の問題なのに、個人を攻撃したりとか、個人に責任をとらせることもあります。SNS上でも、“違う”、“異なる”ということに対しての拒絶感が激しいですし。
だからこそミスが起きないように、やる前からルールを決め、ルールがさらにルールを呼んで、自らの首をしめています。どんどんルールで縛っていく社会になって、がんじがらめ。結果、考えすぎて、動きが遅い、動けない、時間がかかるという悪循環に陥っています。

ウガンダ人女性と仲本さん
出典:RICCI EVERYDAY

一方ウガンダの場合は、ある意味あまり物事に対する期待値が高くないんです。まあ人間だし、ミスがあって当然くらいの感覚なんですよね。レストランで待っていても、平気で1時間、食事が運ばれてこないこともあります。でも誰も何も言わないのは、まあそういうものだよねと、元々の期待値が低いからなのかと。そして、仮にミスとか、予期していたことと違うことが起こったとしても、個人への責任の追及はあまりしないんです。起こってしまったことは仕方ないし、では次起こらないようにするにはどうすればよいか、このあとの打開策はどうするかなど、誰かを責めるのではなく、課題にフォーカスして議論が進んでいきます。
ミスを許す文化というか、とても建設的な意見が交換されるんですよね。

日本は期待値が高すぎる気がします。ウガンダで、生活している私からすると、日本のサービスレベルは、感動ものです。もともと期待値が低めだから、多少のミスも全く気になりません。そうやって生きる方が、気持ちも明るくなり、リラックスして生きられるんじゃないでしょうか。

RICCI EVERYDAYのバッグを持つウガンダの女性
出典:RICCI EVERYDAY

日本とウガンダと、あともう1つ、3つのベクトルを持つことで、客観的な視点をキープする

――仲本さんは、ウガンダと日本の往復だけではなく、他の国にも行くことが多いんですよね?何か感じることはありますか?

はい、私が大事にしているのは、一歩引いた客観的・俯瞰的な視点。様々な国に行くと、そういう視点を持つことができます。日本にずっといると、やはり日本的な考え方や行動を中心に物事を判断してしまいます。そして、ウガンダに戻ったときに、なんで違うんだろうなと、自然と日本とウガンダを比べてしまい、ウガンダに対し勝手に落胆してしまうこともあります。日本とウガンダだけの1極だと、互いに比べてしまうので、私はまた別の国、第3国に滞在して感じることを大切にしています。例えばイタリアに行ったときに、ここはなんだかヨーロッパの中のアフリカのようだなと感じたり。ヨーロッパという先入観から、勝手に日本のように素晴らしいサービスが提供されるものだと思ったりしますが、全然そんなことはなく。実は日本のサービスレベルが高すぎたんだと気付くことができたり。日本に偏り過ぎず、ウガンダに偏り過ぎず、バランスよく客観的に見ることができるんです。

いろんな地域(ウガンダ、日本以外の)に毎年足を運んでみて、インスピレーションを得たり、現地に暮らす人の話を聴いてものの考え方とかを吸収したりして、自分の視点や価値観をチューニングするようにしています。

RICCI EVERYDAYのバッグを持つウガンダの女性と、ウガンダの街並み
出典:RICCI EVERYDAY

“先進国”、“開発途上国”という考え方はもう古い。日本とは違う角度とスピードで発展するウガンダ

――仲本さんが肌で感じる、アフリカの今を教えてください。

今までは、日本や他の先進国から、知識や人、モノ、お金が流れるという、一方的な流れしかなかったのですが、私がウガンダに行って思ったのは、ウガンダからお届けできるものもたくさんあるということなんです。今先進国とお話ししたんですけど、先進国と開発途上国という二元論は、存在しないと思うんです。

例えば、ウガンダではUberをはじめ、シェアエコノミーの文化が広がっています。それに、決済方法がどんどんアップデートしています。銀行口座を持たず、携帯電話の番号が口座になって、携帯で送金したり、支払ったりできるんです。日本は様々な規制やしがらみがあって、なかなかそういうテクノロジーが浸透していかない部分があるのかもしれませんが、ウガンダやケニア、ルワンダなどの東アフリカの国々ではそういう規制があまりなく、法律も整備している途上の状況なので、そういう意味では、すごくイノベーションが起こりやすい地域だなと感じます。

そしてイノベーションによって、劇的に人の生活が変わっていくという気運があります。私たちが経てきた第一次産業、第二次産業、第三次産業のような経済発展の道筋を一気に超えて、発展していく様子を強く感じるんです。

もちろん、ある側面では日本の方が進んでいる部分も多い。でも、もはや先進国と開発途上国という二元論ではなくて、お互い対等に理解し合える、知見をシェアできる、そういう関係性を築ける段階にきているのではないかと期待します。私も自社ビジネスを通して、日本とウガンダの間に双方的なコミュニケーションが生み出される、その一端が担えるようになれたらいいなと思っています。

自分らしさについて語る仲本さん
出典:RICCI EVERYDAY

枠の中で頭で考えたことはやっぱりうまくいかない。自分の心に聞く、その声に素直にいるということを大切にする

――では最後に仲本さんが大切にされている自分らしさとはなんですか?

自分らしさって難しいですよね、でも大切にしている言葉があって、それは「Follow your heart」。

銀行で働いているときは、自分の本心を無視して生きていたというか、目の前の仕事に忙殺されていることを理由に、自分が本当に考えていることや自分の思いに、ふたをしていたんです。現実と心のアンバランスさで気持ちが落ち込むこともありました。そんな状況下では当然、仕事の成果も出ず…自分の本心をおさえて、枠にとらわれて頭で考えたこと、計算したことはやっぱりうまくいかないなと。むしろ自分の心に聞く、その声に素直にいるということを大切にしていくことが大事だなと今となっては思います。

私自身、安定した日本の銀行で働いているときよりも、アフリカでビジネスをしている今の方が、自分の心にまっすぐな状態。自分の心に正直に素直にしたがって、生きていると、こんなにもラクなんだというのに気づいたんです。そうすると120%の力も出るんですよね。好きなことだからこそとことんやる。そうすると結果的に成果も出てくるっていうことだと思うんです。

だから、私の自分らしさは「常に動いている、常にONの状態」ですかね。あまりオフの状態というのがなくて。今やっていることは本当に自分が一番好きなことで、半分趣味のようなものでもある。そして、ビジネスですが、ウガンダを知ってもらう、ウガンダの女性たちの生活を支えるなど、なんらかの社会的意義を持っているという、自分が人生に求めるものを全て兼ね備えたのが今の仕事なので。この仕事をやり続けて、動き続けている限りはすごく自分らしくいられるのかなと思います。

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仲本さんプロフィール

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Movie Director:Yohei Takahashi (f-me)
Edit:Natsuko Hashimoto(TRILL編集部)

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