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【第1回】日本人女性が一人、ウガンダでビジネスをするわけ?

  • 2018.8.22
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日本人女性がひとりで、アフリカのウガンダという国でビジネスをしているらしい!しかも、日本では見たことのないようなエキゾチックな柄のオシャレなバッグ!と、今話題を呼んでいるRICCI EVERYDAYの代表仲本千津さんにその原動力とハードな挑戦に挑んだわけを取材してきました!

ウガンダのシングルマザーとの出会いが「この社会を変えたい」と私に勇気を与えてくれた

——仲本さんはなぜアフリカ・ウガンダでビジネスを始めようと思ったのですか?

ウガンダと初めての出会いは2014年の6月。NGOの仕事でウガンダに駐在したのがきっかけです。
買い物に訪れたローカルマーケットで、大胆な原色使いとユニークな柄がプリントされた布たちを見つけたとき、その斬新なオシャレさにとても感動したんです。これは絶対日本の人たちに受け入れられる!これはビジネスチャンスになるんじゃないかと感じました。

そして、もう一つ大事な要素が、一人のウガンダ人女性に出会ったことですね。その人はシングルマザーで、4人の子供を抱えて生活していました。当時彼女は私の日本人の友人宅の掃除と洗濯をするだけが仕事でした。まともに稼げていなくて、子供たちを継続的に学校に行かせることができていなかったんです。そんな自分を本当に惨めに感じていて、子供たちに申し訳ない、子供たちには自分のようにはなって欲しくないととても辛そうでした。

ウガンダ人女性たちと生地の相談をする仲本さん
出典:RICCI EVERYDAY

ウガンダは、名門大学を出ていても就職率は約20%と、非常に厳しい環境なんです。まともな教育を受けられなかった女性が職を得ことは難しく、子供を育てながら生活していくためには、セックスワーカーになるという道を選ぶ人もいます。
やる気があって能力があってまっすぐな女性が多いのに、仕事につくことができない。そういった人たちが報われない社会が今あるならば、それを変えていきたいと強く思ったんです。

女性たちが誇りを持って安心して働ける場がないなら、じゃ、私が作ろうと思ったのがウガンダで起業したきっかけです。最初は私自身も不安で迷ったのですが、彼女たちの強い要望もあって、まずは小規模でもいいから始めよう、ダメならまた違うことを考えるのもあり!と思い切って、一歩を踏み出しました。

安定した会社員生活からNGOの世界に飛び込んだ仲本さん
出典:RICCI EVERYDAY

先延ばしにするのはやめよう!と安定した会社員生活からNGOの世界へ

——仲本さんはウガンダでお仕事をされる前は、都内の銀行にお勤めだったとか? 

そうなんです。アフリカの政治について研究していた大学院を卒業して、まずはビジネスの仕組みを学びたくて、都内の金融機関に就職しました、そこは“ミスは絶対許されない”“個性を出してはいけない”文化で最初は本当に当惑しました。そして、「資金が潤沢なところに、さらなる融資を持ちかけるのに、本当に資金が必要なところには融資を渋る」という姿勢に疑問を持つ日々が続きました。日々のハードな業務に追われて、ずっと思っていたいつかアフリカの開発課題に携わりたいという志や情熱を失いそうになったときに、3.11の大震災が起きたんです。そのとき、自分だっていつ死ぬか分からないということを強く感じ、やりたいことを先延ばしにするのはもうやめようと考えて、銀行を辞めました。そこからすぐNGOへ転職活動をし、運よくとあるNGOから内定をもらうことができたんです。

仲本さんと共に働くウガンダ人女性たち
出典:RICCI EVERYDAY

——アフリカでのNGO活動は、実際どうだったんですか?

いざNGOで働いてみると、NGOって「お金を持っている側」と「持っていない側」の間で、権力関係、上下関係みたいなものが生まれてきてしまうということに気づきました。
お金を持っている側が、どこで、どのようなプロジェクトをやるかなど、NGOの全てを決める裁量を持っていて、受け取る側はそれをただ待っているだけの状態。

NGOで働くうちに、NGOの限界を感じたというか、ビジネスだったら、対等な関係が築けるのではないかと思い始めました。
例えば、私が仕事を取ってきても、物を作ってくれる人がいなければ成り立たないし、その人たちは物を作っても売り先がなければ意味がない。つまり、ビジネスならお互いを必要とし合い、対等な関係性を築けていけると思い、起業をしたんです。

バッグをつくるウガンダ人女性
出典:RICCI EVERYDAY

民族紛争を解決できる可能性はビジネスにある。安定した仕事で人は変わる

——実際、アフリカでのビジネスを始めてみて、感じたことは?

実は私の大学院のときの研究テーマは、内戦が終わった後、どうやって平和を取り戻していくのかでした。
一人一人が自己肯定感だとか自尊心が満たされる仕事についている限りは、紛争になるような気運って生まれないんじゃないかと私は思っています。
紛争に駆り出される人たちって、安定した仕事がない、生活に困っている人が多く、誘われるままに、いっときのお金を目当てで戦闘に参加してしまうこともある。

でも、もしその人たちに仕事があれば、自分がこの仕事を失ってまでそういうことをやりたいかとか、自分がいなくなったら家族を誰が支えるんだとか、一瞬考える機会を提供できるかもしれない。考える隙を与えることってすごく大事だなと思っていて。
仕事があればその仕事を続け、定期収入が入り、家族に食べるものを買うことも子供たちも学校に行かせられる。自分も社会から必要とされていて、自己肯定感も保たれる。それを全部捨ててまで本当に戦闘に行かないといけないのかと、ちょっと躊躇する、考えられる時間があることで、そっち側には行かないという判断ができるかもしれない。脆弱な社会、紛争を経験した地域であるからこそ、仕事を作るというのはすごく大事で必要なこと。たとえ、どんなに小さな仕事でも、定期的にきちんとお金が入ってくる仕組みさえ生み出せれば、それは次の紛争の予防につながる可能性があるかもしれない。私も、微力ながらもその一端を担えればいいなと思っています。

人の成長をサポートする感覚が嬉しいと語る仲本さん
出典:RICCI EVERYDAY

——ウガンダのビジネスをやっているなかで、嬉しかったことを教えてください。

一番、嬉しかったのは、働いている人たちが安心して幸せに暮らしているんだなっていうのを実感できたときです。例えば、先ほどのシングルマザーの女性が、定期収入を得ることで、子供が継続的に学校に行けるようになり、政府からの奨学金をもらって大学に進めるかもしれないと自信を持って私に話してくれたときなど、人の成長を少しだけサポートできたような感覚で、とても嬉しかったですね。

最初はすごく悲壮感が漂っていて、自分がシングルマザーになったせいで子供たちを学校に行かせられないとか、貧しく厳しい生活を送るはめになっているとか、自分を責めていた彼女。でも、今自分の目の前にいるのはまるで別人。定期収入が入ることで、家族を支えているという自負心が生まれて、こんなにも自信に満ちあふれたステキな女性に変わるんだなと、目の前にしたときに、すごく嬉しくなりました。

——ビジネスを通じて伝えていきたいこと、やりたいことはなんですか?

そうですね。より多くの女性たちを雇用して、社会的に生き辛さを感じている人たちがより前向きに自信を持って生きられる、そういう仕組みを増やしていきたいなと思います。でも、それはウガンダだけに限らず、その周辺国もしかり。紛争を経験している、いろんな問題を抱えている国はたくさんあるので。これから、もっとそういったところにもアプローチしていきたいなと思っています。

そして、このビジネスを通して、カラフルでプレイフルなアフリカン・プリントの魅力を、日本だけじゃなく世界中のお客様に届けたいなと思います。
女性が気軽に持てるバッグというものを通して、ウガンダってどういう国なんだろうとか、このバッグを作ったウガンダの女性たちってどんな人たちなんだろうとか、遠いアフリカにも興味を少し持っていただける機会が増えれば嬉しいです。

ポップアップ情報 西武池袋本店8月22日(水)~9月4日(火)
仲本さんプロフィール

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Movie Director:Yohei Takahashi (f-me)
Edit:Natsuko Hashimoto(TRILL編集部)

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