恋の色【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第15話】

その出来事を冬馬から聞いとき、桃香は両手でガッツポーズをつくり、ピョンとジャンプした。

桃香は、残業や歌のバイトがないときは、フットサルの練習にできる限り付き合うようにした。幸い、会社はほとんど定時に終わる。歌の練習の時間が減るけれど、今は慎吾のために時間を使おうという気持ちになっていた。自分の夢を追うのも大事。でも、それと同じくらい夢を叶えてあげたい人、それが慎吾だ。

家で歌を歌っていても、ピアノを弾いていても、ときおりフっと慎吾のボールを追う姿が浮かぶ。愛の歌を歌う時は感情が入り込み、ひとり涙を流すこともあった。それでも慎吾のことを恋人として好きなのかどうなのか、はっきりわからなかった。付き合おうとかいう言葉はふたりの間には出てこない。ただ、一緒にいてその時を大事にしている関係。桃香は、親友の鮎子の弟だからやさしくしてあげたくなるのかな、と思ったりもした。

ボーカルレッスンの日だった。講師のカオル先生に会うと、心が華やぐ。いつもその日の気持ちを表す色を、洋服やアクセサリーの一部に取り入れるおしゃれな先生。

「今日は空色の気分。だから、ブルーのピアスとブレスレット」

と言って、つかみどころのない話題を提供してくれる。それがまた楽しい。

「空色の気分ってどんな感じですか」

女同士、話題はどんどん膨らむ。カオル先生のお洋服を見るのが楽しみだ。カオル先生がお手本で歌うとき、桃香は聞き惚れる。きれいなロングヘアをさらさら揺らしながら、メロディに気持ちを込める。桃香の憧れの女性でもあり、おねえさん的存在だ。桃香は発声練習を終えて、課題曲を歌う。

あなたのそばにいると

私は強くなれるから

悲しいことは 小さくちぎって

風に飛ばしましょう…

ピアノのエンディング音が止まるとカオル先生が立ち上がった。

「桃香ちゃん、すっごくよくなってきてる。歌い方変わってきてるよ。恋したかな?」

今日のカオル先生は、ワインレッドの長い丈のフレアスカートをはいている。

「炎のように燃え上がるオレンジ色の恋。胸の中でしんしんと湧き起こるワインレッドの恋。ピュアな水色の恋。恋も色をイメージすると、納得できる気がしない?」

カオル先生がスカートをつまんで、お姫様のようにターンした。

「カオル先生、今、好きな人がいるんですね?」

桃香が早口で尋ねる。カオル先生はやさしく微笑む。女神さまのように見えた。

(続く)

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(二松まゆみ)

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