魔術にかかったボール【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第14話】

2度目のフットサル練習日、慎吾はひとりでやってきた。

ひとりでサッカー関連の場所に足を向けるなど、引きこもっている頃は想像もしていなかった。

「今度からはひとりで行ってね」

という桃香の言葉にトンと押された気がしている。そうだ、気楽に戻ればいいのだと切り替えてみることにした。自分の脚のことは気になる。思い切り走るのは怖い。まずはチームの雰囲気に慣れるのがよいんだと…。慎吾はベンチで休憩している冬馬を見つけ駆け寄った。

「あの。このチームのマネージャーになりたいんですけど。」

冬馬は、オッと驚くような顔つきになり、すぐにニコっと笑った。

「もちろんマネージャーもして欲しいけど、練習の時って人数足りないから、パス出しとかやってくれないかな。軽く走るくらいはいいんだろ?」

冬馬はピッチへの復帰を促すような誘いをした。桃香は冬馬に、慎吾の過去をすべて話していた。殻に閉じこもってるから外に引き出してあげてね、と。

その時、誰かがキャッチミスしたボールが、慎吾めがけてすごい勢いで飛んで来た。咄嗟に身体を右にひねり、腰でいとも簡単に止めた。ボールが慎吾に猛威を止められ、ストンと足下に落ちてゆっくり回転している。

ボールが魔術にかかったようなシーンだった。慎吾は意のままにボールを従わせることができる。慎吾は、その力がいまだに身体のどこかに流れているのを感じ取った。冬馬は足下に転がり、ゆっくり回っているボールをじっと見つめた。一瞬の出来事を見逃さなかった。

「やれよ。慎吾!」

慎吾は冬馬の目をまっすぐ見て

「走る練習しますから、よろしくお願いします」と、いつもよりちょっとだけ力強い声で言った。

(続く)

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(二松まゆみ)

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