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若手 vs ビッグネーム。モスクワ・コレクションの今を追跡!

  • 2018.5.30
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ゴーシャに続け! 若手デザイナーたちの目覚しい活躍。

今回特筆すべきなのが、才能豊かな若手デザイナーの活躍だ。例えば、4回目のショーを行ったサンクトペテルブルク出身で、現在上海を拠点にするデザイナー、アーテム・シューモフ(ARTEM SHUMOV)もその1人。驚いたことに、ショーの始まりに日本語歌詞に懐かしいメロディのサウンドが流れ、顔に落書きのようなペイティングを施したモデルたちが登場した。

ユニフォームのような上質な生地のテーラリングには必ずツイストが効いていて、中にはバックに愛嬌のあるアニマルモチーフがあしらわれていたコートも。「上海の暮らしの中で日々感じるモダンな感覚と伝統的なアジアンカルチャーをミックスしました」とアーテム。時代の空気感に敏感で、スポーツとストリートの要素も混ぜられたコレクションは、期間中ひと際異彩を放っていた。

続いて、昨年3月MBFWRのショーデビューを果たした女性デザイナー、アナスタシア・ドクチャエヴァ(ANASTASIA DOKUCHAEVA)。ショーが始まる前、ゲストのシートにはフューチャリスティックなストラップバックルのメガネが置かれていた。ショーが幕開けすると同じメガネを着用したモデルたちが現れ、ゲストと一体化を図った演出だった。

豊富なカラーパレットに独特なグラフィック、たっぷりのフェザー、オーバーサイズのジャケットなど、カルチャーやジェンダー、そして社会の制約から解放されたような自由なクリエイションを披露。今流行中のロシア語のプリントも人々のハートを掴んで離さなかった。

モスクワにあるHSE(Higher School of Economics)アート&デザイン学校の生徒による合同ショー「H.A.R.D 004.」は、ユースカルチャーならではの反抗的なエネルギーが横溢。この学校自体、2013年に創立されたばかりで古い概念に囚われず、新たな解釈で才能を生み出そうとしているようだ。

ショーでは学生を含む一般人としてモデル起用し、リサイクル生地で作られたケープや左右不均衡な服を着せ、破壊的なクリエイションの中に美学と情熱を強く感じさせた。次にどんなものが登場するのか期待させるルックの連続で、学生とは思えないほどのハイクオリティな完成であった。

豪華絢爛。圧倒的存在感を見せつけたビッグネーム陣。

元スタイリストであり人権運動家の女性2人によるアトリエ B バイ ガラ B(ATELIER B BY GALA B)のコレクションは、フレンチがキーワード。砂糖菓子のような淡いパステルカラーを軸にPVC素材をあしらい、時折フェザーやラッフルといったリュクスな素材をたっぷりと装飾。外の寒気を吹き飛ばすようなドリーミーな異世界へとゲストを誘った。

さまざまな人種のモデルが起用され、70歳近い高齢者モデルも傘を持ってランウェイを闊歩。こんな服が街に溢れたら、きっと雨の日が楽しみになるに違いない。

ブランドネームに自身の名を冠するアレクサンダー・ロゴフ(AEXANDR ROGOV)は、ヴォロネジ出身のスタイリスト兼TVホストであり、国民の支持を集めている人気者。ロシアのセレブたちも大勢駆けつけ、ショー会場は満員。熱気が立ち込める中、グラマラスで大胆なカラーの服に身を包んだモデルたちが登場した。足もとはハイヒールで徹底し、今のユニセックスでストリートなムードとは逆を貫いた、女性を賛辞するコレクションだった。

サハ共和国出身のデザイナー、アレクサンドラ・コリャキナが2011年にスタートさせたザザ(ZA_ZA)は、前衛的でモダンなデザインを得意とするブランドだ。これまでミラノやロンドンを発表の場としてきた実力派は、今回ジェンダーレスなビジョンを提案した。

アンドロジナスのモデルたちが纏っている服も幅広く、「ダイバーシティ」という言葉がぴったり。ファーやメタリック、ベルベット、シルクなどあらゆる素材や技法が用いられ、終始目を楽しませていた。

最終日はアングラな会場での「FUTURUM MOSCOW」。

6日間のMBFWRの公式スケジュール最終日は、約20名のヤングデザイナーたちがコレクションを発表する「FUTURUM MOSCOW」が開催された。「Museum of fashion」と呼ばれる場所は、メイン会場とは真逆の雰囲気。アンダーグラウンドな倉庫のような空間には、10、20代の若者たちのエネルギーで溢れかえっていた。ショーでは前衛的なものからミニマルなものまで、今の空気感をそのままに体現するような独自のアイデンティティや美学を披露。もう一度ロシアのカルチャーシーンを面白くしたい、そんな若者の熱意が感じられる夜だった。

MBFWRの会長アレキサンダー・シュムスキーによると、公式スケジュールのブランドは約3,000以上の応募数の中から厳選しているのだそう。特にヤングデザイナーには積極的に場所やヘアメイクのサポートを提供している。しかし、ビジネス面は自己責任であるべきだと言う厳しくも真っ当なコメントも。「現在、ロシアには世界で成功しているビッグブランドは存在しておらず、小さな商業ブランドが存在していることがアドバンテージ。ロシアのファッションの強みはディテールと繊細な刺繍、そして芸術。さまざまなスタイルがあるが、そのような強いバックグラウンドがある事が、これからビッグブランドとなる上でキーになるだろう」

若手からビックネームまで、カルチャーシーンと密接なロシアのファッションシーン。今後、新たに世界へ羽ばたくデザイナーが現れるのではないかと期待しつづけたい。

参照元:VOGUE JAPAN

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