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あなたは大丈夫? スマホ中毒の『VOGUE』ライター、「デジタルデトックス」体験記。

  • 2018.5.17

Photo: juliatim/123RF
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問題を抱えていると自ら認めたい人はいないだろう。けれど問題がないと思えば思うほど、依存に対する警告が繰り返し私の意識を刺激していた。

飛行機に乗りスマホを機内モードにするときはイライラするし、逆に到着して電源を入れる時にはワクワクする。車や電車での移動中では、かつては頭を空っぽにして窓の外を眺めていたけれど、今では長時間スマホをいじりながら画面を次から次へと見て過ごすようになった。

そしてついに、夫からこんなことを言われるようになってしまった。

「本当にベッドでスマホを見なきゃだめなの?」

彼のこの問いに、私はいつもイライラしながら「そうよ」と答えていた。友達にメッセージを送信中だったり、メールの返信をしなければならなかったり、インスタグラムで写真を追いかけて夢中になっていたのだ。

スマホを見る時間は、私にとってワインの最初の一口のような心地よい時間だった。何も考えなくていい、気楽なほろ酔い気分。けれど、画面を見つめる時間が長くなればなるほど、私の感覚は鈍くなり、病的なほどスマホに溺れ、ドーパミンが最高潮に出ている時でも自己嫌悪の刃が忍び寄った。画面を消し、スマホをベッドに放り投げる。でも2分後にはまたそれを手に取る。拒絶してもどうにもならなかった......。デジタルデトックスが必要だった。

ソーシャルメディアをよく使う人ほど精神疾患を患いやすい!?

私はまず、カリフォルニア州立大学心理学部名誉教授元学部長で、35年にわたりテクノロジーの影響について研究してきたラリー・ローゼン博士に連絡を取ってみた。

博士は私が長い間恐れていたことはその通りだと言った。彼のある研究によれば、ソーシャルメディアをよく使う人ほど精神疾患の兆候を示す傾向が高かったという。

イギリスでは、今や約半数の家庭が食事の時間をスマホに邪魔され、スマホが手放せない大学生には、不安や抑うつ状態が高い確率で見られた。恐ろしい統計を突き付けられるたびに、依存を治そうという私の決心はより固いものになっていった。

通知の赤アイコンもメール更新のじれったい時間もすべて戦略。

次に、アドバイスを求めてショーナ・ヴァーチューに電話をかけた。彼女は、元体操選手のパーソナル・トレーナーで、いつもやる気に満ち溢れている。25万人を超えるインスタグラムのフォロワーを持つ彼女だが、オンラインコミュニティの人々に向けて、オフラインで過ごす時間をもっと持って、と定期的に投稿している(その矛盾については彼女自身も指摘している)。

彼女は、グーグルの元プロダクト・フィロソファー(製品哲学担当者)であるトリスタン・ハリスが執筆した文章を紹介してくれた。そこには、ハイテク企業がユーザーを中毒的行動に陥れるために周到に張り巡らせた戦略について書かれていた。

ハリスは、スマホをスロットマシンに例えながら、私たちを虜にし、心理的依存を引き起こす戦略を明かした。赤く光るFacebookの通知から画面を下向きにドラッグしてメールを更新するときのじれったい気持ちまで ーー そのすべてが企業の戦略なのだ。

スマホ依存脱却法は「日記をつけること」。

私の不健全な依存状態を断ち切るためにヴァーチューが勧めてくれたのが日記だった。日記をつけることは、デトックスを通じて自分を意識するための簡単な方法だそうだ。

「そうやって注意深く日記に記録することで、スマホによって気を紛らわしている自分を認識することができるの」と彼女は説明してくれた。

次に、あらかじめいろいろな活動をスケジュールに入れておくとか、スマホを使わない時間に達成すべき簡単な目標を設定しておくなど、デトックスを可能にする実践的なステップを実行する。

「まず、人生で実現したいすべての目標を考えてみる。それから、元カレの新しい恋人の犬についての情報をチェックしたりして無駄に過ごした時間が合計どれくらいになるか考えてみて。前述の目標のうち、スマホに費やしていた時間で実現できたことがどれくらいあるかって考えると、なんだか悲しくなるでしょ」と、ヴァーチューは明るく指摘した。

「人生をスマホに乗っ取らせず、もう一度人生を取り戻して」

私のような依存者のためのデジタルデトックス用アプリブロッカーもあるが、私はスマホとパソコンの電源を切り、週末中それらを引き出しにしまい込むという、いささか乱暴な手段で自分を禁断状態に置くやり方をとることにした。

そして、ヴァーチューのアドバイスに従い、日記に予定を入れた。金曜日にはディナー、土曜日には映画。日曜日はまるまる空けておいた。自分の決意を試すため、空白の時間もあえて取った。

「人生をスマホに乗っ取らせず、もう一度人生を取り戻して」と、ヴァーチューはアドバイスしてくれた。私は犬を連れて散歩をしたり、ほこりをかぶった雑誌の山を読み終えたり、難易度の低い目標をいくつか追加し、その実行を誓った。

でも実際、金曜日の夕暮れ時には不安が漂った。デトックスは先延ばしにした方がいいのでは……。気が付くと、私は仕事のメールが受信ボックスに流れ込むのを想像していた。でも、私は自分が言い訳を探していることを知っていた。ノートに自分について気付いたことを2、3個書きなぐり、引き出しを開け、そこにデバイスを放り込んだ。

そして数秒後、もう一度ノートに自分の気持ちを書き込んだ。「いま何時かなと思う。あ、スマホが無いんだと気づく。時間を知る必要はそんなにないと自分に言い聞かせる。2分後にまた何時かなと思っている」

スマホなし生活で直面する最初のハードル。

スマホのない状態が突きつける最初のハードルがこちらだ。例えば、映画鑑賞を計画したけど、映画館がどこかわからない。私はニヤニヤしている友達のスマホを指して、「お願い、映画館を探して」と頼み込んだ。家までの道順を教えてくれるグーグルマップなしに知らない街を歩いて迷子になるのはいただけないと思い、長時間の散歩はやめておこうという考えが頭をよぎった。でも、やっぱり道に迷うことにした。

日曜日の午後の退屈な時間。雑誌を読んだり犬と戯れたり、果てしないストレッチでも時間がつぶれず、私はイライラと床を掃除しながら、オンラインで地元のヨガスタジオのスケジュールをチェックして予定を立てられたらいいのに、と思った。オンデマンドで画面を呼び出してそこに逃避できないと、時間が経つのはこんなにも遅いのか、ということにショックを受けた。

だが一方で、シンプルな生活の良さも感じた。土曜の朝目覚めたとき、私はまどろみの中で気持ちよく横たわっているだけでいいのだ。午前中に小説を1冊読み終え、そして寝室をととのえる。「静かで生産的」と日記に書き込み、自分がその時間をどれほど満喫したかに気付いて驚いた。映画『ファントム・スレッド』を観て、オートクチュールと男女の依存関係に退屈して2時間を過ごしたが、その時間スマホを探してハンドバッグを覗き込まずに座っていられたことに満足した。

読み終わった雑誌の山に元気づけられ、私は長期的目標を宣言することにした。「これからはベッドにスマホを持ち込まない!」と。その数日前、私が電話でアドバイスを求めた、ヨガ教師であり「ホワイト・ライト・ヨガ・リトリーツ」の設立者ステフィ・ホワイトがこう言っていたのだ。「私は1日の始まりの1時間をパワーアワーと呼んでいるの。この最初の時間に何を取り込むかについて、本当に注意する必要があるわ」

日曜日の夜、デトックス終了。結果は?

日曜日の夜で私のデトックスは終わり、私はスマホの電源を入れてじっくり見た。夫はそれを「2時間の見放題」と表現した。週末に届いていたメールと魅力的な赤い通知アイコンなど、追いつかなければならない情報がたくさんあった。でも、私は前ほど興味を惹かれなかった。おそらく、ハリスが言うところの「何か大切なことを見逃しているのではないかという恐怖 (FOMSI) 」に依存していた状態が、自分は何も見逃していないと知ることで緩和されたのだろう。

1週間経った今も寝室はスマホのないゾーンであり続けている。ローゼン博士は「90分ごとに10~15分の休みを取り、あなたの脳を鎮め、リセットすることをおすすめします」とアドバイスし、運動や音楽、瞑想などを奨励している。

このアドバイスを取り入れ、私は散歩に出るときはスマホを家に置いていくことにした。次の休みには再びスマホを引き出しにしまうと宣言している。回復への道のりは長いが、最初の一歩は踏み出した。
参照元:VOGUE JAPAN

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