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【GLAMなオトコ】Vol.15「ライフ・イズ・ビューティフル」。ファッションも人生も謳歌するデザイナー丸山敬太の広がりゆく世界

  • 2018.5.14
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来年ブランドデビュー25周年を迎えるファッションブランド「KEITA MARUYAMA」の丸山敬太さん。一着の服にさまざまな要素をミックスさせ、ポジティブなエネルギーを吹き込む彼のデザインにわくわくと心を躍らせたり、パワーをもらってきた人は大勢いることでしょう。

そんな丸山さんの過去から現在に至るまでの世界が体感できる「KEITA MARUYAMA」のポップアップイベント「LIFE is BEAUTIFUL」が、5月14日(月)から22日(火)まで東京・伊勢丹新宿店で開催されます。

2016年には20年間アトリエ兼ショップとして多くの人たちを魅了してきた「KEITA MARUYAMA」の青山本店を、「丸山邸 MAISON de MARUYAMA」として全面リニューアルオープン。まるで丸山敬太の脳内世界に入り込んだようなショップはいかにして誕生したのか? 流行が波のように押し寄せては引いていくファッション界において第一線で走り続ける丸山敬太さんの、今について語ってもらいました。

Q.最初に5月14日から開催される伊勢丹新宿店のポップアップイベントについてお聞かせください。

インドのテキスタイルを使ったパッチワークシリーズなど、2018年春夏コレクションの『LIFE is BEAUTIFUL』のアイテムを中心に、アーカイブのプリント布を使ったスカートやチャイナドレスなど、『KEITA MARUYAMA』の世界を表現する服が並びます。それから丸山邸のコンセプトをそのまま持っていこうと思っているので、陶芸家の増田光さんの作品を始め、ファッションだけでなく雑貨や小物など、そこにまつわる生活を彩るものたちが並ぶような、そんな楽しいポップアップができればなと思っています。

Q.丸山さんはコレクションを生み出す際、キーワードを並べてその言葉から閃くそうですが、どうやってその言葉たちをキャッチするのでしょうか?

キャッチというよりは、自分の中にあるものから抽出するという感じです。内面に耳を澄ませると言えばカッコよく聞こえますが、20年以上やっているので気になる言葉集めはルーティーンになってしまっているんです。そうやって拾った言葉たちを集めてみると、『今の自分はこういう気分なんだ』『こういうことが気になっているんだ』というのがよく分かる。それをキーワードとして並べていくうちに、どういうシチュエーションでどういう服を作りたいのかが見えてきて、全体の地図のような役割となるんです。僕は小説や映画の脚本などを書いたことはありませんが、おそらく映画でいうプロット的なものだと思うんです。

Q.そこから脚色をする?

そうですね。ディテールを掘り下げていき、そういうことだったらあの映画を観たらいいのかもしれないとか。ただそれは基本的なパターンであり、例えば音楽1つがガツンと響いてきて、その音楽から物語を紡いでいくということもあります。それはその時々で違いますが、基本は言葉からという感じです。僕はいつ、どこで、誰が、どんな人たちとどんな気分でいるのかというストーリーがないと洋服のデザインがスタートできないので、それを作るための自分なりの方法だと認識しています。

Q.丸山さんのデザインは見るだけでも気分がアガりますし、インスタ映えもする。今のムードをたっぷりと含んでいますが、過去にはシンプルでミニマルを求められる時代というもあったと思います。変遷する時代の中で、「今キテるんじゃない?」というような感覚は分かるものですか?

『今おいしいな』と思うときもあれば、『今はあまりおいしくないな』と思うときもある。それは感じますね。

Q.そういときにおいしい方へと歩み寄るデザイナーやブランドはたくさん存在する。もちろんビジネスの問題なども絡んでの選択だったりもすると思うのですが、丸山さんは常に自分のデザインに正直です。それを貫く強さはどう保っているのでしょうか?

そんなに強くもないんですよ。過去にはふらふらと流行と言われるものに寄っていったことは何度もありますから。でも結局そういうものって売れないんです。お客様はすごく正直ですから。変な話、僕自身すごくミニマルなTシャツがカッコイイという時代になったときに、『KEITA MARUYAMA』では買いませんよ。『アレキサンダー・ワン』で買おうかなとか、今だったら『バレンシアガ』で買おうかな、とかそういう風に思うわけです。僕は作り手ではありますが、等しく消費者でもあるので、ファッションが好きな一人の消費者として考えたときに、『あっちのお店で買いたいでしょう?』という心理がとてもよく分かる。もし『KEITA MARUYAMA』がトレンドを求めやすいプライスで紹介するブランドであれば別ですが、それなりの物づくりをしている以上、トレンドに振り回されるのはナンセンスだと思うんです。これだったら『KEITA MARUYAMA』で買いたいと思ってもらえるものを作りたいなと常に思っているんです。

Q.2016年にこの青山の本店を「KEITA MARUYAMA」から「丸山邸 MAISON de MARUYAMA」へとリニューアルされましたが、そのきっかけは?

『KEITA MARUYAMA』というブランドは僕が作り出したものであり、僕が作っているもののかなり大きな位置を占めてはいますけど、すべてではない。丸山敬太と『KEITA MARUYAMA』はイコールでつながっているようで、実はそうではないんです。それを考えていったときに、『KEITA MARUYAMA』だけでの店ではなく、丸山敬太としてさまざまな表現ができる場所が欲しいなと思ったのがきっかけです。そうすることで『KEITA MARUYAMA』ではやれなかったこと、例えば他デザイナー作品のセレクトだったり、コラボレートだったり、あるいはギャラリースペースのような使い方をしたり、丸山敬太自身のコンテンツみたいなものを見せることで、なぜ『KEITA MARUYAMA』がそこにあるのかがより明白になるんじゃないかと。そういうお店にしたいと思い、丸山邸と名づけました。

Q.自分の商品以外のものを買い付ける際、「これだ!」と丸山さんの心を動かすものの特徴は?

古いものに関しては縁でしかないと思うんですけど、新しいものに関してはコレクションと一緒で、『本来だったらこういうものが好きなのに、なぜ今これに惹かれるんだろう?』というところに意味があるんだなと思っています。あとは作り手の思いが強いものに惹かれますね。僕は買い物という行為、とくにそこにしかないものの中から何かを探し出すことが本当に大好きなので、そうなると買わずにいられなくなるんです。

Q.なにかをコレクトしたり、ものに執着したりするのですか?

収集癖はないんですけど、所有癖はあるみたいです。ただ丸山邸を始めてからは気持ちを改めて買い物をしています(笑)。というのも、たとえば海外で器を買った場合、量産しているものだったら自分とお店の両方の分を買う。でもアンティークのような点数が限定されているものの場合、10点買ったとしたらその中の1番と2番は自分のものにして、あとはお店に出すという風に考えていたんです。でも今はその気持ちを改め、自分の中の順位が高いものからお店に出すようにしています。『売れなきゃいいなぁ』なんて思いながら(笑)。僕は骨董的な価値などにはまったく興味がないので、ただただ自分が本当に好きなものは大切にしてくれる人のもとへ旅立っていってくれたらいいなという思いだけなんです。

Q.来年ブランドは25周年を迎えますが、2018年には新会社、2016年にはショップのリニューアルと、色々と変化もあったと思いますが、その変化は自然の流れのような感覚なのでしょうか?

僕の中ではそんなに変化とはとらえていないんです。基本的にブランドはずっと継続をしていますし、毎シーズン新しい洋服を作るということはなんら変わらないので。もちろん物理的な変化は色々とありますけど、メンタルな部分はなにも変わっていない。ブランドのスタートが旅の始まりだとしたら、今はまだまだ旅の途中といったイメージで、その間に起きていることは、旅の終わりであるゴール地点に辿りつくまでに、色々と道をそれたりしていることのひとつにしかすぎないんです。

Q最終的に丸山さんが目指す理想のゴールは?

それがないんですよ。なんとなくのイメージはあるんですけど、それがクリアに見えているわけではない。ただ最近特に思うのは、お客様が大事に保管をしている昔の『KEITA MARUYAMA』の服を見せてくださったり、母親から譲り受けた服をお嬢様が着てくださっていたり。若い子がメルカリで落としているのを含め、自分がやってきたことが人の生活や思い出や記憶の中に存在するんだなというのが実感できるようになって来た。これはずっと続けて来たご褒美かなと思うので、このままずっと続いたらいいなとは思いますね。

Q.最後に丸山さんにとってGLAM[幸せだなと感じる]瞬間を教えてください。

人生において幸せな瞬間ってたくさんありますけど、最近思うのは愛があふれている瞬間ですね。言葉にすると気持ち悪いかもしれないですけど、愛情深いシーンだったり、ちょっとした優しさだったり、そこに愛が感じられるってすごく幸せだと思うんです。最近旅行から帰って来たばかりなのですが、旅先で物作りに携わる人たちと会って強く思ったのは、好きなことを仕事にできるのは当然のことではなく、本当に幸せなことであり、それを幸せだと感じられることがなによりも幸せなのだと。もちろん僕も人間ですから焦りや、妬み、嫉みやひがみも持ち合わせています。それでも、自分が置かれている場所に感謝をできる。そういう気持ちになれることが幸せだなと思うんです。

【プロフィール】
丸山敬太
/東京生まれ。1994年に「KEITA MARUYAMA TOKYO PARIS」でコレクションデビューを、1998年にはパリコレクションデビューを飾る。2009年からウエディングドレスライン「Wedding Dress KEITA MARUYAMA」をスタートし2012年には上質なクリエイションにこだわった新ブランド「KEITA MARUYAMA」を発表。ミュージシャン、俳優、舞台の衣装製作をはじめ、JALの客室、空港部門の制服のデザインを手掛けるなど幅広い分野で活動中。

【イベント情報】
ポップアップイベント「LIFE is BEAUTIFUL」

期間:2018年5月14日(月)~22日(火)
場所:伊勢丹新宿店 本館4階=センターパーク/ザ・ステージ#4
※5月19日(土)14:00~17:00 丸山敬太さん来場予定
公式サイト

Photographer/ Masakazu Sugino Writer/ Rieko Shibazaki

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