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「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」を紐解く5つのキーワード。【海外ドラマ完全ガイド/ネタバレ注意な裏話】

  • 2018.5.2

Photo: Everett Collection/AFLO
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1. キャッチコピーは「屈しない、これ以上」。

ここ最近の海外ドラマは、キャラクターに人種の偏りがなくなり、LGBTQのキャラクターも多く登場し、まさにボーダーレスになった。訴えかけるメッセージは、「皆違っていて良い」という個を重視するもの。私たちは唯一無二の貴重な存在なのだと謳う作品だ。特に、#MeTooの活動が広まった昨年以降は、「女性の強さ」を表現するものも多い。「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」は、それを代表する作品といえるだろう。

女性が虐げられ、すべての権利を奪われ、出産マシーンとして扱われる恐ろしい世界が描かれるが、このドラマは女性への性差別や女性虐待を訴えたものではない。「絶対に屈しない」という、シンプルなキャッチコピーとともに、女性の逞しさや強さを描くドラマだ。

2. 1985年出版のベストセラー小説「侍女の物語」を忠実に再現。

原作は、1985年に出版されたマーガレット・アトウッドによるベストセラー小説「侍女の物語」。化学物質や放射能により、子どもの出生率がほぼゼロになった世界が舞台だ。アメリカは、テロリストに襲撃された結果、原理主義者の支配下に置かれ、国名も宗教主義国家「ギレアド共和国」に。

出産可能な女性は政府にとらえられ、家族も財産も名前もいかなる権利も奪われ、支配階級の元で侍女として仕え、彼らの子孫を残すために、月に一度、排卵日前に儀式と称した性交渉が行われる。逆らう者は、片目を摘出されたり、腕を切断といった厳罰が下される。

実はこの作品、1990年にドイツの監督によって映画化されている。しかし評価はイマイチ。というのも、映画は宗教家を含む倫理委員会によって放送の可否をチェックされるため規制が厳しい。暴力はもちろん、宗教差別的な内容は、ある一定基準で却下されるため、原作の内容をリアルに描写することができなかったのだ。

それからというもの、この衝撃作の映像化はほぼ不可能と言われてきた。2017年にネット配信でのドラマ化が発表された際も、「どうせ今回もぬるいんでしょ…」と、批評家や小説のファンからは期待薄だったとか。しかし、エピソード1の配信開始後、その評価は一転。あまりにリアルな描写が大反響を巻き起こした。倫理委員会ではなく、企業が配信の基準を決めるネット動画配信サービスゆえ、映画やテレビ放送より規制がゆるく、それにより小説「侍女の物語」を忠実に再現したドラマが完成したのだ。

3. 主演は「クイーン・オブ・ピーク TV」、エリザベス・モス。

主人公の侍女、オブフレッドを演じるのは、ハリウッドで「クイーン・オブ・ピークTV」のニックネームで呼ばれる実力派女優、エリザベス・モス。年間500本以上のドラマの台本が作られるTVドラマ市場のバブル期で、ひっきりなしに出演オファーが来る、まさにクイーンだ。

エリザベス・モスといえば、「ザ・ホワイトハウス」での大統領の三女役や、1960年代のニューヨークの広告代理店を描いた「マッドメン」での女性コピーライター、マギー役が記憶に新しい。名脇役として名を馳せていたところ、「トップ・オブ・レイク」でつらい過去を抱える主人公の孤独な女性刑事を演じ、そこでの演技が高く評価され、一気に主演女優へと駆け上がった。

少しドラマ出演を休もうと思っていた矢先に舞い込んだ「ハンドメイズ・テイル」のオブフレッド役。台本を読み、二つ返事でイエス!と申し出たという。

4. 5人中4人が女性監督。女性迫害はひとつの例え。

オブフレッドの本名は ジューン・オズボーン。フレッドという支配階級の侍女であるため、「オブフレッド=フレッドのもの」という名前を付けられている。彼と彼の妻のために毎日を過ごし、自宅前には銃を構えた護衛が常駐する異様な世界だ。他の支配階級の家でもまた、別の侍女たちがオブフレッドと同じ生活を送っている。街には反乱を起こした者の死体が、見せしめのために吊るされている。

侍女たちは全員同じ赤い服と白いつば付き帽を纏い、そこに個性は存在しない。もちろんノーメイク。彼女たちは性の対象ではないため、そういう対象として見た男性もすぐさま処刑される。侍女が色目を使うことも禁止。自慰行為をしたり、同性愛が発覚すれば、女性器を切除される。

女性にとって、まさに生き地獄といえる世界を嫌悪感なく巧みに演出しているのは、5人中4人が女性監督ということも大きいだろう。女性が虐げられるのはひとつの例え。国民の権利が奪われ、自由に行動できない世界は、今もどこかに存在しているということを伝えているに他ならない。また、本作が特にアメリカでウケたのは、トランプ政権に対して国民が感じている危機感が、このドラマを見て感じる恐怖に似ているからかもしれない。

5. 悲劇ではなく、立ち向かう勇気を伝えるドラマ。

だが、このドラマはけして悲劇ではない。悲惨な状況下で耐え忍び、最後まで希望を捨てない強い女性たちを描いたドラマだ。どんな環境に置かれても、あきらめずに未来を掴もうと私たちに訴えかける。現代は、物質的に豊かで便利になる反面、環境面や経済面、国際面では、いつ何が起こってもおかしくない世界にあるといえる。「ハンドメイズ・テイル」の侍女たちの、信念の強さと自分を奮い立たせて戦う姿が勇気を与えてくれるのだ。

シーズン1のラストでは、オブフレッドの妊娠が発覚。そして、どこかへ輸送されていく。彼女は無事出産するのか? 彼女を待ち受ける運命は? アメリカでは待望のシーズン2が、4月25日配信スタート。日本での配信スケジュールはまだ未定だが、今から楽しみだ。

参照元:VOGUE JAPAN

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