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【医師監修】子どもの近視進行には“太陽”が関係していた!「あなたの子どもの目大丈夫?2」

  • 2018.4.25
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子どもの近視が増えているといわれています。予防するために、ママは何ができるのでしょうか?

今回は具体的な近視の予防策について、NHK『あさイチ』でも話題となった『あなたのこども、そのままだと近視になります。』の著者で慶應義塾大学医学部眼科学教室の坪田一男教授に話を聞きました。

「【医師監修】子どもの近視が増えている!?「あなたの子どもの目大丈夫?1」」の続きです。

■近視になる子、ならない子で違っていることとは

――スマホが近視の原因というエビデンスはないとお聞きしました。それでは、近視になる原因として、現在わかっていることはありますか?

近視に影響すると考えられているエビデンスのなかでも、世界各国のさまざまな研究で同様の結果として報告されているのは、「外で遊ぶと近視になりにくい」というものです。

ウェスタンオーストラリア大学とシンガポール大学による共同研究グループが、シンガポールに住んでいる中国人とオ―ストラリアに住んでいる中国人を比較する研究を行いました。シンガポールは近視の人が急増している一方、オーストラリアは近視の子どもがとても少ないことがわかったのです。

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決定的に違ったのが、「外にいる時間」です。オーストラリアでは平均して1日2時間くらい屋外で過ごしていましたが、シンガポールでは10~20分程度だったのです。

この研究以外にも、「屋外で太陽にあたる時間が長い環境のほうが近視は少ない」という報告がいくつかあります。また、私たちの研究では、「照度の高いブラジルと照度の低い東京とを比べるとブラジルの子どもに近視が少ない」という結果が出ています。

――なぜ、外で遊ぶと近視になりにくいのでしょうか?

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体を動かすことよりも、太陽の光が良いらしいことがわかってきましたが、光の何がどう良いのかがわかりませんでした。

私たちは、あることをきっかけに、「バイオレットライト」(紫の波長の光)に近視の予防効果があるのではないかということを発見しました。そして、5年をかけてヒヨコを用いてそのメカニズムを突き止め、そして臨床研究でもその可能性を支持する結果を得ました。

「バイオレットライト」(提供:坪田一男教授)

「バイオレットライト」とは、可視光の中でもっとも紫外線に近い、360~400ナノメートルの波長の光のことです。実際にヒヨコでバイオレットライトの有無による研究を行い、バイオレットライトがない環境では近視を抑制する効果が低いことを突き止めました。さらに、バイオレットライトのある環境のヒヨコは、近視の進行を抑える遺伝子の働きが活発化していることもわかったのです。

■どうやってバイオレットライトを生活に取り入れればいいのか

――バイオレットライトは屋内にはないのですか? また、メガネをかけていても効果はあるのでしょうか?

車や住宅のガラスや私たちがかけているメガネにはUVカットなどの加工により、バイオレットライトもカットされてしまっています。だから屋内で日光を浴びても、メガネをかけて屋外にいても、目にはバイオレットライトが入ってきません。

バイオレットライトを浴びるためには、屋内では窓を開けたり、外で過ごすときはメガネを外す、あるいはバイオレットライトを通すメガネをかけたりといった工夫が必要になります。昨年、バイオレットライトを通すメガネが商品化されたので、お子さんの目の健康を考えたらこれらの商品も検討してもらえればと思います。

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まだ研究途中で、すべての近視をバイオレットライトが抑制する、予防できるとは言い切れません。近視の進行にはバイオレットライト以外の要素も関与しているかもしれません。

しかし、屋外である程度日光をあびることは、少なくとも健康によい影響を与えることは間違いない事実です。近年、紫外線の害が強調され、太陽が悪者になってしまっていますが、紫外線にも骨を丈夫にするなどの役割があります。肌を保護したり、熱中症に注意したりすることも必要ですが、太陽の光は人間にとって必要な自然の力であると言えます。

――具体的には1日何時間、屋外で過ごせばいいのでしょうか? また紫外線対策はどうすればいいのでしょうか?

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現在の研究データより、私は1日2時間外遊びをすることを推奨しています。屋外の光環境はとても強いので、帽子をかぶるなどして紫外線対策はしてください。直射日光を浴びる必要はありません。日光を直接見ることも絶対にしてはいけません。

日光には360ナノメートル以下の紫外線も含まれていて、長時間紫外線にさらされることは、皮膚をはじめ、健康にとっていいことばかりではないので、その点は十分注意してください。曇りの日や日陰でも十分にバイオレットライトの恩恵を受けることはできます。大切なことは、外で過ごすことです。

■外遊びは近視予防だけでなく健康への道しるべにもなる

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――お母さんたちに対して、子どもの近視予防についてアドバイスはありますか?

大切なのは、子どもを強い近視にしないことです。視力検査で0.7とか0.6などと言われたら、すぐにでも近視を進ませないための対策をとってもらいたいと思います。近視のなり始めが、予防のためにはとくに大切なのです。

近くを長時間見続けることも近視に影響するという研究もあります。ピントがあいにくい状態、たとえば寝転がって本やスマートフォンを見るなども影響があるとする研究もあります。スマホやゲーム機器をずっと見続けることは、目はもとより心身にも負担がかかるので、時間やルールを決めて生活をしてもらいたいと思います。ゲームの時間が長くなればそれだけ屋外で過ごす時間が少なくなります。

1日2時間、外で過ごす時間を作ることは、近視の予防だけでなく、子どもの健やかな成長のためにもなると考えています。近視を予防することは健康になることと同義だといえます。

バイオレットライトは、「光のビタミン」と考えてもらうといいかもしれません。こうしたことを私たちは、今後中心となって広げていきたいと考えています。子どもたちのためにも、お母さんたちにもしっかりとそのことを意識してもらいたいと思っています。
<バイオレットライトを取り入れるためには>
●1日2時間ほど外遊びをする
※曇りの日や日陰でもOK
※日光を直接見ることは絶対しない。紫外線対策も忘れずに行う
●屋内にいる場合には、窓を開ける
●通常のメガネをかけている場合には外すか、バイオレットライトを通すメガネを使用する

先生のお話を聞いて、外遊びについてはママも積極的にならなければいけないのだと実感しました。子どもの外遊びに付き合うことは、近視予防のためだけでなく家族の健康につながるとも考えられます。家にいるときも、窓も開けるだけで「バイオレットライト」を浴びることができます。子どもたちの近視予防と健康のために、ママたちができることをしっかり意識していきたいですね。

■今回のお話を伺った坪田一男教授のご著書

『あなたのこども、そのままだと近視になります。』
(税別¥1,000、坪田一男著、ディスカバー・トゥエンティワン)
子どもたちの近視が増えていることや近視の恐ろしさを丁寧に解説したうえで、近視にさせない具体策を提示した著書。「近視は予防できない」という通説を覆し得るような大発見に至った過程についても丁寧に記載されており、読みやすい文章で書かれているため、子育て中のママたちにもお勧めの一冊です。
坪田一男氏

1955年東京生まれ。1980年、慶應義塾大学医学部卒業。85年ハーバード大学留学、87年クリニカルフェロー修了。現在、慶應義塾大学医学部眼科学教室教授、慶應義塾大学SFC研究所ヘルスサイエンスラボ代表、日本抗加齢医学会前理事長、日本再生医療学会理事、近視研究会世話人代表、南青山アイクリニック手術顧問などの要職を務める。2017年2月に著書「あなたのこども、そのままだと近視になります。」を出版。
眼科医 坪田一男 オフィシャルサイト:http://www.tsubota.ne.jp

<参考サイト>
慶應義塾大学プレスリリース:「現代社会に欠如しているバイオレット光が近視進行を抑制することを発見-近視進行抑制に紫の光-」

出典:Ophthalmology. 2008 Aug;115(8):1279-85. doi: 10.1016/j.ophtha.2007.12.019. Epub 2008 Feb 21.
Outdoor activity reduces the prevalence of myopia in children.
Rose KA1, Morgan IG, Ip J, Kifley A, Huynh S, Smith W, Mitchell P.

(高村由佳)

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