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真のサステナブルなファッションってなに? 若手デザイナーたちの挑戦。

  • 2018.4.23
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GMBH 2018年SSより。
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環境への配慮が高まる現代において、「ファッション業界は世界で2番目に汚染を引き起こしている業種」という事実は、プレスリリースやインタビューを通して目にすることが多々ある。しかし、驚くかもしれないが、実際にこの出来事の背景にある具体的な研究が存在しないことをご存知だろうか。もちろん、ファッション業界には“背負わなければいけない責任”があることも事実。昨年公開されたボストン・コンサルティング・グループとグローバル・ファッション・アジェンダの報告によると、ファッション業界では年間の廃棄量とエネルギー排出量が60%増加すると予測されおり、一方、水の消費量は2030年までに50%増加すると言われているのだ。

近年、環境に配慮することはブランドのミッションとも言える。ファストファッション・ブランドでさえも、使い捨ての服を大量生産する一方で、サステナブルな取り組みに励んでいる。しかし、本当の意味で環境に配慮しているブランドはどれだけ存在するのか。その多くがうわべだけで環境配慮をアピールする「グリーンウォッシング」なのではないかという疑問もある。ここでは、独自の活動に励む3名のファッションデザイナーを紹介しよう。

サステナブルなクラブウェアを発信するベルリン発の「GMBH」。

「サステナブル? その言葉自体が廃れているように思うんだ」と、GMBH(ゲーエムベーハー)のベンジャミン・アレクサンダー・ヒュズビーは語る。進歩主義のベルリンを拠点としたこのブランドは、プロスポーツ選手のためのジャカードニットや、超モダンなフリースのようなユニセックスのワードローブが特徴だ。 また、ユニークなモデルキャスティングでも知られており、2018年秋冬コレクションでは移民のバックグラウンドを持つモデルを起用し、ダイバーシティにも力を入れている。「本当の意味で持続可能なファッションというのは不可能だよ。消費することにより世界の環境問題を解決することなんてできない」

GMBHでは、デッドストックやリサイクル素材を積極的に取り入れ、独自の視点でサステイナブルやエシカルな課題にもアプローチしている。サステナブルに多大な投資をしている彼にとって、見かけだけのグリーンウォッシングという行為は当然神経に障るようだ。 「正直うんざりするよね。 広告は時に言葉の意味を歪めることがあるから」。 そう厳しく語る彼は、地球の環境容量をあらわす指標「エコロジカル・フットプリントを採用。これは、人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な面積として示した数値だが、彼は自身の感じる不満をこういった精密な調査に向けているのだ。

GMBHのシグネチャーは、フランケンシュタインのようにパッチワークされたヴィンテージのヘリーハンセンのジャケットをアップサイクルしたアウターウェアだ。最後の仕上げとして、捨てられるはずだったゴミから見つけたボックスと土に還るバッグに入れて出荷されるという。

持続可能なイタリアンファッションを牽引するティツィアーノ・グアルディーニ。

環境にやさしい服づくりいえば、イタリア人デザイナー、ティツィアーノ・グアルディーニの言葉遣いは、わずかに新時代を感じさせる印象を与えるかもしれない。「僕にとって、サステナビリティとは、『生命そのもの』とのつながりを維持することを意味するんだ。微妙なバランスの一部である僕たち人間は、地球を大切にしなければならない」と語る。去年ミラノで開催された「グリーン・カーペット・ファッションアワーズ・イタリア2017」では、「最優秀新進デザイナー・フランカ・ソッツァーニ・グリーン・カーペット・チャレンジ賞」を受賞した。

そんな彼は、驚くほど綿密な工程を踏み、生き物にやさしいシルクを使用する。蚕がいなくなった後に収穫された繭のみを使用し、 再生羊毛や収集された貝殻、廃棄されたCDなどが彼の作品の素材として使われる。 そして、2018-19年秋冬ではデニム・ファーのアイテムを発表。オーガニックでリサイクルされたコットンを非動物由来の代替物へと変えたのだ。

元ドリス ヴァン ノッテン&マーク ジェイコブスに在籍したスペンサー・フィップスが手がける新メンズブランド。

デザイナーのスペンサー・フィップスは、昨シーズン、パリで行われたメンズファッションウィークで、自身の名前を冠したメンズブランド「Phipps(フィップス)」を立ち上げた。このコレクションは、リラックス感あふれるフランネルシャツ、対照的な襟のワークジャケット、さらには千鳥格子のブランケットという、再解釈されたクラシカルスタイルが特徴。カリフォルニア生まれ、 パーソンズ大学卒の彼は、卒業製作に手染めのオーガニックコットンと麻の布を使用し、それ以来環境に配慮し続けている。

今日、彼のブランドはサステナブルとして賞賛されているが、彼はその名に忠実に従って行動する難しさを実感している。「新しいものは持続可能ではないと考えられているけれど、最も大切なのは注意すること。僕は製品を管理するためにできる限り最善の努力を払い、できるだけ環境を尊重しながらクリエーションしているんだ」。

それはつまり、オーガニックコットンを調達し、自然な工程を踏む毛織物工場を使用し、化学廃棄物を避け、不要な輸送を排除することを意味している。「僕はメーカーを探して世界を旅する莫大なお金は持っていないけれど、販売業者に会って彼らの目を見て、それがオーガニックであるかどうかを聞くことはできるから」

彼はデザイナーとして、モラル的に優位に立つことを拒み、誰かに説教をすることもしない。「世の中のすべての消費が、意識的な決定に基づいて行われるわけではないからね」。また、持続可能な服であっても、何よりも美しさを優先することを心がけている。他のデザイナーと同様に、彼の判断はビジュアル、快適性、機能性に基づいており、リラックスしたワークジャケットとその手触りにおいては明らかだ。「実は僕は、“追加の要素”を加えているだけ。たとえばあなたが、このTシャツを気にいる。そして、タグを見るとオーガニックコットンだということがわかる。そして『あぁ、自分も環境のために貢献している』と感じ、いい気分で購入することの後押しをしているんだ」
参照元:VOGUE JAPAN

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