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出世に影響アリ!? 有力者や著名人との“人脈”の必要性とは

  • 2015.1.27
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【ママからのご相談】

30代の主婦です。1歳上の夫と小学生の娘と息子がいます。夫はそれなりに知名度のあるチェーンストアを展開する会社の主任ですが、人づきあいが上手なタイプではないため出世が早いとは言えません。先日も同期の人が課長に昇進し、その日は珍しくあまり強くないお酒を家で飲み、「俺には人脈がないから転職も起業も難しいもんな。万年主任でも我慢してやっていくしかないさ」と、やや自暴自棄になっていました。

私は、「出世なんか遅くたって子どもたちに優しいパパのことが大好きだよ」と言ってあげたかったのですが、かえって夫を傷つけそうで、言えませんでした。夫の言うように“人脈”って、社内でうまくやっていくにも、転職や起業をする上でも、そんなに大切なものなのでしょうか? 今の夫にはどんな言葉をかけてあげたらいいのでしょうか?

●A. 旦那さまの一番大切な人脈は、あなた。尊い人脈は身近にあるものです。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

旦那さまは、大事なことに気づいていないようです。同期や後輩に先を越されるというのは、勤め人にとってはこの上なくやるせないものですが、その心情を誰よりも察しながらかける言葉を見つけられないでいるご相談者さまこそ、旦那さまの尊い人脈だということに気づいていないように思えます。

下記の記述は都内でメンタルクリニックを開業し、社交不安障害の治療を専門としている精神神経科の臨床医に聴いたお話しを参考にしながら、すすめさせていただきます。

●有力者や有名人と交流があってもそれ自体が仕事でなければ大きな意味はない

『たとえばの話しですが、プロモーターやイベント企画会社の営業や社長さんのような職業の人が各界に幅広い知り合いを持っていることは大きな武器ではあります。その仕事の特性上、顔の広さそのものがツールとなりうるからです。

しかし、自分のような一町医者だったらどうでしょうか。有力者や有名人との面識がいくらあったところで、そのようなことは自分の人生にとって特にこれといった意味を持っていません。自分にとって大事なのは地域の人たちとの“生きた交流”だからです』(50代男性/都内メンタルクリニック院長・精神神経科医師)

上記は精神科医師の見解ですが、私などもこれに近い感覚を持っています。

私は零細な町工場を営む両親のもとで育ったのですが、小学校高学年のときに担任だった先生の勧めで一貫教育の進学校を受験したところ合格してしまい、親は経済的にさぞかし大変だったろうと思いますが、私をその学校に通わせてくれました。

政治家の子や芸能人の子、有名企業の社長の子、高名な音楽家の子や画家の子、作家の子や大学教授の子、医者の子、弁護士の子。同級生や先輩・後輩のおよそ半数は、そういった環境で生まれ育った子たちでした。もちろん彼らは友だちですから、今、親の跡を継いで国会議員や社長になっている彼らの携帯に電話を入れればいつでも話しをできますし、親しく冗談を言い合うこともできます。

けれど、そういった“人脈”に一体どれほどの意味があるというのでしょうか?

私は一介のエッセイストとして、私たち市井の庶民の日常の暮らしのたくましさや、厳しい現実の中から湧き上がるような希望といったものを文章に著すことを生業としている人間です。先ほどの医師同様、著名人の旧友たちとの“人脈”など、私にとってさほどの積極的な意味などないのです。

●人脈とは“その人にとって大切な人たち”のこと。有力者との面識のことではない

『今、私たちの社会で最も求められている“人脈”は、格差社会の中で相対的に弱い立場にいる若者や女性や子どもたちが、その状態から少しでも抜け出すうえで社会資源を使えるようになるための“人との出会い”です。具体的には子どもの学習支援などに取り組むNPO法人で働く人などとの“人脈”が重要となります。また、このようなQ&A方式のコラムサイトでそういった方々にヒントやアドバイスを発信している弁護士や教育者や医療関係者やシングルマザーの先輩やママライターさんたちとのネット上での“人脈”にも貴重なものがあるかと思います。

逆に、格差の“上位”にいる人たちや有力者同士の人脈などは、ほとんどの一般庶民にとってどうでもよいものです。ご相談者さまの旦那さまがおっしゃっている“人脈”というものが後者のような“有力者との面識”を指しているのだとすれば、そういったものにはあまりとらわれないで御自身のスキルに磨きをかけることに注力された方が、建設的ではないかと思います』(前出・精神神経科医師)

●人脈の濫用は人間関係を壊すだけ。本当の“使い時”はそうはない

ご相談者さまの旦那さまより何年も長いこと生きてきている私でさえ、日頃の仕事であえて人脈を使っていると言えるのは一点についてだけで、コラムを書く際に医学的・学問的な根拠を記す必要がある場合に、電話やメール一つでいつでも質問に答えてくれる医師や博士の友人が何人かいるという点です。それ以外には何もありません。

ご相談者さまが今、旦那さまに言ってさしあげるべき言葉は、ご相談者さまが言おうと思って言えなかった、「子どもたちに優しいパパのことが大好きだよ」という言葉そのままなのではないでしょうか。

有力者との面識などといったものは、下手に濫用したらかえって良好だった人間関係を壊すだけです。あなたの旦那さまは出世が早くなかろうと身分の安定した正社員であり、思いやりのある奥さまとかわいいお子さんたちに囲まれた相当な幸せ者です。

20世紀で最も偉大なロック・ミュージシャンと呼ばれ夫人とともに平和運動家でもあった人物が亡くなる直前に言い残した言葉があります。世界中の有力者や著名人たちといろいろな意味で関わりがあった人間が、最後に言った言葉がこれです。

『人生で、たった2人だけ、素晴らしい人に出会うことができた。私の妻と、私が形成したバンドの相方だ』

本当に大切な人脈とは、こういうことを指していうのではないでしょうか。

(ライタープロフィール)

鈴木かつよし(エッセイスト)/慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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