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日本の英語教育は20年遅れ?海外の外国語教育事情

  • 2018.3.14

みなさま、こんにちは!

海外生活25年続行中、国際結婚、国際子育て真っ只中のバイリンガル教育パパ、Golden Beanです。

いよいよ2020年度から小学校3,4年生に「外国語活動」 が、5,6年生に教科「外国語」が導入されます。

2016年に、中央教育審議会外国語ワーキンググループによって作成された「審議の取りまとめ」に次のような文章があります。

「我が国では、外国語を日常的に使用する機会は限られているが、現在、学校で学ぶ児童生徒が卒業して活躍する社会や世界の舞台では、多文化・多言語の中で、国際的な協調と競争の環境の中にあることが予想される。そうした中で、国民一人ひとりが、さまざまな社会的・職業的な場面において、外国語を用いて互いの考えを伝え合い理解し合うことが一層重要になることが予想される」

簡単に説明すると、今の子どもたちが大人になるころには、外国人とのコミュニケーション能力が不可欠 になるだろうと予測しているのです。

子どもたちが直面するであろう国際的な協調と競争の相手である諸外国は、外国語教育をどのように行っているのでしょうか。

台湾、シンガポール、オーストラリア、そして中国で生活してきたGolden Beanが紹介させていただきます。

●アジア諸国やEU加盟諸国の小学校英語教育

中国、台湾、韓国などのアジア諸国では自国が政治的、経済的に発展し、他国と競争し生き残るために、国際的な舞台で活躍できる人材の育成を英語教育の目的としています。

また、英語を身に付けることで個人的にも経済的に成功することができると考えています。

EU加盟諸国では、「多様な言語、文化との共存、交流は豊かな財産である」という理念のもとに、異なる言語や文化を理解し尊重する「複言語主義」「複文化主義」を掲げ、母語以外の2つの言語運用能力、ヨーロッパ市民としての資質を伸ばすことを目的に、早期に外国語学習を開始することが奨励されています。

複数の言語を学ぶことでより多くの情報を入手することができ、平和で豊かな生活を手に入れることができると考えられているのです。

諸外国の英語教育をくわしく見てみましょう。

●中国

中国では経済発展のために、英語教育が重視されています。

2001年に子どもたちは小学校 3年生から英語を教科として学ぶことになりました。

上海や香港などの大都市では、小学校1年生から英語教育が取り入れられています。 私は現在上海で仕事をしているのですが、同僚の小学校1年生の子どもを持つ上海人ママによると、小学校1年生では週に3回、30分の英語の授業が行われているそうです。

小学校3,4年生で30分の授業が週に4回、小学校5、6年生では30分の授業と40分の授業が合計週4回以上行われています。

リスニングでは、「短い簡単なストーリーが理解できるようになる」、スピーキングでは「身近なことがらについて対話ができるようになる」ことなどが、小学校修了時の学習到達目標として掲げられています。

英語の授業は主として、英語専門の教員によって行われます。

最近では、早期バイリンガル教育を行う私立の幼稚園や小中学校、インターナショナルスクールが増えてきています。

●韓国

韓国では、英語を小学校3年生から教科として学ぶことが1997年にスタートしました。

現在40分の授業が小学校3、4年生で週に2回、小学校5,6年生で週に3回行われており、「日常生活に関する簡単な話を聞き、相手の意図や話の目的を理解する」ことや「日常的な話題について自分の意見を述べる」 ことなどが学習到達目標として掲げられています。

以前は担任教師による授業が主でしたが、最近は英語専門教員や外国人教員による授業が増えてきています。

授業でより多くの英語を使う機会を設けたり、学校内に英語体験学習センターを設置したり、英語教員の海外研修を充実させたりするなどのTEFE(Teaching English Through English)政策に韓国政府は大きな投資を行っています。

●台湾

台湾では2001年に小学校5年生からの教科としての英語の導入が始まりました。

現在では、小学校3年生から週2回の40分授業が行われています。台北などの大都市では小学校1年生から英語の授業が開始されています。

「簡単な文章や日常生活の対話を聞いて理解できる」「絵や図などを参照しながら簡単なロールプレイができる」 などの学習到達目標が掲げられています。

主として英語専門教員によって授業が行われますが、担任教員や中学校の英語教員、外国人教員による指導を行うケースもあります。

放課後に英語補習授業や、夏休みに英語キャンプを企画したりする小学校もあるようです。

●ドイツ

ドイツでは州が学校教育に関する決定権を持ち、初等教育に関しては地方自治体レベルで全て決定されることになっています。

小学校は4年制となっており英語教育は多くの州で小学校1年生 から始まります。

2001年にヨーロッパ評議会(Council of Europe)によって提案された、CEFR(「外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」)のA1レベル(英検3~5級程度に相当します)が小学校の学習到達目標に設定されています。教員は英語専門教員です。

●フランス

フランスでは、小学校における外国語教育が2002年にスタートしました。

小学校は5年制になっており、小学校1年生から外国語が必修科目 となっております。

授業コマ数は、各学年全て45分授業が年間54コマとなっています。小学校5年生修了までにCFERのA1レベルの到達が目標とされています。

教員は学級担任が理想であるとされますが、現実には英語専門教員や外国語能力に優れる担任が複数クラスを担当することもあるようです。

●デンマーク

デンマークの小学校外国語教育の歴史は古く 、1903年に英語が小学校教育に導入されました。

現在では日本の小学校2年生に相当する小学校3年生から必修科目になっています。小学校3、4年生で45分授業が週に2回、小学校5年生で週に3回となっています。

小学校修了時の到達目標は設定されていませんが、9年生(日本の中学校に相当)修了時の到達目標はCEFRのB1レベル(英検2級に相当)となっています。

●諸外国と日本の小学校英語教育の差

日本では、2011年から小学校5年生から外国語活動の導入 が始まりました。

そして2018年から段階的に試行され、2020年に完全実施となる次期学習指導要領では、小学校3,4年生で外国語活動を、そして小学校5,6年生で外国語を教科として導入することが決定しています。

しかし、アジア諸国やEU諸国では、2000年前後に英語を必修科目にしすでに20年前後の実績を積んでいるのです。

つまり、残念ながら日本は小学校の英語教育に関しては約20年出遅れている ことになります。

また、日本では小学校3,4年生で週に1回、小学校5,6年生で週2回の授業時間となっており、アジア諸国と比較するとかなり少なくなっています。

先に紹介したドイツやフランスの小学校では、CFERのA1レベルを到達目標として英語教育を行っています。中国、韓国、台湾でもCFERを参考にした小中高一貫の英語学習到達目標を設定して、小学校での英語教育を行っています。

日本でも次期学習指導要領ではCFERを参考にした指標形式(CAN-DO)の目標を設定し、英語教育を行うことになっていますが、ドイツ、フランス、デンマークでは母国語と英語の言語的距離が近く学習しやすいこと、そして中国、韓国、台湾では日本に比較し授業時間が多いこともあり、到達目標は日本よりも高く設定されているのです。

子どもたちが大人になったとき、外国人と丁々発止と渡り合い、国際的に活躍できる人材となれるよう、小学校の先生方と連携しながら、子どもたちに英語に興味を持たせ、確実に英語能力を伸ばしていってあげたいですね。

参考文献
『小学校英語指導法辞典』樋口忠彦、高橋一幸、加賀田哲也、泉恵美子 編著、教育出版

●ライター/Golden Bean
●モデル/倉本麻貴

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