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じっくり、ぶつかりながら、不器用に……。運命の愛を育んだ夫婦の実話『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』

  • 2018.3.4
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ドラマティックなラブストーリーを観ると、雷に打たれるような運命の愛は誰にでも訪れるような気になるけれど、それは出会うものではなく、育んでいくものなのではないかと思えてくる作品をご紹介。カナダで愛されている実在の素朴派画家モード・ルイスと、その夫との愛を描いたラブストーリー。サリー・ホーキンスとイーサン・ホークが、不器用ながらも支え合う夫婦を魅力的に演じています。

舞台はカナダの小さな港町。幼い頃から重いリウマチを患い厄介者扱いされてきたモード(ホーキンス)は、魚の行商を営むエベレット(ホーク)の家に住み込みで働くことに。孤児院で育ち、学もなく、生きることに精一杯だったエベレットと孤独だったモードとの同居生活はトラブル続きで衝突することばかり。それでも、モードが作る温かなスープにエベレットが癒されたり、体の不自由なモードをエベレットが助けることで愛情が芽生え、いたわり合っていく姿はとても自然。相性が合わないとすぐに投げ出すのではなく、じっくり時間を共有することでかけがえのない関係性を育んでいく姿が素敵でした。

劇中ではモードが趣味で描いていた絵が人気を集め、画家として注目されるようになりますが、決してふたりの生活が変わらないのもおもしろいところ。亡くなるまで32年間暮らしていたのは4メートル四方の小さな家で、電気も水道もない慎ましい生活を送っていたそう。モノや情報が溢れる現代から見ると驚くほど質素に映るけれど、そもそもモードはもともと画家を目指していたわけではなく、世の中に何かを残したいというクリエイティブな発想も皆無。澄んだ瞳で世の中を見据え、ただただ楽しいという純粋な欲求で筆を走らせた幸福感に満ちた絵に、都会で満ち足りた生活を送る人々が強烈に惹かれていったのです。好きなことを楽しみ、愛する人と暮らす。そのシンプルな日常を噛み締めるふたりに、本当の幸せを教えられるはずです。

(文/松山梢)

●公開中

©2016 Small Shack Productions Inc. / Painted House Films Inc. / Parallel Films (Maudie) Ltd.

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