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「保育園落ちた」わたしたちは働けないから怒るんじゃない、その真意とは

  • 2018.2.20
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©poosan

「保育園落ちた日本死ね」というセンセーショナルなタイトルのブログが話題になって2年。今年もSNS上には、保育園に落ちた親達の悲痛な訴えがあふれています。そして、この記事を書いているわたしも、保育園に落ちた親のひとり。

以前、プラカードを持った親達が怒っていた風景に「こんな風に怒るなんて」と、人ごとのように考えていましたが、今思えば考え足らずでした。実際に保留(不承諾)通知を見たときは途方に暮れました。

そして、自分が「保育園に落ちた」待機児童問題の当事者になって初めて分かったことは、単に働けないことに怒りを覚えているわけではないということ。

怒る理由の真意は、「わが子は、保育園に入れた子のように集団生活を送ることなく、母とだけ過ごしていて大丈夫だろうか」「この子を夫婦だけの力で育てていけるだろうか」「この先、子どものために充分な環境を与えてあげられるだろうか?」という不安が、怒りに変わっていくということでした。

■「保育園に落ちた」親の実際の声
わたしたち夫婦は、共にフリーランスのため、そもそも認可保育園に子どもを入れるのは望み薄だろうと思っていました。それでも、認可園や認証園など10ヶ所ほどの保育所を見学。子どもセンターの窓口へも相談に行きました。しかし結果は内定に至らず……。なにかもっと特別な保活をするべきだったのかと、後悔もしました。

「#保育園に入りたい」には、わたしと同じような人の声がたくさん集まっています。

保育園に入れた人って、何か特別な活動したのかな。保活って、一体なにするべきだったんだろ。通園できる範囲なんて限られてるから、圏内の園を見学するくらいしか、できることなくない…? 加点表は見たけど、努力して点数が増えるようなものではないし。
区役所に電話したら、私の業務がポイント0だと。これが一番のショック。フリーって月によって業務にバラツキがある。だから就労報告も6ヶ月分つけた。でも見るのは直近3ヶ月のみ。会社員用の仕組みなんですね、結局。
働いているから子どもを生み育てられる。良い教育環境を整えられる。子育ては20年続くんだ。最初の1、2年で収入源を失うわけにはいかない。子供の将来のために必死になっていることを「親のエゴ」の一言で片付けられたくない。

(Twitterより一部引用)

■20年経っても解消しない待機児童問題
しかし、子どもの数は少なくなっているはずなのに、なぜ待機児童問題が解決していかないのでしょうか? 保育園や保育士不足、自治体の予算不足など、さまざまな理由があるにしても、状況はひどくなっているような気すらします。

待機児童の問題が顕在化したのは、専業主婦世帯を共働き世帯が上回った1997年代始めのころ。もう20年以上にもわたって待機児童問題は存在しているのです。

これまで、どれだけの親が職を失い、希望するライフスタイルを変えざるを得なかったのか。何かできることはないのでしょうか。

■保育園に落ちたわたしたちができること
わたし自身を含め、多くの当事者がいる待機児童問題。この問題に取り組んでいる「#保育園に入りたい」キャンペーンの発起人で、「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」の代表である天野妙さんに話を伺ってみました。

――待機児童問題が長びく一番の理由は何だと思いますか?

(天野さん) 当事者ではない人が、保育を社会の問題だと捉えられてないことが原因のひとつだと思います。“保育園は親が働かなくてはいけないかわいそうな子が行くところ”という考えも根強く残っている。さらに子どもの年齢が上がると、親がこの問題から“卒業”してしまうために問題意識の継続性がないこともひとつです。

――わたしも保育園に落ちてやっと、自分が当事者なんだと実感しました。待機児童問題の解決のために、なにかできることはありますか?

(天野さん) まずはSNSに保留(不承諾)通知をアップしてください。ハッシュタグに自治体や地域名まで入れることで、問題が可視化できます。あとは、地域の議員に会ってみること。待機児童問題は圧倒的にロビングが足りていなくて。やはり実際に困っている人の意見を聞かないと、政治家も親身になってくれません。

――いきなり政治家に会いにいくのは、わたしにはハードルが高く感じてしまいます……。
(天野さん) 地域の文教委員会を傍聴に行くだけでもいいんですよ。あとは、近所のおばあちゃんと話をするとか。まずは「保育園に入れなくて困っているんです」という声を出すことが大事です。子育て支援は、社会への投資になると多くの人に伝えて、保育の重要性を知ってもらいましょう。

わたしは今まで、保育園に入れなかったことをSNSで発信することすら、ためらっていました。なぜなら「保育園に入れない親が怒っている」と身近な人を始め、多くの人に思われるのが嫌だったからです。

だけど本当は、わたしたちは怒っているわけじゃない。知ってもらいたいだけ。「保育園に入りたい」というポジティブなワードなら、怒りに身を任せず冷静に困っていることを伝えられそうだと思い、ハッシュタグをつけてアップしてみました。

すると、たくさんの人が同意を示してくれて“分かってもらえている”という安心感がありました。小さなことですが、一歩を踏み出せた感じがします。

これからどんな立場の人も、働いていても働いていなくても、自由に保育園を利用できる日が早く来るように、出来ることから一歩前に進みたいですね。

取材協力:天野妙さん
3児の子育て中のワーキングマザー。2017年に待機児童問題を可視化するための「#保育園に入りたい」キャンペーンを開始。イベント開催や署名活動を行い、参考人として国会で意見を述べたことも。現在もロビング活動を積極的に行い、誰もが気軽に保育園を利用できる社会作りのために活動されています。

(いずみかな)

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