男は見習うべき? ママ社会の“マウンティング”に学ぶ価値観

【ママからのご相談】

20代、2歳の女の子のママです。公園で会うママ友仲間の30代の友人が、リーダー的存在である40代の女性の、“マウンティング”を苦手にしています。私はさほど苦手ではなく、大先輩からの“忠言”として素直に聞ける面があるのですが、30代の友人に言わせると、「売れないカメラマンの妻でホームセンターでバイトしてるくせに、サラリーマンの妻で専業主婦のアタシのことを“世間知らず”呼ばわりするのがウザい」「“一人っ子は絶対ダメ”とか言われるけど、アタシの年齢でとりあえず一人なのは当然」など、聞いててつらいです。ママ社会における“マウンティング”って、そんなに非難されるべきものなのでしょうか?

●A. マウンティングがあることは、その集団に多様な価値観がある証拠です。

ご相談ありがとうございます。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

2014年の流行語大賞候補にもなった“マウンティング”という言葉。もともとは動物が自分の優位性を誇示するために相手に馬乗りになる行動のことです。ある漫画家の女性がこの行動を、『人間の女性の間で普通に行われている、“アタシの方が幸せよ”アピールに似ている』として“マウンティング女子”というフレーズを提言し、一躍流行語になりました。

発案者の人は女性の社会に対して皮肉を込めて言ったのだと思いますが、ひとたび、「それでは男性の社会はどうだろう」と振り返ってみると、正社員か非正規雇用か、収入が高いか低いか、支配する側にいるか、される側にいるかなど、格付けの基準が単純に固定化されてしまっています。

異なった階層間には砕けた会話すら存在せず、階層間の流動性もほぼありません。むしろマウンティングという行為が存在する女性の社会の方が、多様な価値観が存在している“健全な社会”だといえるのではないでしょうか。

以下の記述は、対人関係療法の専門家で都内でメンタルクリニックを開業する精神神経科医師に伺った話に基づいて、進めさせていただきます。

●マウンティングととれる言葉の中にはその人の“価値観”がある

『ご相談者さまの30代のママ友の言葉の中に注目すべき点があります。「(40代のママ友が)売れないカメラマンの妻でホームセンターでバイトしてるくせに、サラリーマンの妻で専業主婦のアタシのことを“世間知らず”呼ばわりする」というフレーズですが、その中には、「わが家は収入は不安定で自分もバイトしなきゃ生活できない身だけど、夫はアンタの旦那みたいな“社畜”と違って、世界中の人たちに普遍的な“正義”や“人類愛”の映像を届ける崇高な仕事に携わっているのよ」という40代女性の誇りと価値観が含まれています。

一方で、言われた30代女性の側には、「アタシのことを“世間知らずの専業主婦”とかいうけれど、アタシが働かなくたって十分に生活できる収入がある夫は、アンタのダンナなんかよりずっと“デキる男”なの。素直に認めなさいよ」といったプライドがあります。

それぞれのプライドはそれぞれに、“ごもっとも”であり、どちらか一方が正しいという性質のものではありません。マウンティング行為のあるところには複数の価値観がしのぎを削りながら同居していて、どちらか一方を完全排除はしないという点で、今の私たちが見習わなければいけない態度があるとも言えるのです』(東京都/精神神経科医師)

●男性は引退して“バードウオッチング仲間”の域に達しないとマウンティングも出ない

『それでは、男性の社会はどうでしょうか。残念ですがわが国の一般的な会社勤めの男性の社会は、現役を引退して、「みんなバードウオッチング仲間じゃないか」のような域に達しない限り、“マウンティング行為すら出ない”ほど既成の価値観(社会的な地位や収入といったもの)に縛られているように思えます。

職場が同じでも非正規で働いている月収十数万円の中年独身男性が正社員の同僚に対して、「オレの本当の姿は詩人なのさ。お前らなんかより心はずっと満たされている」と言っても、その詩で少しくらいは収入を得ていないと、マウンティングとしてはなかなか成立しないような気がします。

非正規はずっと非正規。貧困層はずっと貧困層。階層の異なる者同士の間はマウンティングすら出ない“断層”で分断され、それぞれの間に行き来は無いといった男性社会の状況は深刻です。下位の側に居る男性たちには、「いっそネット動画アクターになって一夜にして広告収入長者となれるよう頑張って!」と、励ましたくなるくらいです』(前出・精神神経科医師)

●相手をとことん叩きのめさない女性の“マウンティング社会”を男性も見習うべき

『今、私たちが生きている社会では、対立する相手に“究極の言葉”を浴びせて排除してしまおうといった行動傾向が、対人関係において起きています。そこには自分と違う者を認め、自分と違う者から学び成長しようという姿勢が全くありません。男女どちらにもこの傾向はありますが、どちらかと言えば男性の社会にやや強く見られます。

そこへいくとマウンティング女子やママ友の社会では、「アンタ美人かもしれないけど、美人であることが収入増につながるのっておミズの世界じゃない。アタシは容姿は中の上程度だけどアンタとは知性が違うからいろんな仕事に就けるわよ」といったように、それなりに相手を認めた上で自らの優位性を誇り、相手を完全排除するということがないのです』(前出・精神神経科医師)

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こうして考えてみると、ご相談者さまの30代の友人の女性も、40代の女性のことをちょっと許せる気になったりしないでしょうか。こんな話を一度してさしあげるのもいいかもしれません。

(ライタープロフィール)

鈴木かつよし(エッセイスト)/慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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