1. トップ
  2. 恋愛
  3. 紗倉まな✕ヨシダナギ:「大きくなったらマサイ族になりたい」が、はじまりだった【後半】

紗倉まな✕ヨシダナギ:「大きくなったらマサイ族になりたい」が、はじまりだった【後半】

  • 2017.12.25
  • 788 views

「モノづくり大国」と言われる日本。その中でも「エロ」は世界でも有名。そんなアダルト業界で、自らを「えろ屋」と称しAV女優として活躍する一方、小説家としても活動する紗倉まなをホストに、文化やエンタメを支える様々な「クリエイター」をゲストにお届けする、『紗倉まな対談企画 モノづくり大国♡ニッポン』。
女性カメラマンのヨシダナギさんをゲストにお届けする第3回、後編です。

■◆少数民族と同じように裸になることで、彼らの特別な存在になりたい

紗倉:私自身、日本で撮影していても大変だなって思うことはたくさんあるんですが、外国での撮影ってもっといろんなハードルがありそうですよね。
ヨシダ:そうですね。言葉もだけどスケジュールもタイトだったりして。テレビだと、滞在できるのが3日だけとかよくあるんですよ。
紗倉:えぇ!その中で撮影しなければならないって、けっこうなプレッシャーですよね。
ヨシダ:そうなんです!まず現地の人に、私の撮影スタイルを相手に理解してもらうところからスタートするんですよ。モデルさんに、“なぜポーズを決めて、長い間立っていてもらわないといけないのか”というのを説明しなきゃいけなくて。
紗倉:やっぱり、理解をしてもらえないと撮れないものなんですか?
ヨシダ:そうですね。意思疎通ができないと、不信感を抱かれてしまうんですよ。「俺らのことが好きで来ているはずなのに、なんで今のままの俺たちを撮らないんだ?」って。そうなると、最初の1日は付き合ってくれても、2日3日となると付き合ってくれなっちゃって。
紗倉:そういうものなんですね。
ヨシダ:わかってもらえないと、「いい加減にしろよ」「やってられっかよ」みたいな雰囲気を感じますよ(笑)。なので、「あなたたちのことがすごく好き」っていうのと、「かっこよく撮りたい」ということを伝えるのが大切なんですよね。

紗倉:なるほど~。作品の出来栄えにも影響が出そうですよね。
ヨシダ:私の場合、協力して作るっていうスタンスじゃないと叶わない作品ですからね。
紗倉:ナギさんは、現地の方と同じ格好(裸)になって、部族の方との絆を深めるという秘策を持ってますよね!その時の肌を露出する感覚は、グラビア時代とは違う感覚なんですか?恥じらいとかあるのかなって。
ヨシダ:実はグラビア時代も恥じらいはなかったんですよ。隠してるし(笑)。部族の恰好をするために全裸になることも抵抗はなくって。その部族からしたらそれが正装であって、エッチな目で見られてるわけじゃないので。あ、でもガイドは絶対エッチな目で見てる。
紗倉:あはは(笑)。そこはわかるんですね。

ヨシダ:わかるんですよ!声かけてくる言葉も卑猥なことばっかりだし。だからそういう人がいるときは「絶対お前には見せない!」って気を付けてます。紗倉さんはお仕事で裸になることには抵抗はなかったんですか?
紗倉:なかったですね。もともと根暗な学生だったんですが、普段人に見てもらえない分、人に見てもらいたいという思いが強かったんだと思います。
ヨシダ:その見てもらいたいという対象の範囲が広かったんですね。
紗倉:そうですね。親とか友人に自分の存在を見てもらいたいというよりかは、不特定多数の人に見てもらうことに曝け出す意味を感じていたと言いますか・・・。不思議だったんですが(笑)。
ヨシダ:なるほど。そういう点では裸になることへの感覚はやっぱり違うのかもしれませんね。あと私の場合は、仲良くなりたいっていう気持ちももちろんあるんですが、好きな人と同じ格好をしたいっていう気持ちもあって。
紗倉:コスプレみたいな感覚でしょうか?
ヨシダ:そんな感じですね。それに、一般的なコスプレの対象はほとんど二次元ですが、私の場合は憧れている人たちの衣装の本物を着られるわけですよ!
紗倉:そう考えるとめちゃくちゃ興奮しますね!仲良くなりたいより、同じ格好をしたいという気持ちの方が先にあったんですか?
ヨシダ:本当に好きだから、同じ格好をしたいし、ビジネスライクではなく特別な存在になりたい。割合でいうと両方同じぐらいかな。

■◆ぼーっと過ごすのは、幸せで贅沢なこと

紗倉:憧れの人と絶対に仲良くなるんだ、いい写真を撮るんだっていう強い意志が、ナギさんの原動力になっているんですかね?
ヨシダ:うーん。でもみなさんが思ってるような熱い思いを24時間365日抱いているわけじゃないと思うんですよね。
紗倉:そうなんですか?
ヨシダ:性格的に、何かを四六時中考えてるってことがないんですよ。基本的に頭が動いてなくて、あんま考えてないんです。
紗倉:ナギさんが普段どんな風に過ごされているのか、とても気になります(笑)
ヨシダ:いかにエネルギーを使わないかってところに重きを置いてます。
紗倉:動かないんですね(笑)。
ヨシダ:動かない、考えない、何もしない。
紗倉:あはは!悟りの境地みたい。
ヨシダ:昔は、何もしない1日がすごくもったいないというか、「1日なにしてたんだろう」っていう罪悪感に襲われることがよくあったんですよね。でもアフリカに行くようになって、何もしない時間って、こんなに幸せで贅沢なんだなってことを痛感して。だから、日本にいるときに、朝起きてぼーとして気が付いたら日が暮れてたっていう1日を過ごすと、「最高に無駄なことしたな」ってちょっといい気分になるんです(笑)。
紗倉:時間の極め方を見つけられたような。
ヨシダ:年取ってから後悔しそうな気もしますけどねー。体が動くときにもっと動いておけばよかったって。
紗倉:アフリカのそういう穏やかな感覚と比べると、やっぱり日本人はせかせかして余裕がないなって感じますか?
ヨシダ:私自身の生活は日本にいてもアフリカにいてもあまり変わらなし、普段の生活でそこまで忙しく働いている人を目の当たりにしてるわけではないので・・・あんまりそんな風には感じないかな。ただ、「自分の将来の夢に近づけそうもありません」と悩んでいる若い子たちを見ると、もっとアフリカ人みたいに楽に生きたらいいのになって思うことはあります。そんなに肩肘張って生きなくても大丈夫だよって。

紗倉:そういう心の余裕って必要ですよね。アフリカに行くようになって、価値観が変わった部分はあるんですか?
ヨシダ:価値観とは違うかもしれないけど、私は小さい頃からマイペースで、一種の社会不適合者だと思ってるんです。自分にそんなつもりはないんですが、馴染めないんですよね。自分は一生懸命やっていても、みんなと同じペースでできなくて。子どものときに「協調性が足りない」と言われたときはすごくショックでした。それが、初めてアフリカにいったときに、私の感覚とギャップを感じなかったんですよ!アフリカ人に「お前はそれでいいんだよ」って肯定してもらえたような気がして。そこはすごく救われましたね。

■◆「美しい」という感性は、全世界共通なのかも

紗倉:部族の人にもいろんな方がいると思うんですが、モデルを選ぶときのポイントとかってあるんですか?
ヨシダ:そうですね・・・。写真を見てくれている人の中には、そこに写っている部族を見るのが最初で最後になる人がたくさんいると思うんですよ。例えば〇〇民族には、本当はシュっとしたかっこいい人がたくさんいるのに、私がぽっちゃりした人ばかりをモデルに選んだら、写真を見た人は「〇〇族=ぽっちゃり」っていうイメージがついてしまう。私はその民族のかっこよさを届けたいので、そうならないためにも、特に顔立ちのいい人とか、りりしく立てる人を選ぶようにしていますね。

紗倉:確かに!それはありそうですね。日本人と現地の人の「かっこいい」の基準は似てるものなんですか?
ヨシダ:それがけっこう似てるんですよ。
紗倉:へー!
ヨシダ:鼻筋が通ってる、目が大きいとかもあるとは思うんですが、なんかかっこいいって人いるじゃないですか?
紗倉:わかります!いわゆる「雰囲気イケメン・・・」ですよね。
ヨシダ:そうそう。佇まいとか、所作だったりとか。部族によっては、例えば「アフロが大きい人ほどかっこいい」とかそういうのもあるけど、それとは違う中から出てるかっこよさですよね。顔の好みはあるとしても、かっこいい、かわいいという美的感覚は世界共通なんじゃないかなって感じましたね。
紗倉:確かに。ナギさんの写真に写っている方も、皆さん素敵だなぁと思ってみていました。

■◆少数民族は意外にも美意識高め

紗倉:ご自身が撮った写真の中でも、特に「これはいい写真」と感じるものもあるかと思うんですが、それってどういうところで判断されているんですか?
ヨシダ:カメラマンの中には、いい写真を選ぶときに「モデルの表情」で選ぶ人と「自分の技術」で選ぶ人がいると思うんですよね。「これは構図が最高だ!」「これはピントがばっちり合ってる!」みたいな。でもそれって、正直モデルの顔が残念なこともけっこうあるんですよ。
紗倉:それ、すっごいわかります!!
ヨシダ:それって撮られた側も残念ですよね。だから私は、「若干ピントがずれた、構図もそこそこ、でもモデルの表情が最高」だったらそっちを選びます。

紗倉:それは被写体としては最高に嬉しい写真の選別ですね・・・!自分が納得していない写真だと、みんながどれだけその写真を褒めていても、やっぱりモヤモヤとした気持ちが残りますし。私も、以前、まばたき寸前の写真とかを選ばれて「セクシーだからこれがいいんだよ」なんて言われたこともありましたけど・・・。
ヨシダ:(笑)。
紗倉:私の表情以外がキレイに撮れてたから、無理にいい写真であるように説明してるんじゃないのかなぁ?って疑心暗鬼になっちゃいました(笑)。だから、ナギさんのようにセレクトしてもらえると嬉しいですよね。
ヨシダ:私も人に撮られたときに、「これあなたの技術優先でセレクトしたでしょ?」っていうような写真を使われるの本当に嫌なんですよ!それが世に出回っちゃうわけじゃないですか。それに私が部族を撮るときは、「彼らのかっこよさを120%の力で世に伝えたい」と思っているので。だから私はモデルの表情を最優先します。
紗倉:素晴らしいです!そいえば、民族の人から「写りが納得いかない!」みたいな写真のNGとか出たりするんですか?
ヨシダ:彼らは普段写真を撮られることに慣れていないし、そういう写真を見せられることもそうないんですよね。なおかつ、自分たちのことを常にかっこいいと思っているので、NGとか出ないんですよ。
紗倉:へ~!
ヨシダ:町の人は自撮りとかしてるんで、「この角度は嫌」とかNGが出ることもあるんですけどね。なのである意味、部族の人には写真の見せ甲斐があまりないっていうか。ピンとずれてても「俺超かっこいい!」だから(笑)。
紗倉:(笑)。気持ちのいい反応ですね。
ヨシダ:みんな自分たちの部族が1番だし、その中でも俺はかなりかっこいいって誰もがが思ってるんですよ。
紗倉:やっぱり気持ちいい(笑)。自分のことを大切にできるから、部族を大切にできるのかもしれないですね。ナギさんの写真は、構図とか演出も大切にされてますよね。そこにはどういったポリシーがあるんですか?
ヨシダ:最初ポートレートを撮っていたときは、「アフリカ=危ない」というイメージを変えたくて撮っていたんですが、アフリカ人に興味がない人はそもそも検索しないから写真にたどり着いてもらえなかったんですよね。そこで、“まったく興味がない人にどうしたら目にとめてもらえるだろう?”って考えたときに「作品撮り」という方法に行きついたんです。非現実的なかっこいい写真が撮れれば、興味がない人の目にもとまるんじゃないかと。
紗倉:そこから、「ヒーロー」を連想させるような構図が誕生したわけですね!
ヨシダ:そうですね。幼少期の、マサイ族は私のヒーローだったという原点に返って。好きな「ヒーロー」を選んでもらうような感覚で見てもらえたらなと思っています。

■◆マサイ族は憧れ。恋愛対象にはならない

紗倉:ナギさんはいろんな民族の方に会ってきたかと思うんですが、恋に落ちちゃったこととかないんですか?
ヨシダ:そういうのはないですね。私の中で彼らは“実在するけど手の届かないかっこいい人”でいてほしくって。
紗倉:ハリウッドスター的な?
ヨシダ:そうそう!それで、その人たちを演出して世に売り出すのが私のポジションだと思っているので。
紗倉:そもそもの恋愛対象ではないわけですね。
ヨシダ:それに、付き合うと「違う」って思うのが目に見えてる部分もあるので(笑)。だから、彼らのいいところだけを抽出したいと思っているんですよね。スターとしての扱いに徹するようにしています。
紗倉:じゃあそこは完全に徹底してるんですね!
ヨシダ:そうですね。でも、日本で生まれ育ったマサイ族がいたらわかんないかな(笑)。日本人の扱いがうまくて、なおかつアフリカ人のいいところが残っていて、日本人の細かい言葉のニュアンスを理解できるんだったら、転ぶ可能性もあるかも。
紗倉:ははは(笑)。いいとこ取りですね。

■◆ネガティブなイメージがあるのは仕方ないこと。でも決めつけはよくない

紗倉:アフリカ=貧困というイメージを変えたいというお話が出ていましたが、日本では正直なところ、そういうイメージを持っている人が多いのではないかなと思います。そのことについてはどう感じますか?

ヨシダ:日本だけではなくて、世界中どこ行っても「アフリカ=ネガティブ」なイメージを持っている人が多いというのは、仕方がないことだとは思うんですよね。でも例えば、日本に来たことない人に「日本人って四六時中働いててつまらない奴らだよね」って言われたら悔しいじゃないですか。
紗倉:来たこともないのにって、腹が立ちますよね。
ヨシダ:アフリカに関しても、それと同じことなんです。もっと物事をフラットに見られる人が増えたらいいのになって思いますね。紗倉さんは、職業に関して偏見を持たれることってあったりするんですか?
紗倉:正直ありますよ。AV業界に入った当時は、露骨に否定されたり批判されたりすると、ただただ悔しくて。
ヨシダ:一面しか見てないのに、全てわかったような顔する人はどこにもいますよね。
紗倉:そうなんですよね・・・。最初の頃はうまく処理しきれていなかったんですけど、仕事を続けていくにつれて「こういうところが偏見をもたれる部分なんだな」っていうのも、自分なりにわかってきて、ネガティブな意見もだいぶ咀嚼できるようになりました。そういう偏見があるのも致し方ないのかなって。完全に肯定はできませんが、多少は受け入れられるようになったかもしれないですね。

■◆対談を終えて

紗倉:ナギさんはテレビで拝見していたイメージと全然変わらなくて!なんか話していると心が浄化されていく感じがしました(笑)。ちなみに、写真以外で今後やっていきたいことってあったりしますか?
ヨシダ:何もしないでも生きたいです。
紗倉:やっぱりステキ(笑)。

ヨシダ:「生きてればいいんだよ」ぐらいのノリで生きていけたらいいなって。死ぬまでにそこに到達したいですね。
紗倉:ある意味人としての生き方の頂点みたいな感じですよね。そういう生き方ができたら「生をまっとうした」って思えそう。
ヨシダ:いろんなことにチャレンジしたいと思えたらいいんですけど。受け身の人生だったのでこれがやりたいってことが本当にないんですよ。今一番の目標と言えば、重たいカメラを持たないで済むようにすることですね。
紗倉:いかに楽に、ってところですね(笑)。お話をうかがった限り、ナギさんはカメラマンと言う職業に対する固執もなさそうですよね。
ヨシダ:カメラマンという肩書が無くなっても、少数民族に会いに行くっていうのは変わらないでしょうね。
紗倉:ナギさんと一緒にいたらいい意味で性格変わりそうですよね。闇から解放されそうです(笑)。
ヨシダ:ダメ人間が増えそうな気がする(笑)。紗倉さんは今後の目標とかあるんですか?
紗倉:ナギさんの話を聞いていたら、私もそうなりたいって思えてきました(笑)。ただのんびり時間が過ぎても幸せだなって思えるだなんて最高ですよね。そんなナギさんのスタンスを私も真似してみたいと思いました!
ヨシダ:それはそれは(笑)。ありがとうございました。
(握手)
紗倉:わー!マイナスイオンが流れ込んできたみたい!!本日はありがとうございました!

(石部千晶:六識/ライター)(渡邊明音/撮影)(KANAKO/紗倉まなヘアメイク)(ハウコレ編集部)

の記事をもっとみる