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まるでイギリスの港町の倉庫。さまざまな人が憩う空間をつくる「PORTMANS CAFE」【街とお店のおいしいはなし。#3】

  • 2017.11.11

今でこそ「アートの街」「コーヒーの街」と呼ばれ観光でにぎわう清澄白河。この街にまだ色のついてない6年前から、地元の人たちに愛されてきたカフェがあります。

今日は、わたしの住む街・清澄白河にある『PORTMANS CAFE(ポートマンズカフェ)』を紹介します。地域のトークイベントで、この店のマネージャーである芦田幸代さんのお話を聴いてから、なぜこの場所でカフェを開店したのか気になっていました。今回は芦田さんに、カフェと街の昔と今をくわしく伺います。

カフェの主役は空間そのもの。築30年のビルをDIY

「結婚後カフェを始めることは、決めていました。お店をつくるなら、色のついていない街がいい。これもふたりで決めていたんです」

2011年、旦那様である水上義近さんとふたりで起ちあげたポートマンズカフェ。当時の清澄白河には現在のようなコーヒーショップや雑貨店は少なく、人どおりもまばらでした。

「当時の清澄白河は大きな公園と隅田川があってすごく拓けた自然が身近にあるところが魅力でした。この建物は通りを歩いているときたまたまみつけて、ひとめぼれ。でもまさかこんなに手のかかる物件とは思いもしませんでした(笑)」

というのも、築30年のビルの一角を半年かけてセルフリノベーション。イギリスの港町の倉庫をイメージしたおしゃれな空間は、デザイナーを本職とされているご主人のディレクション。家具や雑貨の調達はもちろん、壁から床まで知人の助けを借りながらほとんどふたりで改築・準備したんだそう。

「ポートマンズカフェの主役はわたしたちではなくこの空間。お店そのものが顔であり、主役なんです。じっくり見ていただくと、アンティーク以外にもおかしなものがたくさんあって、まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなおもしろさに気づかれるとおもいます」

体を考えてつくった新商品を喜んでもらうおもしろさ

そんな芦田さんのご担当はメニューづくり。ポートマンズカフェにはカレーなどの食事メニューのほか、コーヒーや紅茶、イギリスの定番菓子・スコーンもあります。

「イギリスといったらやっぱりスコーン。簡単な気持ちでつくりはじめたら、これがすごく奥深くて。これは全粒粉のプレーンスコーンなんですけど、材料はとってもシンプル。だからこそ材料の扱いひとつひとつにも気を使うんです」

「メニューは誰かに師事するわけではなく、自分でいろんなレシピを見て調べてアレンジを加えてつくっていきました。お菓子をつくるのが好きというよりも新しいものを開発するのが好きなんです」

カフェをはじめる以前から飲食のお仕事をされていたのかと思いきや、芦田さんの前職は、なんと化粧品開発。

「近所にある学校からイギリス出身の先生がいらしてスコーンを食べたとき、田舎のスコーンを思い出しました、と言ってくださったときはホッとしました(笑)やっぱり新しいメニューをおいしいと言ってもらえる瞬間は、開発した化粧品が売れるのと同じ喜びがあります。お客さまの美しさをつくる・体をつくるものという意味では化粧品も飲食も同じ。共通するおもしろさがあるんです」

少しずつ気づかいあえば、心地よい場所ができあがる

2015年春から、芦田さんはかっさを使った女性限定のリラクゼーションサロン「tRim(トリム)」も営んでいます。ふたつのお店には共通するやりがいがあるんだそう。

「どちらにも共通しているのは、子どもを連れて行きづらいなというママさんたちにとって気がねなく来てもらえる場所づくり。わたしが2児の母であること、街に住むファミリー層が増えたことが、やはり大きいですね」

子連れNGの飲食店が増えているなか、ポートマンズカフェは広々としたソファ席やベビーチェアもあり、子連れのママさんたちからも熱く支持されています。同じように全面禁煙が増えているなか、分煙をうまく取り入れているので男性客も多いのが特徴です。

「特定の人たちを拒むというのは、ポートマンズカフェとしてはやりたくなくて。お客さんに応じて、個室や喫煙スペースを臨機応変にご案内しています。電車や公園のようにお互いに気をつかって共存できれば、きっとみんながここでの時間を楽しめると思うんです」

カフェに訪れる人も楽しみ方も千差万別。厳しいルールをつくるのではなく、気づかいあえる空間をつくることで、みんなにとって心地よい場所になるのかもしれません。

清澄白河の港のような存在であり続けるために

最後に、清澄白河の魅力についてお伺いしました。

「清澄白河はお花屋さんでも食堂でも、店主が現場に立っているケースが多いですよね。お店をどんどん大きくするぞというより、自分たちのお店を大切に守り続けるんだ、という意志が強いから、自分たちのペースで続けるのが上手だと思うんです。カフェも始めるより続けることが大変だって最近つくづく思います」

自分のお店を守り続けることを意識しているから、ひとつひとつのお店の個性がたって、街全体がいきいきとしてくる。それはもしかすると他の街にはない、清澄白河ならではの魅力かも。街の変化についても、お伺いしました。

「最近の変化でいうと街全体が盛り上がってきて、イベントも増えてきましたよね。お店同士のつながりもどんどん増えてきて。うちでは近所のお豆腐屋さんからおからを仕入れたり、コーヒー店さんに焙煎した豆をもらったりしています。この冬は清澄白河のイラストレーターさんとコラボしたアートワークというワークショップをやる予定です。これからもなるべく地域の人たちとのつながりを大切にしながら、カフェにとどまらない取り組みをできたらいいなと考えています」

アートにコーヒー。街に色のつく前から街にあるカフェだからこそ、何かに染まったり大きく変化することはなく、いろいろな人やスタイルを受け入れられる。イギリスの港町を思わせるポートマンズカフェは、清澄白河の人たちにとっても港のような存在なのかもしれません。

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