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大学までエスカレーター! セレブ私立中学校に通う子どもの見守り方

  • 2015.1.7
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【ママからのご相談】

40代の主婦です。昨春、長男が志望していた首都圏のある私立大学の附属中学校の入試に合格し、男子校生活をはじめました。最初のうちは、公立中学校にはないラグビー部に入るなどしてやる気をみせていたのですが、体が小さい息子にとってはラグビーの練習はきつ過ぎたらしく、夏休み後に退部しました。それからは特に何の部活もすることなく、ただ漫然とその日その日を過ごしているように見え、友だちも少ない気がします。

夫はシステムエンジニアですが、IT企業の社長さんや国会議員、お医者さん、弁護士さんといった父親をもつ同級生が多いことも、今ひとつ学校になじめていない原因でしょうか。大学までつながっている私立中学校時代を有意義に過ごすには、保護者としてどうサポートしてやったらいいか、教えてください。

●A. セレブリティーの子どもにはない持ち味を発揮できるよう見守ってください。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

私が中学生だった1970年代前半、日本の社会には今のような格差がありませんでした。極端に裕福な人もいなければ、極端に貧しい人も少なく、人はみな“努力”をすることによって等しく“幸福”になれると素直に信じることができた時代でした。

息子さんが通っているような私立の中学校も、医師や弁護士、国会議員やキャリア官僚の子どもばかりでなく、町工場経営者の子もいれば、町の小売商店の家の子もいて、クラスの半分は中産階級の家の子どもたちだったのです。

ところが、今は違います。ご相談者さまが指摘される通り、こういった私立中学校の生徒の大半は、いわゆる“セレブリティ-”の子どもか、そこまでいかなくても、グローバルエリートの子どもである場合が多いのは事実です。したがって、彼らにはない息子さんの持ち味を発揮できるように見守ってやることは、保護者の責任でもあるといえるでしょう。

以下の記述は、自身が私立大学の附属中・高等学校出身で、近畿地方のある芸術大学にて現代芸術論と現代思想の教授を務める、学術博士に聞いたお話に基づいて、すすめさせていただきます。

●親と同じ道もいいが、自分の好きな道をとことん進むのも悪くはない

『私大附属中に通う子どもたちに多くみられる共通点に、職業を世襲のものと考える傾向があります。わが国の国会議員の世界はもとより、医者の世界、古典芸能を含む芸能界、スポーツ産業の世界、クラシック音楽の世界、老舗の和菓子メーカー、和食をはじめとする老舗飲食店の世界などに特に顕著にみられる傾向です。遺伝学的に“持って生まれた”才能や、すでに整っている恵まれた練習環境のことを考えれば、この傾向は理にかなった、効率的な考え方ではあります。

私が中学に入った1970年代の初頭には、すでに傾向としてはこの考え方が私大附属中にはありました。そんな中、同じクラスに、四六時中“乗り物の絵”を描いている同級生がいました。勉強もせず、部活もせず、寝ても覚めても兎にも角にも“乗り物の絵”を描いていました。ただただ“乗り物の絵”を描くことが好きだったのです。

彼の家は、小さなアルバム工場でした。勉強をしなかったので成績はいつも“下の下”でしたが、彼は大学の美術学科を卒業した後、それまでに描き溜めたスケッチを持って単身イタリアに渡り、世界的なカーデザイナー・工業デザイナーになりました。イタリアのミラノ市内を走るトラム(路面電車)の車輌もデザインしています。

ご相談者さまが心がけるべきことは、息子さんにとっての“乗り物の絵”が何なのかを、息子さんが今の恵まれた中学校生活の中で見つけられるように、見守ってやるということに尽きるのではないでしょうか』(50代男性/芸術大学教授・学術博士)

●“もう今後は受験をしなくていい立場”を活用しない手はありません

お母さまの目からは、「日々を漫然と過ごしている」と見えるかもしれませんが、逆の言い方をすれば、今通う学校に合格するような息子さんであれば、学校に休まず通って普通に授業を受けてさえいれば、世間並み以上の学力とすぐに実社会で通用するマナーが身につきます。

それだけで、将来“生きていく”ことは、大丈夫です。そうであるのなら、せっかく手に入れた“もう今後は受験をしなくていい立場”を活用しない手はありません。

●“継がなければならないもの”という重荷がないことのメリット

“もう受験をしなくていい”という点の他に、息子さんにはもうひとつ恵まれている点があります。それは、親が医者の友だちや国会議員の友だちと違って、息子さんの場合、“親の跡を継がなければならない”というプレッシャーを感じないでいいという点です。

『中学時代、同級生の中には、特に医者になりたいという強い思いがあるわけでもないのに、医者になることが天命であるかのような親からのプレッシャーを受けて生きている子がかなりいました。

また、これはあまり思い出したくない悲しい思い出ですが、繊細で優し過ぎる性格なのに、親の地盤を継いで国政選挙に出て当選し、国会議員になったものの、プレッシャーに押しつぶされるかたちで自ら命を絶ってしまった友人もいます』(50代男性/前出・学術博士)

●やりたいことが見つかったときにはもう大丈夫。普通の日常を大切に

お母さまがそこまでご心配なさらなくても、息子さんはいずれ自分がやりたい何かを見つけます。それが見つかれば見違えるような行動力を発揮するようになり、気がついたら親には登れないような高い山を登っていることでしょう。そうやって、子どもは親を超えていきます。

日々の暮らしの中で出会う事象の何に強く惹かれるかによって、研究者になるかもしれませんし、ミュージシャンになるかもしれません。もしくは、社会起業家になるかもしれませんし、もしかしたら、お父さまと同じシステムエンジニアになるかもしれません。

『あえて一つだけリクエストするならば、せっかく恵まれた環境で質の高い教育を受けることができる息子さんには、この世界の中で相対的に“あまり恵まれていない”人たちの助けになるような仕事を、人生で一度でもやっていただけたならうれしいかな、ということです』(50代男性/前出・学術博士)

ウェットな関係である必要はありません。そこそこに家族の会話がある普通の平穏な日常そのものを大切にして、これからも息子さんを見守りつづけてください。

(ライタープロフィール)

鈴木かつよし(エッセイスト)/慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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