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浅草で74年、地元に愛されるパン屋『ペリカン』|by PARISmag

  • 2017.10.10

毎日の暮らしのなかで少しだけ心が弾むような豊かさをお届けするWEBマガジンPARISmag(パリマグ)から、老舗のパン屋『ペリカン』をご紹介します。

浅草といえば、日本の歴史や文化を感じられる街。雷門をくぐり仲見世通りを歩くと下町らしさを感じることができます。観光地としても栄え、日本各地からも外国からのお客さんも多く訪れる場所です。

その浅草にお店を構えて74年以上の歴史があるパン屋『ペリカン』。食パンとロールパンの2種類だけを販売するパン屋さんです。74年間パンを焼き続ける理由とこだわりを教えていただきました。

ペリカンのはじまり

渡辺さんのひいおじいさんである初代店主が1942年頃、浅草で喫茶店・ミルクホールを営んでおり、それがパン屋「ペリカン」の前身になっています。

「当時の資料とか写真は残っていないので口伝で残っているだけなんですけど」と渡辺さんが教えてくれました。その後の戦争で焼け野原となった浅草や上野では、戦後、喫茶店やパン屋さんがものすごく多くなっていったそう。お店の数が増えてくると、パン屋さん同士で競い合いみたいになることも多く、2代目はそれが嫌だったのだそうです。

「2代目のおじいちゃんが『じゃあ、うちはちょっと業態を変えよう』と、惣菜パンや菓子パンとかを一切作らないことに決めたんです。その分食パンとかに力を入れて、いい材料を使うなりいい職人を使うなりで、レベルの高い食パンとかロールパンを作っていこうということになりました。それをホテルとか喫茶店、レストランに卸すことを中心にやっていくことで、他のパン屋さんとの住み分けができるからケンカもなくなるだろうと今のお店のかたちになりました」。

食パンとロールパン、2つのパンを焼き続ける難しさ

『ペリカン』のコンセプトは「ごはんのように食べられるパン」だと渡辺さんは言います。

「単体で食べてももちろんおいしいんですけど、うちのパンは他のものと一緒に食べることでよりおいしくなるっていうものを目指しています」。

2つのパンに絞って焼き続けるというのはとても難しいこと。「2代目がその決断をしたとき、当時の職人さんは驚いたというか不安だったでしょうね(笑)」と渡辺さん。現在も、その当時から働き続けている職人さんもいらっしゃるのだとか。

「名木さんという職人がいるのですが、高校卒業してすぐからうちで働きはじめて、もう40年以上になります。名木さんは本当に職人さんという感じで、子どもの頃はなんか怖いおじさんがいるなって思っていました。今こうやって一緒に働いていると、普通に話しやすくていい人だなと思います。子どもから見ると不思議でしたが、背中で語るという感じの方だったんだと思います」と渡辺さん。

大学卒業後、お店でパンの修行を始めた渡辺さんですが、最初は名木さんの言う「生地と会話する」ということが難しかったのだとか。毎日続けてきた今だからこそ、生地が今どういう状態なのかであるとか、名木さんに言われたことが理解できるようになったそう。

浅草という街でともに育ってきた

食パンとロールパン、渡辺さんおすすめの食べ方を教えてもらいました!

「基本的には好きに食べていただければと思うんですけど。僕はハムとバターですね。それから、トーストすることです。焼いた当日のものというよりは、1日たって水分が耳までしっかり行き渡ったものをちょっと焦げ目がつくつかないくらいまでしっかりトーストしていただいて、バターをのっけて食べるのがおいしいんじゃないかなと思いますね」と渡辺さん。

1日待ってからトーストして食べるということで、その瞬間までのわくわくや楽しみが大きく膨らみます。

ロールパンは、当日ならそのままでということで、食べてみると、しっとりふわふわ!きめ細やかでなめらかな食感で甘すぎないシンプルな味です。また、ホットドッグに合わせるとなんとも言えないおいしさになるそう!そのときは1日経ったものをトーストしてから具材を挟むのがおすすめだそうです。

また、『ペリカン』のパンを毎日ずっと食べ続けているという地元のお客さんが多く、味の変化に敏感だと言います。

「『最近パン固いね』、『何か変えた?』とか『おいしい』とか、パン屋をやっていると、自分の作ったものへのフィードバックがすぐ返ってくるというのがうれしいことでもあります。ちゃんと毎日パン評価してもらえているんだなと、これからもがんばろうってすごくやりがいに繋がります」と渡辺さん。

最後に浅草という街は渡辺さんにとってどんな場所なのか伺いました。

「やっぱり特殊な場所だなとは思いますね。常に人で賑わっていて楽しい街だなって、うるさいなって思うときもありますけど(笑)。三社祭とか大きなイベントもありますし、日本の中でも屈指の観光地なので、そこで商売させていただけるのはすごくありがたいことだなと思います。なんとなく浅草のイメージがうちのお店のイメージともうまい具合に合っているのでその辺もとても良くて、浅草の街にはすごく感謝しています。人間的なことを言ったら、とてもあったかいです」。

渡辺さんにお話を伺う中で、浅草の大きなお祭り三社祭は地元の町内会の人たちで作り上げられているということを知りました。浅草は地元の人たちの心意気や繋がりがあってこそ続いてきた街なんですね。その浅草の歴史をともに歩んできた『ペリカン』のパンは、気取らずにどんな人も受け入れてくれるようなあたたかさが感じられました。

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