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サラリーマンの方がいい? 家業を継いだ自営業の夫の将来性とは

  • 2015.1.6
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【ママからのご相談】

30代の主婦。小5と小3の娘がいます。1年前に姑が脳梗塞で倒れてそのまま他界したのを契機に、夫は勤めていた銀行を辞めて姑が長年営んできた商店(菓子パン、牛乳、ジュース類、団子、ノート、ボールペン、折り紙、工具などを置く、いわゆる“よろず屋”)を継ぎました。今は店の2階にタダで住んでいます。

昭和にタイムスリップしたかのような時代遅れの店ですが、すぐ近くの巨大団地に住むお年寄りが買いに来てくださるので不思議と赤字ではありません。ただ収入の絶対額は銀行員時代よりずっと減ってしまい、これからかかってくる子どもたちの教育費のことを考えると、不安です。私から商売替えや、再びサラリーマンとして就職することをすすめるべきでしょうか? 夫本人は、毎日とても幸せそうにお店に立っているのですが。

●A. 自営業で赤字でないとはすごいことです。今のご商売はやめない方が賢明です。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

今のわが国で、あなたの旦那さまのように自営業を営んでいて赤字を出していないというのはとてもすごいことです。おそらく、お店の品ぞろえが周辺にお住まいの高齢者の方々のニーズを的確に捉えていることと、お姑さん譲りのあなたの旦那さまの人柄のなせる業かと思います。将来にそなえて別の事業も始めておくにせよ、ご本業の“よろず屋”さんは、今はやめない方が賢明です。

以下の記述は、博士(工学)で『中小企業の経営システム工学』を専門とする首都圏の某大学大学院の教授に伺った話しに基づいて、すすめさせていただきます。

●廃業となるとお店を担保に借りてきた運転資金の残高の返済を迫られることもある

1年前に旦那さまが銀行員を辞めて家業を継ぐ決心をなさったのには、第一に、“銀行員よりも自分に向いている”というご自覚があったからだと思います。ただ、それとは別に、お店を畳んでしまうとなると発生する困った問題の存在も考えられます。

『長年やってこられたお店となれば、お店の維持のためにかかる修繕費や設備の更新費用、仕入資金をはじめとする、もろもろの運転資金が必要だったはずです。おそらくはお店を担保にし、姑さんや旦那さまが連帯保証人となって地元の銀行や信用金庫からの借り入れで調達されていたことでしょう。

お姑さんが亡くなられてわずか1年ということであれば借入金の残高がけっこう残っていることが考えられます。旦那さまが連帯保証人になっていればその債務は引き継がなければなりません。お店を畳むとなれば銀行は全額一括返済も要求してくるでしょう。銀行員だった旦那さまには、そのへんの読みもあったかもしれません』(50代男性/首都圏某大学大学院教授・博士)

●近くの巨大団地の老朽化による建て直しに備え、旦那さま独自の商売も考えましょう

将来に向けて気がかりな点がひとつあるとすれば、お店の売上の大半が、近くにある巨大団地に住む高齢者のお客さんに依存している点です。団地の老朽化にともなって建て直しなどという事態になれば、お店の売上が一瞬にしてゼロに近い状態になってしまうことも考えられます。

『したがって旦那さまは、将来のリスク回避策として、“近所から徒歩で買いにくるのではなくわざわざ電車に乗って買いにくるお客さん”という新たな顧客層を育てておく必要があります。その場合、今のご本業との相乗効果が期待できるものがベターです。

あなたは旦那さまに“商売替え”をすすめるのではなく、“新規事業分野”の提案をするべきなのです。お姑さんの代からその地域で育っている旦那さまであれば、その地域にしかない“何か”の存在を知っているはずです。それを遠方の顧客に買いに来てもらったり、ネット通販で送ってあげたりしたらいかがでしょうか』(前出大学院教授・博士)

●年齢的に雇ってもらいにくくなっている25年後も、ご夫妻で働けている楽しさ

内閣府のデータによれば、今から25年後の2040年、わが国の平均寿命は女性が89.55歳、男性は82.82歳です。そのころ、あなた方ご夫妻は60代半ばにさしかかっており、まだまだ元気であるにもかかわらず企業からは年齢的な理由で雇ってもらいにくい状況になっています。にもかかわらず、そこからさらに四半世紀、生きなければなりません。

「再びサラリーマンに」などと考えずに、今から“商売のスペシャリスト”としての腕を磨くよう、すすめられてはいかがでしょうか。

子どもさんたちの教育資金の調達にはいくらでも方法がありますが、旦那さまが持ってらっしゃるような“商才”は、そう簡単には手に入りません。

(ライタープロフィール)

鈴木かつよし(エッセイスト)/慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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