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プレミアムエブリデイ 小田明志コラム#5

  • 2017.8.31
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JJ圏外から一言!#5

今日コンビニに入れば、通常のものよりも数十円割高な「プレミアム」を謳う商品を簡単に見つけることができる。「プレミアムモルツ」「ヘパリーゼWプレミアム」「ハイチュウPREMIUM」、「三次元プレミアムマスク」「プレミアムうまい棒」などなど、まさに「プレミアム」という言葉の大安売りと言ってもいい状態だ。つい最近まで、20〜50円程度の値上げで「プレミアム」を名乗るなんて大げさだと感じていたけれど、それでも一応、値上げ分の品質や希少価値があるとされているだけいいのかもしれない。 

経済産業省による主導で今年の2月24日にはじまった「プレミアムフライデー」は、結局なにが「プレミアム」なのか分からなかった人が大多数だったはずだ。月末の金曜日の退社時刻を午後3時に繰り上げることで、ショッピングや外食、観光の時間を生み出し、個人消費を促すという狙いで導入されたこの試みだったが、株式会社インテージによる2235名を対象にした調査の結果によると、実際に「早く帰った」という回答は全体の3・7%にとどまったという。仕事最優先ではなく、十分に休暇をとって、女性は結婚や出産を考え、男も育児を手伝い(そして、外食や観光にお金を使い)、より人間らしい生活を送る、というワーク・ライフ・バランスのとれた生活こそ政府の考える理想の国民生活、ということになってはいるが、ほとんどの国民にそんな余裕はない、というのが現実なのだろう。

その余裕のなさは、仕事と生活を切り分けて考える、という行為そのものの不自然さにも原因があるのではないだろうか。なぜなら、仕事は人間の営みの一部であり無理に生活と切り離して考えることはできないものだからだ。「プレミアム」な生活は、仕事が充実してはじめて送れるし、楽しめない仕事をさっさと切り上げて飲みに行く、という生活を「プレミアム」と呼ぶのは、もっと歳をとってからでもいい、と僕は思う。

大人になったら放課後のスタートも自分で決めなきゃいけない。

問題は、仕事と生活のバランスなのではなくて、ひとりひとりに理想の働き方のイメージがないというところにあるのだろう。就業者のうち89% が企業に雇用されているサラリーマンである日本では、朝から夜まで働いてお給料をもらうという形が唯一まっとうな働き方のように錯覚しがちだが、本来働き方というのは自由で、その自由と責任のバランスこそ大人の楽しみであり、特権だ。働く会社は1社に決めなくてもいいし、会社で働きながら違う仕事をしたっていいのだ。

もちろん、楽しめない仕事でも、そこそこ働いてそこそこ遊べるならOKという考え方もいいと思うけれど、どの程度のつまらなさなら我慢できるのか、そこそこの仕事とは何円もらえるものなのか、というイメージを具体的に持っている人は少ないし、イメージがないからこそ、つまらない仕事に「そこそこ」の範疇を超えて取り組んで、消耗してしまう。学校だったら、1時間目から6時間目まで我慢して座っておけば放課後が自然と来たけれど、大人になったら放課後のスタートも自分で決めなきゃいけない。終電をチャイム代わりに使っているようでは、小学生となんら変わりがないのだ。

僕は、せっかく大人になったのだから、授業なんて出ないで、本気で遊べる放課後みたいな毎日を過ごしたいと思う。そのためには、やっぱり好きなことを仕事にするか、自分の仕事を好きになるしかないけれど、それは1時間目から6時間目まで我慢して座り続けることより、ずっと大変なことなのかもしれない。

 

おだ・あかし 1991年生まれ、25歳。東京都出身。編集者。高校在学中、17歳の時にカルチャー雑誌『LIKTEN』を創刊。一躍話題を集める。2016年11月には、発行人兼編集長を務める、サッカー選手のでないサッカーマガジン、『OFF THE BALL 02』を発表。Illustration/小田明志

 

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