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永遠の憧れ、フレンチ・マリンなイメージ Best 5。

  • 2017.8.4

1972年、ボーダーのベビーウェアを纏った1歳のシャルロットとジェーン。 Photo: Getty Images
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気がつくと、夏ごとにボーダーシャツがクローゼットに増えていきます。青い海と青い空、コートダジュールな気分のフレンチ・マリンのイメージは私たちのファッションの永遠の定番として愛されています。残された2017年の夏を満喫するために、その不変の魅力にあらためて注目しつつ、フレンチ・マリンなイメージ Best 5を挙げてみました。

1. ジェーン&シャルロット母娘のマリンな遺伝子。

フレンチシックの代表ともみなされるジェーン・バーキンは実は英国人。それだからこそなのか、フレンチ・マリンなイメージをコーディネートに積極的に取り入れていました。ボーダーシャツにデニムに籠バッグといった自身の着こなしだけでなく、生まれたばかりのシャルロットにもボーダーのベビー服を着せた海辺のカットも印象的。

そんなフレンチ・マリンなDNAを受け継いだシャルロットが10代のときに主演した『なまいきシャルロット』(85)では、オーバーサイズのボーダーシャツにデニム姿で自身の投影のような思春期の主人公「シャルロット」として初々しく登場。フレンチシック・ファンの日本人女子の心を一気に熱くさせたのでした。

この作品で着用されたシャツは、フランスのリヨンで生まれたORCIVAL(オーシバル)というブランド。50〜60年代にはフランス海軍でそのマリンTシャツが制服として採用されていたそう。特徴は、ラッセル編みというたくさんの糸を使って複雑に編む手法で、今やフランスに数台しかない希少な機械を用いる丈夫な生地にあります。白にロイヤルブルーのストライプが原型。

ちなみに、映画の監督はクロード・ミレール(助監督や制作主任としてゴダールやトリュフォー作品にかかわる)、シャルロットを見守る大人たちにベルナデット・ラフォン(トリュフォーの初短編『あこがれ』に主演)とジャン=クロード・ブリアリ(ヌーヴェルヴァーグの監督たちに愛され多数出演)が登場し、「ヌーヴェルヴァーグ」へのオマージュにあふれた作品の空気感も大変ステキでした。

2. ゴダール映画のマリン・ルック。

もしかしたら日本人の「フレンチ・マリン好き」はジャン=リュック・ゴダール映画の影響が大きかったのかもしれません。『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』『女は女である』『軽蔑』『男の子はみなパトリックという名である』。60年代のゴダール作品には必ずといっていいほどマリン・スタイルの女性たちが登場します。「なぜなのか・・」。確たる理由は定かではありませんが、それまでの映画と違い、ゴダールは女優の衣装を庶民的な市販の店で自ら調達していたらしいので、「普段着」「カジュアル」「匿名性」のような効果を狙ったなかで選ばれた結果なのかもしれません。それと、彼自身もボーダーシャツを着た写真が残っているところを見ると、単に好みだったのかも・・。

また、映像の中で「赤」を印象的に使うことが多いので、トリコロールな配色とグラフィック感がそれに効果的だったのか・・。ま、とにかく理屈抜きに女性たちが皆「おしゃれで」「かわいい」ので永遠のイメージとして皆の心に刻まれたのは確かです。代表はなんといってもアンナ・カリーナ! レッドボーダー柄のサマーワンピース、セイラーハットのトリコロールなパンツルック、セーラーカラーの愛らしい踊り子スタイル。男を誘惑したり、裏切ったり、甘えたり、大人だったり、子供だったり、ころころと可憐に変化する女性の魅力をマリン・ルックが軽やかに彩っていました。

3. アーティストはマリンがお好き。

フランスと関係の深いアーティストには、どうもマリン・ルック好きが多いよう。ゴダールには触れましたが、ピカソのボーダーTシャツ姿は誰でもが知るところ。もともと水夫やセーラーの制服だったボーダーシャツが、リゾートに集まるセレブの間で着られるようになったのが今のブームの原点だったので、南仏にアトリエや別荘のあるアーティストたちが好んだのもうなずけます。

ピエールとジルは「Sailors & Sea」をテーマにまとめた本もあるほどのマリン・マニア。“美少年たち”が登場する作品にも多用されますが、自分たちも一貫してボーダーシャツを愛用しています。同じくボーダー好きのフレンチデザイナー、ジャン=ポール・ゴルチエも彼らの被写体になっています。「水兵さん」の格好は、フランス人の子供たちにとっては定番の“おめかし”のようで、大人になってもそのかわいい「コスプレ」気分は、永遠に甘いファンタジーを持つのかもしれません。

4. フレンチブランドの進化する定番ボーダーシャツ。

今でこそ本場フレンチブランドのボーダーシャツはバリエーションも豊富に手に入るようになりましたが、それも80年代以降のこと。それ以前は、写真や外国映画で見るようなボーダーシャツを探そうとしても皆無で、撮影用のシャツを手作りした、というエピソードを先輩エディターから聞いたことがあります。

まず、本格定番ボーダーシャツの店として80年代に上陸し、話題を呼んだのがセント ジェームスでした。昔からイギリスとの交易が盛んだったノルマンディ地方のセントジェームス市が誕生の地。船乗り用のニットから始まり、コットンボーダーシャツを制作。漁師やヨットマンが着ていた織り目の詰まった長袖シャツを原型とする「ウェッソン」は定番中の定番で、私も上陸直後に買ったのを覚えています。毎シーズン新色が登場しているそう。

19世紀に創業したカットソーブランドのプチバトーもボーダーシャツが人気の定番アイテム。秋の新作はAラインのプルオーバースタイルで、着こなしの幅が広がるモードなデザインになっています。

80年代にスタートしたフレンチ・カジュアルブランド、A.P.C.も毎年、ボーダー・アイテムを発表し続けています。A.P.C.のアイコン的な細いピッチのボーダーは、カジュアルすぎず大人っぽいコーディネートにも合わせやすいのが魅力です。私はこれの7分袖のクルーネックシャツを愛用しています。

5. シャネルが愛したマリンのイメージ。

6月の終わりに、ニースにあるココ・シャネルが建てた別荘「La Pausa」を訪れました。シャネルの新作ハイジュエリーの発表会に参加するためです。今回のコレクション「Flying Cloud」は、彼女の恋人であった第二代ウェストミンスター公爵が所有していた船の名前で、ココ自身もこの船で航海し、コートダジュールの海を大いに楽しんだといいます。

シャネルのデザインにはセーラールックやマリンストライプが印象的に登場しますが、活動的なユニフォームと海を愛したココの生き方がその創作にも影響を与えたのは当然でしょう。最新のハイジュエリーにはマリンブルーのストライプや、船に使われるロープ、セーラー服のプレードやボタンなど、コートダジュールからのインスピレーションが溢れています。プレゼンテーションの参加者にギフトされたパイル地のビーチバッグとストライプを配した大判スカーフも、マリンな気分を大いに盛り上げてくれました。

CHANEL

参照元:VOGUE JAPAN

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