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アデュー、ジャンヌ・モロー......!

  • 2017.8.3
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こんにちは、編集KIMです。

月曜日の夜、パリに友人がたくさんいる友だちとレストランに向かう途中、「この人になんかあったのかな?」と、SNSの画面を見せられました。
ジャンヌ・モローの若かりし頃の映画のワンシーン、そしてふたつに割れた❤マーク並んでいたり。

とうとうフランスを代表する大女優が亡くなったのかあ……。
中には、キャロリーヌ・ドゥ・メグレの投稿もありました。

口角が下がっていても、いい女。

口角が下がっている顔立ちは、なかなかよいこととはされないものです。美容テーマも担当する私は、そういうところは意識しながら女性の顔を見ています。
でも、ジャンヌ・モローの表情の魅力は、まさにこの口角が下がっていること、だと思います。
一筋縄ではいかない女、気難しいムード、気の強さ。そういうニュアンスがたまらなくエロティックで、唯一無二の存在感を醸し出す。
特に、ちょっとだけ下からあおって彼女の表情をとらえ、口角が下がっていることをあえて強調したようなシーンが好きでした。
意志的なメランコリーというか、気だるさ。
映画好きにはよしとされない予定調和を、微妙なバランスで崩す、映画のアクセントのような存在感です。

『死刑台のエレベーター』
●監督・共同脚本/ルイ・マル ●出演/モーリス・ロネ、ジャンヌ・モロー ●1957年、フランス映画 ●92分 ●Blu-ray \5,184 発売・販売:アネック
Ⓒ1958 Nouvelles Editions de Films

フランス映画が語る男と女の不条理の中で、観客の集中力を増させ刺激するような女優でした。
『死刑台のエレベーター』(1957年)で、『突然炎のごとくで』(1962年)で、
ジャンヌ・モローの表情に打ちのめされたフランス映画ファンはたくさんいるはず。

『死刑台~』では、マイルス・デイヴィスの音楽も素晴らしいけれど、ストーリーのトラップとともに、モーリス・ロネとジャンヌ・モローという美しいキャストが、この映画をサスペンスの金字塔にしたのだと思います。
『突然~』は、女ひとり男ふたり、という三角関係の恋愛シチュエーションのザ・定番。ここから触発されて恋愛をテーマにしたドラマや映画作品が数多く作られました。
ローゲージのニットにキャスケット、ダボパンというボーイフレンド風のルックや、フランスらしいマリンボーダーも、女性たちの間でジャンヌ・モローがファッションアイコンになった理由のひとつ。
ただし、ファッションアイコンというありようにまったくこだわらずに、あくまで映画と演技に捧げた人に思えます。

『突然炎のごとく』
●監督・共同脚本/フランソワ・トリュフォー ●出演/ジャンヌ・モロー、オスカー・ウェルナー、アンリ・セール ●1961年、フランス映画 ●本編107分 ●DVD\5,184 発売・販売:KADOKAWA
Ⓒ1962 LES FILMS DU CARROSSE

日本で観られたジャンヌ・モローの最後の作品は、『クロワッサンで朝食を』(2012年)。ここではエストニア人の家政婦に冷たく接する、毒舌な老婦人を演じてました。
「パリのエストニア人」という原題を、『クロワッサンで朝食を』という邦題で公開したら、映画は大ヒット。

女優というのは、単に美しいとか、演技が上手、というだけでなく、ある種の絶対的な存在としての感慨を人々に残さなければいけないもの。
最後に、ジャンヌ・モローが、たくさんの観客の前でその存在感を示せて、ほんとうによかった!と思います。
89歳まで生きぬき、途中では自身でメガホンも握り、独特の美しさを持ちながらも、老いてもその姿をスクリーンで見せ続けたジャンヌ・モローが大好きです。

最後に、2003年11月5日号のフィガロジャポンに登場した、エディ・スリマンによるディオール オムのシャツやコートを纏ったジャンヌ・モローの姿をここで。
インタビューでは、「意地の悪い女、は私の役よ」と言っています。

これらは下目からあおったカットではないですが(!)

 

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