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「ディズニー/ピクサー」で働くママの理想と現実 映画『カーズ/クロスロード』Vol.2

  • 2017.7.15
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© 2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

『カーズ』(06)でアート部門マネージャーを務め、最新作『カーズ/クロスロード』では共同プロデューサーを務めたアンドレア・ウォーレンにインタビューしました。

『カーズ』シリーズはファミリー映画としても人気を博してきましたが、アンドレアも一男一女の母親であり、本作には「親目線からのメッセージ」がたくさん込められていると話します。

物語の主人公はトップレーサーとして活躍してきたスポーツカー、ライトニング・マックィーン。しかし、レース中にまさかの大クラッシュ事故を起こし、自信を喪失してしまいます。そんななか出会うのが、女の子なのにマックィーンに憧れ、レーサーを目指していたというクルーズ。

本作では、人生の岐路(クロスロード)を迎えたマックィーンの葛藤や挫折からの再生はもちろん、新しい相棒となるクルーズをとおして夢を追うことの大切さも描かれていきます。

■子育ての体験談が『カーズ』の物語に生きている!

プロデューサーであるアンドレアもブライアン・フィー監督もお子さんがいます。そんな二人がタッグを組んだとき、子育てで起きる体験、そして子どもへのストレートな想いが込められたといいます。

「子どもたちには、将来に向けて大きな夢を抱いてほしいし、何にでもなれるという自分の可能性を信じてほしい。私もブライアン・フィー監督にも子どもがいますが『子どもたちは自分たちの限界を定めてしまいがちだよね』という話になったことがあります。

たとえば監督がお嬢さんに『ギターをやってみない?』と提案したら、お嬢さんから『やらない。だって男子がやるものでしょ』と言われたそうです。彼女は頭の中で、女子はギターを弾かないと決めつけてしまっている。でも、クルーズの姿を見て、やりたいことがあれば、男女関係なくチャレンジするという心意気を持ってほしいと思いました。

自分の夢をあきらめてしまうことは確かにつらいこと。でも、恐れをのり超えて、自分の限界までやってみれば、きっとそこで何かが見えてくるのではないかしら」

アンドレアのお子さんはすでに本作を観て、とても喜んでくれたそう。「実際、親が直接子どもに何かを言うよりも、映画で同じことを言ってもらう方が伝わりやすいんです。子どもに『夢を追いなさい』と頭ごなしに言ってもダメ。そういうところを含め、子育ての体験が物語に反映されていると思います」

日本のアニメでは宮崎駿監督作が大好きで、なかでもいちばんのお気に入りが『となりのトトロ』(88)だとか。

「子どもと一緒に映画を観ることで、最高なのは子どもたちといっしょに学べることです。長女が小さいとき、ビーチで波をとても怖がっていたのです。でも私が、『トトロのように叫ぼうよ』と言って『わ~』と叫んだら、娘はその怖さを乗り越えることができたんです。それからは、何か怖いことがあると、トトロのように叫ぶようになりました(笑)」

■夢をあきらめない! いまも大切にしているものとは

『カーズ』では人生の岐路が描かれますが、アンドレアさんにとっても「人生での選択」というべき岐路はたくさんありました。

「私はピクサーで19年働いていますが、1つのプロジェクトから次のプロジェクトに移るときも岐路になります。もちろん、パートナーを選んだり、子どもを産んだりという選択もそうです。でも、もしかしたらいちばん大きかった岐路は、『クリエイティブな仕事がやりたい!』と決意して、カリフォルニアに出てきたことかもしれない」

アンドレアの地元サウスダコタ州は、映画業界とはかけ離れたアメリカ中部の農家が多い田舎町。彼女はクルーズのように意を決し、自分の夢を追いかけたわけです。

「いま思えば、当時は『やりたい!』という一心で動きました。引越した先には知り合いはほとんどいないし、やりたい仕事にも就けるわけでもなくて。でもあきらめず、少しでもつながりそうな方々の連絡先をアドレス帳に書いていきました。いまでもそのアドレス帳は大事にもっています。だって、当時の気持ちを忘れたくないから」

『カーズ』の主人公マックィーンも世間から見放され、自信喪失に。この挫折を終わりとするのか、始まりとするのか、どう立ち向かうべきかが描かれ、まさにアンドレアさんと物語もシンクロしていきます。

■家族に届ける作品を作る「ディズニー/ピクサー」が大事にすること

アンドレアは、大きな仕事を手がけ、はたから見るととても順風満帆の人生のようにみえます。しかしアンドレアにも、仕事を始め、結婚したあとは、仕事と家庭のバランスを取ることに悩んだ時期もあったと話します。

「私のような仕事の場合、制作が佳境になってくると、残業が増えていきます。ただ、「ディズニー/ピクサー」は家族を大事にする会社。だから、病院に行ったり、学芸会で子どもたちのお芝居を観たりする時間はみんながとても大切にしています。

なぜなら、私たちが作品を届けたいのは家族。だからこそ「ディズニー/ピクサー」は、家族の価値観をおざなりにはしません。仕事場が家族のために時間を取ることを許してくれる応援体制ができていることは、とてもありがたいです」

最後に日本でがんばる働くママにアドバイスをいただきました。

「私自身も初めての子育ては、とても悩みました。そのとき、サポートしてくれる人を複数見つけることが大事だと思ったんです。私の場合は、夫や遠く離れた親、子どもを送り迎えしてくれる人を頼って生活しています。

助けを借りること、『助けて』と言えること、そんな自分を受け入れてほしいと思います。じつはそこがとても難しいということは、私も実感しているんですが。

当時、私よりも先に子どもを授かった妹から『家をきれいに片付けるとか、時間どおりに全部こなすなんてことはできないからね』と言われました。あきらめるというと聞こえは悪いんですが、母親はまず『何でも完璧にしたい』という思いから解き放たれることが必要なのかなと。

また、家でも仕事場でも、その場にいるときは、ソコに集中するようにしています。家にいるときは仕事の電話をしない。子どもと過ごすときは『100%あなたたちのことを見ているよ』とメッセージを送りながら過ごします。

大切なことは、理想の半分くらいしかできていなくても、『自分はベストを尽くしているよね。これで足りているよね』と自分に言い聞かせることかしら」

『カーズ/クロスロード』
7月15日(土) 公開

© 2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

主人公の天才レーサー“マックィーン”。ベテラン・レーサーになりつつある彼に待ち受けていたのは、最新テクノロジーを限界まで追求した新たな世代の台頭と、レース人生を揺るがす衝撃的な大クラッシュだった…。「いったい自分はいつまで走り続けるのか?」──誰もが直面する人生の大きな壁や、思いがけない挫折、そしてその先に見えてくる新たな道。自らの運命を左右する“人生の決断”が迫られる。
『カーズ/クロスロード』公式ホームページ

(山崎伸子)

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