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【女の履歴書】Vol.6 ネイリスト・高野尚子−−「ネイルが、とにかく自信がなかった私を変えてくれた」

  • 2017.7.13
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高野尚子(ネイリスト、ネイルサロン「ネイディーン」代表取締役社長)

1973年東京都生まれ。大学卒業後、美容関連の商社に入社。営業職として順調にキャリアを積むも、手に職を付けたいと考え、エステティシャンに転職。並行してネイルスクールに通う中で、その魅力に魅了され、ネイリストに。2000年に世界的なネイルブランドOPIのスポンサードを受ける。2001年、独立し「Nadine NAILS」をオープン。同時にCM、雑誌など幅広いジャンルの仕事をこなす。2007年には恵比寿にネイルスクール「高野尚子 インテグレイティッドネイルカレッジ」を開校。2010年、オリジナルネイルブラシブランド「naoko takano」を発売。2012年、ディズニーキャラクターが登場するネイルブランド「T-GEL COLLOCTION」のクリエイティブディレクターに就任。2014年には日本人女性で初の「スワロフスキー認定ネイルインストラクター」、OPIジャパン認定エデュケーターに就任。

現在、最前線のリアルな美容情報を伝える美容賢者として、TV、ラジオ、講演、企業ビューティアドバイザーなど、ネイルサロン以外のフィールドでも幅広く活躍中。

コンプレックスの塊だった10代。ネイルに出会って、すべてが変わった。

Q.ファッションとリンクしたネイルアートの先駆者である高野さん。昔から美容に興味を持っていたのですか?

はい。高校時代からです。海に行く際は痩せるジェルを身体に塗って、その上からサランラップを巻いていたほど、“美”へのこだわりは持っていました(笑)。なのに部活を辞めてからすごい体重が増えてしまって、そのときは「かわいくなりたいのに、どうして私、太ってしまうんだろう?」と自己嫌悪に陥ったこともありました。そこからエステに通ったり必死にダイエットして、20キロくらい痩せました。

Q.あくまで趣味だった美容を仕事にしたのは、いつからですか?

大学卒業後、美容関係の商社に就職したときからです。そこから営業職として、美容関連の商品に携わるようになったんですが、私は事務職を希望していたので、内心は「腰掛けで就職しただけだし、もっと楽な仕事がいいのに!」と思っていました(笑)。でも、営業職もやってみると楽しくて、女性社員の代表として商品開発のメンバーに抜擢されるなど、とても順調にキャリアを積んでいきました。

Q.そこから、なぜネイリストに転身しようと?

入社して3年が過ぎた頃、ふと将来の不安に駆られ「手に職を付けるべきなんじゃないか?」と考えるようになったんです。そこからいろいろ調べて、自分の好きな“美容”を活かせる「エステティシャン」になるために転職し、ホテルのスパで働き出しました。

そのスパで「ネイルについて勉強しておいてくださいね」と言われたんです。それを機に、仕事と並行してネイルスクールに通い出しました。

実はネイルは高校生のときから大好きでした。ですが、それを職業にしなかったのは、自分の指にコンプレックスがあったからです。私の小指は、よく見ると曲がっているんです。親指の爪もぺったんこですし。だから「手先が美しくない自分はネイリストになる資格はない」と、ネイルを仕事にすることを勝手に諦めていたんです。

Q.そのコンプレックスを乗り越え、ネイリストになりました。

学校に通ってみると、スカルプチュアを上手に使うことで爪の形を整えられることを知ったんです。この技術を使えば同じ悩みを持つ人のコンプレックスも解消できると思いました。以来、どんどんネイルにはまってネイルサロンに転職。1年後には、8店舗の店長兼管理職になっていました。

Q.ネイルに出会って、いちばん変わったことは何ですか?

自分に自信を持てるようになったことですね。それ以前は「あなたに足りないものは?」とか「ほしいものは?」と聞かれると、必ず「自信」と答えるほど、とにかく自分に自信がありませんでした。

そんな私が初めて夢中になれたもの、それがネイルでした。ネイルを誰かに施してあげると、とっても喜ばれる。そこに自分自身も喜びを感じ、少しずつ自信を持てるようになったんです。

Q.その後、ネイリストとしてCM、雑誌などさまざまなジャンルで活躍されました。特に押し花を使ったネイルが転機になりましたよね。

はい。当時たまたま東急ハンズで見つけた押し花を、スカルプチュアの中に埋め込んでみたら、それがすごく大きな反響を呼んで、私個人にまで取材が来るようになったんです。

そこからは怒濤の日々でした。夜10時くらいまでネイルサロンで仕事して、そのあと翌日の撮影の打ち合わせをして、撮影用のネイルを仕込んで、朝6時くらいに就寝。そして数時間後にはまた出勤−−、その繰り返しでした。でも不思議と辛いとは思わなかったですね。毎日楽しかったですから。

Q.その後、28歳で独立しました。

自分だけのアトリエを作りたいと思ったのと、友人からの勧めもあって、独立を決意しました。そこから国民金融公庫に行き、すべての開業資金を自分で用意して、お店を開きました。

ただ、当時は経営のことも税金のことも何も知らないただの技術者でしたから、不安は大きかったですね。

Q.ネイルサロンの経営だけでなく、CMや雑誌、タレントさんのネイルなど、個人としての仕事もありました。当時はかなりお忙しかったのではないですか?

そうですね。オープンから何年かはお正月以外に休んだ記憶がないですね(苦笑)。それでも心が折れなかったのは、周囲の大きな支えがあったからです。ラグジュアリーブランドの広報をやっている友人や、スタイリストの友人が夜な夜な遊びに来てくれて、一緒にお酒を飲んで話し相手になってくれたことも気分転換になり、とても助かりました。相変わらず睡眠時間は少なかったですが、毎日とても楽しくて充実していました。

徐々に本の出版やトークショーなど、ネイル以外の仕事もさせてもらえるようになりました。振り返れば、がむしゃらに走ってきての“いま”という感覚ですね。

Q.多忙な日々を送る中、36歳で結婚。変わったことはありましたか?

主人はクリエイターであり、経営者でもあります。私にとって彼は、よき理解者であり人として尊敬できる男性。本当に「この人と結婚できてよかった」と心から思っています。

そんな主人だから、彼のためにできる限りのサポートをしてあげたいと思えるし、自分の仕事に対しても以前より高いモチベーションを持てています。過去には仕事と育児を両立しようとして、身体を壊したことや、辛かった時期もありました。それでも大切なものを守りたいという思いがパワーになって、現在があると感じています。

仕事ばかりしていた20代と比べると、周囲により感謝するようになりましたし、生活も朝型に変わりました。結婚・出産を経て、私自身さまざまな面で大きく変わったと思います。

Q.いま20代の方にメッセージを送るとしたら、何と伝えたいですか?

ネイルは自信のなかった私に「好きから生まれる自信」を与えてくれました。さらにネイルを通して、技術と経験だけではなく、素晴らしい仲間と出会うこともできました。

それはやはり、20代に集中して好きなことに取り組んだからだと思います。その結果30代が楽しい10年になりましたし、40代はさらに楽しい日々を過ごしています。

だからぜひ、みなさんも周りの目を気にせず、自分がどうしたいかを大切にしてほしいなと思います。「夢を追っていれば、絶対に夢は叶う」。私はその言葉を信じてきましたし、ぜひみなさんにも信じてみてほしいですね。

Q.今後の目標は何ですか?

いまの自分があるのは、すべてネイルのおかげです。だから、これからはネイル業界に恩返しをしていきたいです。そのためには自分自身がハッピーでないといけないと思いますので、自分と周囲、全員がハッピーになれる環境作りをしていけたらと思っています。

そして今後、日本のネイルの技術を世界に向けて発信し、世界中の人とネイルの魅力を共有できたら幸せですね。

Photos:Masakazu Sugino, text:Kyosuke Akasaka

【高野尚子さんの履歴書】

15歳 太ってしまったことをきっかけに美容に目覚め、母に頼み込んでエステ通いをスタート。

20歳 美容好きが高じて美容関係の商社に入社。事務職希望だったが営業に配属され、期せずして営業の面白さを見出す。同時に社販で取扱商品を大量に購入、同時に社内の誰よりも美容の知識を身につける。

23歳 手に職を付けたいと考え、エステティシャンに転向。同時にネイルの勉強をスタート。同年、ネイルに魅了され、ネイルサロンに転職。

24歳 ネイルサロン8店舗の店長兼管理職に抜擢される。

26歳 アメリカのネイルブランドOPIから突然電話があり「雑誌に載っていた笑顔が素敵だったから」とスポンサードのオファーを受ける。

28歳 独立し、ネイルサロン「Nadine」をオープン。「高野尚子のネイルブック」(グラフィック社)を出版。

34歳 恵比寿にネイルスクール「高野尚子 インテグレイティッドネイルカレッジ」を開校。

36歳 結婚。

37歳 出産。
著書「高野尚子のジェルネイル&ネイルケアマスターBOOK」(成美堂出版)を出版。
オリジナルジェルブラシ&アートブラシ「naoko takano」を発表。

39歳 ディズニーキャラクターが登場するネイルブランド「T-GEL COLLECTION」のクリエイティブディレクターに就任。

40歳 日本人女性で初めての「スワロフスキー認定ネイルインストラクター」に就任。
「OPIジャパン認定エデュケーター」に就任。
POLAとのコラボ商品を発表。

43歳 スワロフスキー認定ネイルインストラクターとして韓国、中国の各都市にてデモンストレーションを行う。

現在 最前線のリアルな美容情報を伝える美容賢者として、TV、ラジオ、講演、企業ビューティアドバイザーなど、ネイル以外のフィールドでも幅広く活躍中。

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