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知らないといよいよまずそうなお金の話【新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記 第28話】

  • 2017.7.4
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いきなりだけど少し前、格安スマホの利用者に関する調査結果が記事になっていた。それによると、所得が高くなればなるほど、格安スマホの利用率も高くなるらしい。「格安」なんだから一見、所得が低い人ほど積極的に使っていそうだが、どうしてこういうことが起きるのか。記事では、高所得者は情報感度が高く技術力もあるので、合理性で格安スマホを選び、使いこなすことができると分析してあった。

なるほど、と妙に納得してしまった。実際私も、近所にたくさんお店があるし、前からずっと使ってるしとろくに考えもせず大手通信会社のスマホを使いつづけている。格安スマホの存在を知ったとしても、面倒という怠けた理由で乗り換えを検討しようともしない。そうやって、高所得者が節約している分をたれ流し続けてしまうから、お金が貯まらないのだろう。

お金を稼いで、お金を使って、お金を節約したり、お金を貯めたりして暮らす。
家庭を持って16年たった今でも苦手意識がある。わからない、できないとうかうかしている間にもお金事情は日々進化していて、単に節約といってもその方法は高度化、複雑化している。

たとえば私より下の世代だと、賢い子ほど、メルカリなどのフリマアプリをうまく使って、限りなく少ない投資でおしゃれをしている。新品の服を買うときには中古でも売れやすいブランドの服を買う。飽きた頃にメルカリで売って、その売上で次の服を買う、そういうことを繰り返す(収益を現金化せず、メルカリの中に記録される数字の増減だけで延々と売買が成立するこういった形は「メルカリ経済圏」と呼ばれているらしい)。

うまくいけばこれまで服に投資してきた額だけで今後の服代がまかなえるということで、え、最高じゃない? と私もすぐに飛びついてみたけれど、これが結構むずかしい。必ずしも出品したものがそうぽんぽん売れるとも限らない。売れるブランドを知るのも、売れるように出品するのも、マーケティング力が問われる。……マーケットを見る力、ない。そんなものがあればお金が苦手なんて言ってない。お金、やっぱり苦手。でもことを悠長に言ってばかりいられないかもしれない、と思わされる一件が先日あったのだ。

CASHというアプリが公開され、初日からいろいろと物議を醸した。

このアプリは、手放せる品が手元にあるという自己申告(写真を撮って送る)を担保に、おどろくほど手軽に現金が得られる、質屋のようなもの。担保とした品は、手放すのであれば2ヶ月以内に発送すればよく、手放さないのであれば売上金に15%の手数料を乗せて返さなければならない。

メルカリでものを売るのすら下手な私にはぴったりでは、と早々に飛びついて、実際その日のうちに約2万円の売上金が私の口座に振り込まれた。

ところが、私と同じように飛びついたさまざまな人の体験談から、このアプリにはいろいろと挑戦的な試みがなされていることがわかってきた。そのうちのひとつは、査定において写真の中身は全然見てないらしいということ。なにしろ、ブランド品を指定して完全に別のもの(たとえば麦茶とか)の写真を撮っても、それに1,000円~20,000円までの査定額がつくのだ。

こういった証拠となる画像がネタ的にネットにいくつも投稿されるのには笑ったけれど、笑ったと同時に、これはまずいと思った。何しろCASHは子どもでも使える。子どもたちが、大喜利のようなノリで品物もないのに査定機能で遊んで、アプリの使い勝手の良さからまたたく間に現金化、そして何かよく分からないまま2ヶ月放置した結果、15%の利子が上乗せされた借金を返済しなければならないなんていう事態が、わりと簡単に起こり得る仕組みになっているのだ。

子どもたちは日々、スマホからいろいろなニュースサイトを見ているので、大人が教えなくても、新しいアプリにたどり着いたりしてしまう。そこでCASHについてはひとまずその日のうちに、ネタで使うアプリではないよ、という話をした。※現在、CASHは新規の査定受付を停止している。

お金に関するテクノロジーは「フィンテック」と呼ばれ、IT業界では数年前から注目されている。技術の進歩というとつい無条件に私たちの生活を豊かにしてくれるものと思うけれど、“知っていれば得をする”おいしい話しは“知らないと損をする”こわい世界とつねに隣り合わせ。若者からお年寄りまで、だれもが簡単に、直感的な操作で目の前にないお金を動かせる今、それがどういう意味を持つのか。その本質が「わからない」では、いよいよ切実にまずそうである。

イラスト:片岡泉
(紫原明子)

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