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【現代恋愛図鑑】vol.14 ママ友みたいに輝きたい ~隣の芝生不倫~

  • 2017.6.30
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女は欲張りだ。

独身のうちは「仕事も恋も充実させたい」と奔走し、適齢期になれば「早く結婚したい」と望み、結婚すれば子供を欲しがり、子を産み母親となれば「妻や母ではなく、ひとりの女でありたい」とないものねだりをする。

平和で穏やかな生活の中にある「日々の幸せ」を実感できない者は、そこに退屈を感じてしまう。修羅場は勘弁だが、わずかな刺激は欲しい──それを不倫に求めてしまうのは、実に浅はかだ。

K子(仮名)はある日、ママ友から「不倫をしている」と打ち明けられた。「不倫なんて言い方はイヤ。私がしているのは婚外恋愛よ」とママ友は悪びれずに言った。夫婦仲もよく、幸せそうなママ友の意外な一面を知ってしまったK子は、以来ママ友に会うたび彼女の“恋バナ”を聞くのが楽しみになった。

ただ公園へ子供を連れていくだけなのに、薄く化粧をし、キレイに毛先をカールさせている彼女。繊細な鎖のネックレスは「彼氏からのプレゼント」なのだという。

小さな子供がいるとは思えないほど身綺麗にしている彼女が眩しい。対してK子は日焼け止めを塗っただけの顔に、寝癖を隠すための帽子を目深にかぶり、ユニクロで買った服を着ている。子供を産んで以来、まともに化粧をしたこともなければ、よそ行きの服を着て出かける機会もない。子供抜きで夫以外の男と外出するなんて、考えたこともない。

彼女が以前より色っぽくなったのは、恋をしているからなのか。私も彼氏と呼べるような男ができれば、女である自分を思い出せるのだろうか。

妄想だけで済めば、当たり前の日常は平和なまま過ぎてゆく。だがK子はパート先で一緒に働いている自称「年上好き」な大学生に誘われ、あっさり恋に落ちてしまった。

夫が仕事で留守にしている時間帯であれば、情事を怪しまれることもない。子供が保育園にいる間ならば、自由に動くことができる。パートを休み、初めて大学生とデートした日、K子は導かれるままホテルで関係を持った。

恋をすると女はきれいになるというが、それは恋が順調な場合だけだ。簡単に抱けてしまった女は、男にとってそれ以上の興味を沸かせる存在にはならなかったのだろう。それきり、大学生の男は二度とK子を誘わなかった。

浮かれていたのはほんの数日。職場で会ってもそっけない態度をされれば、恋する女は不安になる。私のどこがいけなかったのかと問い詰めたくなる。大学生から誘われるまで1ミリも恋心なんて抱いていなかったくせに、男と女の交わりを持った途端、K子は若い大学生に恋をしてしまった。

「そんなの恋のうちにも入らない」大人の女なら、きっとそう思うだろう。しかし結婚して以来、夫以外の男性に口説かれることも抱かれることもなかったK子にとって、それは恋になるはずの貴重な機会だったのだ。

K子は恋がしたかったんじゃない。浮気や不倫に憧れていたわけでもない。ただ、ママ友のように「キラキラと輝いた女」になりたかったのだ。

人妻であろうと母親であろうと、魅力的でいるための方法はいくらでもある。だけどK子は、夫に恋をしていた昔の自分と彼氏のいるママ友が重なって映り「恋さえすれば、あの頃ように輝ける」と妄信してしまったのだ。

今回の顛末を「一度きりで済んでよかった」と捉えるのは短絡的だ。不倫によって輝いているママ友への羨望は、K子の中にまだくすぶっている。

ママ友がこの先修羅場にでもならない限り、K子の不倫願望は、心の奥で静かに生き続けるのかもしれない。

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